麻生大臣がどこまで考慮してコメントをしていたかは定かではないが、前提条件の議論がないままに「老後2000万円」が独り歩きしてしまうことを恐れたともみえる。それくらいまでに今回の金融庁レポートは「概論」であり、前提が荒いのである。

大きく議論をするときに、前提を荒くするということは決して悪いことばかりではない。投資家やアナリストがよく活用する手段ではある。細部に目をやりすぎると重要なことがスルーされてしまうからである。

しかし、お金の問題は、各世帯での状況が異なるために、概論で議論しても手触り感がない。各世帯の資産や収入などを吟味したうえで語る必要があるというのは誰の目にも明らかであろう。

35年で購入した住宅は立派な不動産投資

「住宅を購入する」とはよく言うが、実はマイホームを購入するということは立派な不動産「投資」である。

加えて、ローンの支払い期間を30年以上とするというのであれば、超長期で投資をし、運用してきた資産ともいえる。