2. 自分の年金額と不足額は、どう試算すればよいのか

改定のルールが分かっても、自分がいくら受け取れるかは別の話です。年金額の試算と、そこから先の老後資金の計算をどう進めるかを確かめます。

老後資金の試算の手順は、LIMOの記事「老後資金シミュレーションは自分でできる。エクセルと公的年金シミュレーターを使って具体的に計算する手順をわかりやすく解説」から要点を借りて確認します。

2.1 老後資金の計算式そのものは単純な掛け算になっている

LIMOの記事「老後資金シミュレーションは自分でできる。エクセルと公的年金シミュレーターを使って具体的に計算する手順をわかりやすく解説」によると、民間のシミュレーションアプリやサイトは見た目が違っても、多くは同じ構造の計算をしているといいます。老後資金の必要額は、1か月あたりの不足額に12か月と老後の年数を掛け合わせた数字だという整理です。

式が単純だということは、入力する数字がそのまま結果を決めるということでもあります。同記事は、この式のうち不足額と年数はどちらも仮定の数字であり、生活費が今と同じ水準で続くという仮定と、何年生きるかという仮定の2つが計算結果を大きく左右すると指摘しています。

不足額の側は、公的な統計から目安を取ることができます。同記事が引いている家計調査の数字は次のとおりです。

総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)」2025年平均によると、65歳以上の単身無職世帯の実収入は月13万1456円、消費支出は14万8445円で、月2万9980円の不足でした。

出所:LIMO「老後資金シミュレーションは自分でできる。エクセルと公的年金シミュレーターを使って具体的に計算する手順をわかりやすく解説

この月2万9980円に12を掛けると年間の不足額になり、そこに老後の年数を掛けると必要額の目安が出るという順序です。

2.2 年数に何を入れるかで、必要額の目安が変わる

見落とされやすいのは、掛け合わせる年数のほうだと同記事は書いています。何年分を計算するかという前提が、結果を大きく動かすためです。

ここで出てくるのが、平均余命と寿命中位数という2つの指標です。同記事が挙げている数字を見てみます。

厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」(2026年7月24日公表)によると、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。

同じ資料には「寿命中位数」という別の指標もあります。寿命中位数とは、ちょうど半数の人がその年数を超えて生きると推計される年数です。令和7年の寿命中位数は、男性84.13年、女性90.17年でした。65歳を起点にすると、男性は19.13年、女性は25.17年に相当します。

出所:LIMO「老後資金シミュレーションは自分でできる。エクセルと公的年金シミュレーターを使って具体的に計算する手順をわかりやすく解説

平均余命で計算すると半数の人はこの年数より長く生きることになる、というのが同記事の指摘です。老後資金が平均余命ぴったりで設計されていれば、その半数の人にとっては期間が足りない計算になります。

2.3 指標の選び方で数十万円単位の差が出る

同記事は、どちらの指標を使うかで必要額の目安が数十万円単位で変わると書いています。男性は平均余命のほうがやや長く、女性は寿命中位数のほうがやや長いという、指標による向きの違いも示されています。

女性の場合は寿命中位数が平均余命より長いため、平均余命だけで計算すると必要額を少なく見積もることになる、というのが同記事の見立てです。

対処として挙げられているのは、シミュレーションを1回で終わらせないことです。年数を平均余命、寿命中位数、平均余命より5年長い場合など、複数のパターンで試算しておくという方法です。

2.4 年金額の試算には公的年金シミュレーターが使える

不足額を出すには、収入の側、つまり自分の年金額を把握する必要があります。同記事によると、厚生労働省の公的年金シミュレーターは、働き方や暮らし方の変化によって将来の年金額がどう変わるかを試算できるツールで、令和4年4月25日から運用が始まったものです。

ねんきん定期便に記載された二次元コードを読み込むと、生年月日や年金の加入履歴を入力する手間を省いて試算できるとされています。ID・パスワードの登録は不要で、入力した情報は記録・保存されないという説明です。

入力するのは生年月日、今後の年収、就労を終える年齢、年金の受給開始年齢で、繰上げ受給や繰下げ受給を選んだ場合の受給額の変化も同じ画面で確認できると同記事は書いています。

2.5 民間のツールと公的なツールは役割が違う

同記事は、民間のシミュレーションツールについて、入力項目が少なく手軽に使える一方、生活費や年金額の前提を利用者が確認しにくい設計になっていることがあると指摘しています。初期値のまま計算すると、自分の実際の年金額や生活費と異なる前提で結果が出てしまう場合があるということです。

一方で公的年金シミュレーターは、生活費の予測は行わず年金額の試算に特化しているとされています。役割が違うため、生活費のシミュレーションと年金額のシミュレーションは別のツールを使い分ける必要があるという整理です。

年金額が分かったら、次に家計調査の消費支出額などと比較して不足額を自分で計算する作業が必要になる、というのが同記事の示す手順です。

3. 改定のルールを知ったうえで、自分の数字を確かめる

年金額は、老齢基礎年金なら78万900円に改定率と納付月数を掛け、老齢厚生年金の報酬比例部分なら平均標準報酬額に5.481/1000と被保険者月数を掛けて計算されます。改定に使う指標は68歳到達年度を境に分かれ、既裁定者は物価変動率、新規裁定者は名目手取り賃金変動率が基本です。

物価変動が賃金変動より高い年は改定対象が賃金変動に置き換えられ、このルールは令和3年4月から適用されています。どちらの式にもマクロ経済スライド調整率が掛かるため、物価の伸びと年金の伸びは一致しません。

そのうえで自分がいくら受け取れるかは、加入記録で決まります。老後資金の試算は不足額に12か月と年数を掛ける単純な式ですが、年数に平均余命を使うか寿命中位数を使うかで目安が変わるという点は、押さえておきたいところです。

自分の加入記録にもとづく年金見込額や、改定がどう反映されるかの具体的な当てはめについては、ねんきん定期便やねんきんネットで記録を確かめたうえで、お近くの年金事務所にご確認ください。

参考資料

LIMO編集部年金解説班