公的年金も、手当や給付金も、要件を満たしているだけでは受け取れません。申請の手続きをして初めて支給されます。制度を知らなかったために受け取り損ねる、ということが起こり得ます。

本記事では、老齢年金に上乗せできる2つの給付と、働くシニアが使える雇用保険の3つの制度、そして2026年4月に変わった在職老齢年金のルールを順に確認します。

菅原 美優
働くシニア世代は年々増加傾向にありますが、老後は年金が収入の大きな柱となります。受け取れるはずのお金を取りこぼしている方は、実際にいらっしゃいます。とくに加給年金と年金生活者支援給付金は、要件を満たしていても手続きが要ります。まずはどんな制度があるのかを知り、ご自身が当てはまるかを確かめていきましょう。当てはまるものがあれば、申請手続きも忘れず行うようにしましょう。

1. 公的な給付は、申請しなければ受け取れない

公的年金(老齢年金・障害年金・遺族年金)は、暮らしを支えるセーフティーネットです。ただし、支給要件を満たしていても自動的に振り込まれるわけではありません。年金を受け取るには「年金請求書」を提出する必要があります。

国や自治体が実施している手当・給付金・補助金も、多くは申請しなければ受け取れません。申請期限や必要書類の条件を満たさなければ、本来受け取れるはずの金額が減ったり、受給できなくなったりすることもあります。

まずは、自分がどの制度の対象になるのかを把握することから始めましょう。

2. 老齢年金に上乗せされる可能性のある給付2つ

2.1 1.加給年金

加給年金は「年金の扶養手当」にたとえられることのある制度です。老齢厚生年金を受給している人が、要件を満たす配偶者や子どもを扶養している場合に年金に上乗せされます。

加給年金の支給要件

  • 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
  • 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)

(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年

上記のタイミングで「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの子、もしくは1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合に支給されます。

ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)や退職共済年金(組合員期間20年以上)を受給する権利を持っている場合、または障害厚生年金・障害基礎年金・障害共済年金などを受給している場合は、配偶者加給年金額が支給停止となります。

加給年金の年金額

加給年金額は配偶者24万3800円2/8

加給年金額は配偶者24万3800円。届出をしないと加算されない

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」をもとにLIMO編集部作成

  • 配偶者:24万3800円
  • 1人目・2人目の子:各24万3800円
  • 3人目以降の子:各8万1300円

老齢厚生年金を受給している人の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額には3万6000円〜17万9900円の特別加算が加えられます。

なお、加給年金は対象となる配偶者が65歳になると支給が終了します。ただし、その配偶者が老齢基礎年金を受け取る際、一定の要件を満たせば「振替加算」が支給されます。

2.2 2.老齢年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している人のうち一定の所得要件を満たす場合に支給されます。「老齢」「障害」「遺族」それぞれに対応する給付金がありますが、ここでは老齢年金生活者支援給付金を取り上げます。

支給要件

 

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者である。
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は92万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は92万4100円以下(※2)である。

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で82万6500円を超え92万6500円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で82万4100円を超え92万4100円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される

給付基準額と計算式

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額4/8

老齢年金生活者支援給付金の給付基準額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

2026年度の老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5620円で、前年度から3.2%引き上げられました。この基準額をもとに、保険料を納めた期間を踏まえて給付額が算出されます。

  • ①保険料納付済期間に基づく額(月額)= 5620円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月

たとえば国民年金保険料を全期間(40年間)納付した場合、2026年度は月額5620円、年額6万7440円が支給されます(昭和16年4月1日生まれまでの人は計算方法が異なります)。なお、保険料の免除を受けた期間がある場合は、この額に別途加算されます。

3. 働くシニアが使える雇用保険の給付3つ

一般に60歳を境に収入は下がる傾向があります。就職活動も若いころのように進むとは限りません。ここでは、雇用保険の手当や給付金を3つ紹介します。

3.1 1.再就職手当(65歳未満)

早期の再就職を促すための手当で、失業から再就職または事業開始までの期間が短いほど支給額が多くなります。

支給要件

  • 対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
  • 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給

給付率

  • 手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なります。(1円未満の端数は切り捨て)
    • 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は「基本手当日額×支給残日数の60%」
    • 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は「基本手当日額×支給残日数の70%」

再就職手当の額5/8

再就職手当の額

出所:厚生労働省「再就職手当のご案内」

再就職手当を受け取って再就職し、その職場で6カ月以上勤務したうえで、再就職後6カ月間の賃金が離職前より少ない場合は、「就業促進定着手当」の対象になります。

3.2 2.高年齢雇用継続給付(60歳以上65歳未満)

60歳以上65歳未満の人が働き続ける際、賃金が60歳時点より下がった場合に支給されます。

支給要件

  • 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
  • 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合

支給率

  • 支給額:最高で賃金額の10%(※)相当額
    ※2025年3月31日以前に高年齢雇用継続給付の支給要件を満たす人は15%

【早見表】高年齢雇用継続給付(2025年4月1日以降)6/8

【早見表】高年齢雇用継続給付

出所:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

老齢年金を受給しながら厚生年金に加入し、この給付を受け取る場合は、在職による年金の支給停止に加えて、老齢厚生年金から最大で標準報酬月額の4%(2025年3月31日以前に支給要件を満たす人は6%)に相当する額がさらに支給停止となる点に注意が必要です。

3.3 3.高年齢求職者給付金(65歳以上)

支給要件

  • 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
  • 支給要件:下記の全ての要件を満たした人
    1. 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある
    2. 失業の状態にある:離職し「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」を指す

支給額

  • 支給額
    • 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
    • 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額