2020年がスタートした。2020年は東京オリンピックも開催され、夢と希望に満ちた年でありたいと誰もが願っていることであろう。しかし、年始早々リアルな話で恐縮だが、日本の少子高齢化は待ったなしである。それ伴う年金問題、働き方改革など、課題は山積みであることには変わりがない。
もうすでに昨年となるが、2019年に大きな話題となった金融庁の老後に2000万円の資金が必要になる可能性があると指摘したレポート。2019年6月の同レポートは正式には、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(以下、金融庁レポート)である。様々なメディアでも報道され、「老後2000万円問題」としてご記憶にある方も多いのではないだろうか。
手触り感のない金融庁レポート、その理由とは
しかし、その金融庁レポートを見ていくと、老後資金問題の「概論」としては興味深いレポートとなっているが、同レポートを自分事として読んでみると実感がないという方も多かったのではないだろうか。それはなぜだろうか。
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実は、金融庁レポートを自分事として当てはめようとすると、いくつかの重要なポイントが軽く流されていることに問題がある。それは一体どのような要素であろうか。
先に答えを言っておくと、以下の通りである。
- 退職金
- 居住用不動産
- 年金(厚生年金・国民年金)
今回は、その金融庁レポートの内容をおさらいしながら、60歳前で老後資金を準備しなくてはならない、現役の働く世代は将来に向けてどのように資産運用をすればよいのかについて見ていきたい。
老後2000万円の根拠とは
では、まずは金融庁レポートの老後2000万円の根拠となる箇所から見ていくことにしよう。
夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。
金融庁レポートの高齢無職夫婦世帯の支出超過は約5.5万円。これを12か月分としてみると66万円。これをさらに残り30年の人生で見てみると、1980万円となる。ざっくりいうと、これが老後2000万円の算出プロセスである。足し算と引き算と掛け算を使えば、小学生でもできるレベルの計算である。
しかし、どうであろうか。これは単に老後に支出超過の金額を指摘しているだけであって、それ以外の要素、たとえば、老後を迎える前までの資産、つまり「ストック」の概念を含んでいないということがお分かりであろう。
お金の話はフローとストックで考える
金融では、今回にあるような将来ありうるお金の収支は一般的に「フロー」としてとらえる。金融庁レポートはそのフローに言及したに過ぎない。
ただ、現実的には、多くの世帯では、定年後に退職金があるであろうし、それまでに居住用不動産を保有している世帯も多いであろう。
現実的に知るぽるとの調査では60歳代では8割以上の世帯が持ち家となっている。老後2000万円問題を語るにあたって、ストックの概念が大きく欠落しているのである。
ただ、金融庁レポートでも全く無視しているというわけではない。
平均退職給付の過去からの金額の推移についても言及している。
その退職金についても、1997年から見えると2017年までの水準は年々減少傾向にあるが、そうはいっても大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1997万円と2000万円近くあることになっている。
また、高校卒では、2000万円はかけてはいるものの、1500万円以上はある状況となっており、すべての人がゼロから2000万円を用意しないといけない、ということでは必ずしもないであろう。
仮に定年までに住宅ローンを返済している世帯があるとすれば、その世帯は退職金はそのまま運用しながら老後資金にあてることができるわけである。先ほど大卒以上の退職給付の平均金額がほぼ2000万円であることに触れたが、その世帯には2000万円があることになる。
麻生太郎財務大臣も怒った金融庁レポート
今回の金融庁レポートに関して、麻生太郎財務大臣がメディアに対してえらく怒っていたシーンを見た方も多いかと思う。
麻生大臣がどこまで考慮してコメントをしていたかは定かではないが、前提条件の議論がないままに「老後2000万円」が独り歩きしてしまうことを恐れたともみえる。それくらいまでに今回の金融庁レポートは「概論」であり、前提が荒いのである。
大きく議論をするときに、前提を荒くするということは決して悪いことばかりではない。投資家やアナリストがよく活用する手段ではある。細部に目をやりすぎると重要なことがスルーされてしまうからである。
しかし、お金の問題は、各世帯での状況が異なるために、概論で議論しても手触り感がない。各世帯の資産や収入などを吟味したうえで語る必要があるというのは誰の目にも明らかであろう。
35年で購入した住宅は立派な不動産投資
「住宅を購入する」とはよく言うが、実はマイホームを購入するということは立派な不動産「投資」である。
加えて、ローンの支払い期間を30年以上とするというのであれば、超長期で投資をし、運用してきた資産ともいえる。
こうして投資をした不動産の価値がいくらになったのか、ということは一度、マイホーム購入が不動産投資だと思えば当然考えることであろう。
老後、子どもなどが巣立った世帯であれば、広すぎる家に住み続けるのは不便と思う世帯もあるであろう。そういった際には、住み慣れた家ではあるが、売却をしてもっとコンパクトな住居に住み替えたいということがあってもよいであろう。
ここから先は不動産としての価値の議論になるが、より魅力的な住宅を保有している場合には、住み替えることで手元の現金を積み増せるケースはあろう。
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これも資産、つまりストックとしての不動産の議論が必要で、この点に関しても金融庁レポートの深堀は弱い。
そもそも、60歳以上の持ち家比率が高いという前提での老後の支出、つまり家賃がほとんど含まれていない(月額約1.4万円)ことを前提にするならば、居住用不動産の考え方にさらに触れてもよいはずである。空き家問題などと絡めて今後の不動産価格とともに議論ができていれば、さらに良いレポートだったといえる。
世帯の年金収入も一定ではない
金融庁レポートはモデル世帯の年金収入を平均値を使って議論していたが、これもいたしかないとは言えるが、世帯ごとに年金収入が異なってくるのがお分かりであろう。
詳しくは「厚生年金や国民年金をみんな、いくらもらっているのか」を参考にしてほしいが、男性で見れば厚生年金で月額20万円以上を手にしている人も決して少なくはない。もっともボリュームゾーンは18~19万ではあるが。
また、女性は専業主婦をモデルとして国民年金の水準を参考にしていると思うが、これからの時代を考えれば、女性も仕事を続けている世帯も更に多くなると思う。女性も厚生年金に加入しているケースであれば、報酬次第であるが男性と同じような年金水準になってもおかしくはない。
やはりフローとストックで考えよう
ここまで見てきたように、金融(ファイナンス)はどこまでいっても、フローとストックで考える必要がある。企業の決算書も損益計算書やキャッシュフロー計算書というフローと、貸借対照表というストックからなる。どちらか一つを掘り下げても、それは不十分というものである。
金融庁レポートの「老後2000万円問題」は一部の表現だけを取り上げられて大きな騒ぎとなったが、これらのフローとストックをさらに絡ませて議論できていればここまで大きな騒ぎになっていなかったのではないかと思う。
お金に関する多くの公開情報を羅列し、一部のフローに注目し、数字にしたがために注目されることとなったというのがオチではないだろうか。
もっとも、老後2000万円問題として報道されることで誰が幸せになったかは定かではないが、まずは確認すべきは退職金の水準や不動産価値、そして将来の年金水準ではないだろうか。もっとも、年金も今後大きくその給付タイミングや水準も変わっていくであろうが。
参考記事
- 「厚生年金や国民年金をみんな、いくらもらっているのか」
- 「「老後2000万円」問題で見落とされている?絶対に知っておきたい3点」
- 「60歳代の貯蓄額はどのくらい?ゆとりある老後への2つの方法」
- 「60代の貯蓄額の平均はどのくらいか」
- 「女性向け無料マネーセミナーで失敗しない方法!おすすめセミナーの選び方」
マネー編集部