3. 【選定療養】差額ベッドは全病床の23.0%、1日当たり平均7026円
選定療養のなかでも、入院したときに関わりやすいのが差額ベッドです。実際にどのくらいあるのかを見てみましょう。
3.1 差額ベッドの病床は全国「28万7598床」総病床数の23%を占める
中医協の資料によると、2025年8月1日現在、差額ベッドの対象となる病床は28万7598床で、報告した医療機関の総病床数の23.0%でした。2024年8月1日現在の26万4707床(20.8%)から増えています。
3.2 個室(1人部屋)は1日平均8710円
1日当たりの平均徴収額は、全体で7026円でした。
差額ベッドの病床数と1日当たり平均徴収額(2025年8月1日現在)です。

出所:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第653回)」資料「主な選定療養に係る報告状況」をもとにLIMO編集部作成
部屋の人数別で見ると、以下のようになります。
- 個室(1人室):8710円
- 2人室:3161円
- 3人室:2815円
- 4人室:2894円
やはりプライバシーが守られる個室(1人部屋)は料金が高くなる傾向にあります。最も安い医療機関では1日50円ですが、最も高いところでは1日38万5000円という超高級な個室もあり、病院によって料金設定には大きな差があります。
4. 【選定療養】先発医薬品の特別料金が2026年6月に引き上げ
2024年10月に新しく加わった選定療養が、長期収載品(後発医薬品がある先発医薬品)です。
4.1 先発医薬品を希望すると、特別の料金がかかる
これまで、薬局で薬をもらう際に先発医薬品を選んでも、薬代そのものが高くなるだけで保険は適用されていました。しかし制度変更により、患者の希望で先発医薬品を処方・調剤してもらう場合は、保険の対象となる部分とは別に「特別の料金」が自己負担としてかかるようになりました。
2024年10月の制度開始時点では、この特別料金は先発医薬品とジェネリック医薬品の価格差の「4分の1相当」とされていました。
4.2 2026年6月からは価格差の「2分の1相当」に引き上げ
厚生労働省の通知により、2026年6月1日からは、この特別の料金が価格差の「2分の1相当」へとさらに引き上げられました。これにより、先発医薬品を希望した場合の窓口での支払い負担は以前よりも大きくなっています。ただし、医師が医療上必要と判断した場合や、薬局に後発医薬品の在庫がないなど提供が難しい場合は、これまでどおり保険の対象となり、特別の料金はかかりません。
5. 【患者申出療養】未承認薬を使いたい患者のための仕組み、年間の実施件数は182件
選定療養が「患者が希望して選ぶもの」であるのに対し、患者申出療養は、難しい病気と向き合う患者の思いに応えるための仕組みです。
5.1 患者の申出を起点に、国が安全性や有効性を確認
患者申出療養は、国内で承認されていない薬などを、できるだけ早く、身近な医療機関で使いたいという患者の思いに応えるため、2016年度に始まりました。主治医と相談したうえで、患者本人が申し出ることから始まり、臨床研究中核病院が計画をつくり、国の会議で安全性や有効性を確認してから実施されます。国に書類が提出されてから実施が認められるまでの目安は6週間です。
保険が効かない未承認薬などの薬代は原則として全額自己負担ですが、診察や入院などの基本部分は保険が適用されるため、混合診療が原則禁止されている中で、すべてを自己負担する場合に比べれば金銭的な負担は大きく軽減されます。
5.2 2024年7月〜2025年6月は5種類・13施設で182件
厚生労働省の患者申出療養評価会議によると、2024年7月から2025年6月までの1年間に実施された患者申出療養は5種類で、実施医療機関は13施設、年間の実施件数は合わせて182件でした。総金額は約1.7億円です。
2016年4月から2025年10月末までに、特定機能病院などの窓口に寄せられた相談は199件で、患者申出療養として実施された医療技術は18件でした。
6. 【FPの視点】特別の料金は「選んで払うお金」納得したうえで選ぶ
選定療養や患者申出療養の特別の料金は、医療保険の対象外です。どのような場面で、いくらかかるのかを知っておくと、いざというときに落ち着いて判断できます。
6.1 差額ベッドや先発医薬品は、料金を確かめてから選ぶ
選定療養は、患者が自分で選ぶことが前提の仕組みです。個室を希望するか、先発医薬品を希望するかなどは、料金の説明を受けて納得したうえで選びましょう。分からないことがあれば、医療機関や薬局に確認することが大切です。
6.2 高額療養費制度の計算には含まれないことに注意
医療費の自己負担が一定額(上限額)を超えたときに、超過分が払い戻される「高額療養費制度」は、医療費負担を和らげる非常に強力な味方です。しかし、選定療養の差額ベッド代や大病院の初診料、先発医薬品の特別料金などは医療保険の対象外となるため、この高額療養費の計算には含まれません(対象外となります)。
入院費用を見積もる際は、保険が効く「治療費」と、保険が効かない「特別料金や食事代」を分けて計算しておくことが大切です。
7. まとめにかえて
公的医療保険では、保険診療と保険外の診療を一緒に受ける「混合診療」は無制限には認められていません。そのなかで、例外として保険診療と一緒に受けられるのが、評価療養・患者申出療養・選定療養の3つです。
選定療養には、差額ベッドや大病院の初診、長期収載品などがあり、差額ベッドは全病床の23.0%、1日当たり平均7026円でした。患者申出療養は、2024年7月から2025年6月までに5種類・13施設で182件実施されています。
医療の制度は見直されることがあり、特別の料金も医療機関によって異なります。最新の内容は、厚生労働省の情報や、受診する医療機関・薬局の掲示で確認してみてください。
これまで数多くの家計相談に携わってきましたが、入院時の差額ベッド代が想定外の出費となり、家計を圧迫するご相談を受けることもありました。
健康なときこそ、ご自身の加入している健康保険の制度や民間医療保険の保障内容を家族で確認し合い、「どんな治療環境を望むか」を話し合っておくことが最高の備えになります。
参考資料
- 厚生労働省「保険外併用療養費制度について」
- 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第653回)」
- 厚生労働省「『長期収載品の処方等又は調剤について』の一部改正について」
- 厚生労働省「患者申出療養制度」
- 厚生労働省「第63回患者申出療養評価会議 議事録」
村岸 理美
