高水準の興行収入が続く要因は? 映画館のハイテク化も一因に
この背景として、リピート客を増やそうとする業界の努力が見逃せません。現在、映画館では様々な割引サービスを実施しています。レディースデーやレイトショーの割引はすっかり定着しました。また、ポイントカードシステムも広く普及しており、無料観劇など様々な特典を受けることができます。
さらに、IMAXデジタルシアター(注:日本は2009年から導入)に代表される映画館の“ハイテク化”も一因と言えそうです。こうした高性能上映による鑑賞は、家庭でのDVD鑑賞では決して味わえない臨場感があります。高性能上映の料金はやや高めに設定されていますが、それでも人気は衰えないようです。
一昔前まで斜陽産業の代名詞だった映画産業
振り返ってみると、戦後の日本では映画が庶民の娯楽として人気を博し、1950年代に黄金期を迎えました。しかし、カラーテレビの普及とともに客足が遠のき、一時は斜陽産業の代名詞となったのも事実です。しかし、「完全復活」という言葉を使っていいのかわかりませんが、近年の高水準な興行収入実績を見ると、勢いを取り戻したと見てよさそうです。
また、結果論になりますが、映画産業はその黄金期の成功体験にどっぷりと浸ってしまい、一時期は営業努力を怠っていた可能性も否めません。
近年の大ヒット作はアニメ映画や一部の洋画に限られる現実
さて、ここまで書くと、どん底から立ち直った映画業界の将来は明るいと思われるかもしれませんが、不安要素がないわけではありません。
まず、2019年の実績を見て分かる通り、近年大ヒットした作品はアニメ映画が大半であり、時たま「ボヘミアン・ラプソディ」のような洋画が含まれる状況です。