「昇進して高い年収を目指す」——そのような考えは少数派になっていくのかもしれません。中間管理職は給与が高い一方で、それだけの責任も負っています。現代では「管理職は罰ゲーム」といわれることもあり、必ずしもすべての人が中間管理職を目指しているわけではないでしょう。
本記事では、厚生労働省の最新データから部長・課長・係長の平均年収を紹介するとともに、なぜ年収が上がっても満足度が上がりにくいのか、その背景にあるリアルな実態を解説します。
1. 【中間管理職】平均年収一覧表、うちの「部長・課長・係長」の年収はいくらぐらい?
まずは厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職別」のデータをもとに、中間管理職である「部長」「課長」「係長」の平均年収を見ていきましょう。
※ここでいう賃金は、調査が実施された年の6月分における所定内給与額の平均値です。実際に支給された現金給与額から超過労働給与額を引いたもので、所得税などが控除される前の金額を指します。
はじめに、部長・課長・係長それぞれの平均賃金は次のようになっています。
1.1 中間管理職の平均賃金一覧(月額)
- 部長級:賃金 63万5800円
- 課長級:賃金 52万9200円
- 係長級:賃金 39万9200円
- (参考)非役職者:31万500円
この月収をもとに、年間の賞与(ボーナス)を賃金の4カ月分と仮定して平均年収を試算すると、以下のようになります。
1.2 中間管理職の平均年収一覧
- 部長級:約1017万円
- 課長級:約847万円
- 係長級:約639万円
- (参考)非役職者:約497万円
2. 【中間管理職】部長と非役職者「およそ2倍」の賃金格差あり
同資料より役職・非役職間の賃金格差をみると、部長の賃金は非役職者の約2.05倍、課長は約1.70倍、係長は約1.29倍となりました。
直近5年間における賃金の上昇率は年平均で課長級が1.18%増と最も高く、部長級(同1.11%増)と係長級(同0.90%増)が続きます。非役職者は同0.80%増で、最も低くなりました。役職・非役職間の格差は、やや広がったといえるでしょう。
3. 年収は上がっても満足度は上がらない?「実質賃金の低下」と「マネジメント業務の負担感」
中間管理職は、確かに非役職者より高い年収を得ているようです。しかし、それが必ずしも「満足感」には直結しないことを示す調査もあります。
3.1 半数以上が給与に「不満」 インフレによる「実質賃金の低下」にも警戒感
家計診断サービス『オカネコ』を運営する株式会社400Fが給与収入のある283人を対象に行った「オカネコ 労働とお金に関する調査」(2025年)では、現在の給与水準に「不満」と回答した人は5割を超えました。
- 全く満足していない:18.7%
- あまり満足していない:33.6%
- どちらとも言えない:23.3%
- やや満足している:18.0%
- 非常に満足している:6.4%
さらに、「働く人が今最も深刻だと感じている問題」を尋ねた設問では、「実質賃金の低下」が42.8%でトップとなっています。
- 物価高騰に対し、賃金上昇が追いつかないこと(実質賃金の低下):42.8%
- 老後資金や年金など、将来への金銭的不安:25.8%
- 人手不足による業務負荷の増加と長時間労働:15.2%
- ハラスメントや人間関係など、精神的なストレスが大きいこと:7.8%
- 企業が終身雇用・退職金といった安定性を保障しなくなったこと:4.9%
- 正社員と非正規雇用者の間の所得格差:2.5%
消費者物価指数(全国、総合)は、2025年までの5年間で11.9%上昇(年率+2.27%)しており、2026年7月分も前年平均から2.0%上昇しています。中間管理職においても、見た目の年収は高くても、実質ベースでは不満を抱えていることが懸念されます。
3.2 キャリアより「時給」、マネジメント業務の負担感も強い
同調査では、昇進への関心が低い様子も見えてきます。「仮に、今の本業の「時給換算額」よりも、副業の「時給換算額」の方が高い場合、あなたはどちらにより多くの時間を割きたいですか?」という設問では、「副業」との回答が51.2%に達し、「本業」を上回りました。
- 副業(より高い時給を優先):51.2%
- 本業(将来のキャリアや責任のため):48.8%
また、「仕事を通じて提供される機会のうち、あなたが「重要度が低い」と感じるものをすべて選んでください。」という問いでは、「部下への指導・マネジメント業務」が13.1%でランクインしています。
- 社内イベント・交流:52.6%
- 労働時間が長くなる残業:48.1%
- 給与に直結しない研修・教育:33.6%
- 上司からのフィードバック:14.5%
- 部下への指導・マネジメント業務:13.1%
この結果から、年収の高さだけでは中間管理職の「割に合わなさ」を解消できないという実態が浮かび上がります。実質賃金への不安に加え、マネジメント業務そのものへの関心も薄れつつある中で、昇進が必ずしも前向きな選択肢と捉えられていない様子がうかがえます。
調査概要
- 調査名:オカネコ 労働とお金に関する調査
- 調査方法:WEBアンケート
- 調査期間:2025年11月15日(土)~2025年11月16日(日)
- 回答者:全国の『オカネコ』ユーザー・給与収入がある方283 人
- 回答者の年齢:30代以下16.6%、40代31.1%、50代36.0%、60代以上16.3%
- 回答者の世帯年収:400万円未満19.8%、400万円以上600万円未満19.1%、600万円以上800万円未満20.1%、800万円以上1,000万円未満15.9%、1,000万円以上1,200万円未満7.1%、1,200万円以上11.7%、わからない6.3%
4. 中間管理職への昇進だけが道じゃない!年収だけじゃなく、バランスの取れたキャリアの選択が大切
中間管理職の平均年収は、非役職者と比べて1.3〜2倍の水準にありますが、年収の高さが「納得感」に直結するわけではないことも見えてきました。実質賃金の低下やマネジメント業務に対する負担感から、「中間管理職は割に合わない」と感じやすい構造があると考えられます。
昇進だけが唯一のキャリアではありません。管理職としてチームをまとめることにやりがいを感じる人もいれば、専門性を深めるスペシャリストの道が合う人もいます。まずは自分の強みや働き方の好みを整理した上で、収入・やりがい・負担感のバランスが取れた選択肢を探してみましょう。
自分に沿ったキャリアを選ぶと、年収が下がることもあるでしょう。管理職という選択肢にこだわらず、専門性を深める、あるいは働き方そのものを見直すといった判断をする方も、今後は増えていくかもしれません。
だからこそ、年収の増減に左右されにくい資産形成の土台を作っておくことも重要です。NISAやiDeCoといった非課税制度も活用し、キャリアの変化に揺らがない家計を目指しましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 株式会社400F「オカネコ 労働とお金に関する調査」
- 総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分」
若山 卓也
