4. 役職による差と産業による差はどちらが大きいか

役職の差と産業の差を並べると、どちらも無視できない大きさであることがわかります。

2026年7月の一般労働者の現金給与総額は、建設業の69万8599円から飲食サービス業等の40万5658円まで開きがあります2/2

毎月勤労統計調査2026年7月分結果速報による産業別の一般労働者の現金給与総額

出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」を参考にLIMO編集部作成

4.1 役職の差は月32万5300円、産業の差は月29万2941円

賃金構造基本統計調査で見た部長級と非役職者の所定内給与額の差は、月32万5300円でした。

毎月勤労統計調査で見た建設業と飲食サービス業等の現金給与総額の差は、月29万2941円です。

どちらの差も30万円前後で、規模としては近いことになります。役職が上がることで収入が増える一方で、どの産業にいるかによる差も同じくらいの重さを持っているといえます。

4.2 2つの数字はそのまま足し引きできない

ただし、この2つの差は別々の調査から出たものです。役職の差は令和7年6月分の所定内給与額、産業の差は2026年7月分の現金給与総額で、対象とする期間も含まれる手当の範囲も違います。

「建設業の部長級」の金額がこの2つを足して求められるわけではありません。あくまで、差の大きさの感覚をつかむための比較として見てください。

5. 2つの調査で「給与」の意味が違う

数字を読むときに混ざりやすいのが、それぞれの調査が何を給与と呼んでいるかの違いです。

5.1 所定内給与と現金給与総額は含まれるものが違う

賃金構造基本統計調査の所定内給与額は、残業代などの所定外給与を含みません。賞与も入っていません。

一方、毎月勤労統計調査の現金給与総額は、きまって支給する給与に特別に支払われた給与を加えたものです。2026年7月の一般労働者では、このうち所定内給与が35万6413円、所定外給与が2万8765円、特別に支払われた給与が19万2945円でした。

同じ「給与」という言葉でも、63万5800円と57万8123円をそのまま比べることはできないということです。

5.2 調査対象の範囲も違う

毎月勤労統計調査は事業所規模5人以上を対象としており、パートタイム労働者を除いた一般労働者の数値を別に集計しています。

賃金構造基本統計調査の役職別の集計は、一般労働者のうち雇用期間の定めのない方に限られています。

どちらも国が実施する統計ですが、拾っている人の範囲が同じではありません。数字を並べるときは、何を数えたものかを見てから比べると誤解が減ります。

6. 自分の数字に置き換えて考えるときの手順

平均額をそのまま自分にあてはめると、実感と合わないことがあります。

6.1 手取りがどう変わるかを試算する

額面が増えても、所得税や社会保険料が増えるぶん手取りの伸びは小さくなります。とくに住民税は前年の所得で決まるため、収入が増えた翌年に負担が大きくなります。

役職に就く話が出たときは、額面ではなく手取りでいくら変わるのかを確かめておくと判断しやすくなります。

6.2 残業代の扱いを確かめる

所定内給与額には残業代が含まれていません。管理監督者にあたる場合は時間外手当の対象外となることもあり、額面の増え方が思ったより小さくなる例もあります。

役職手当がいくらなのか、時間外手当がどう扱われるのかは、就業規則や賃金規程で確かめられます。

6.3 産業を変える選択肢も数字で見る

同じ役職のままでも、産業が変われば水準が変わります。建設業と飲食サービス業等で月に29万円以上の差があるという事実は、働く場所を選ぶ判断材料になります。

ただし産業ごとの数字は労働時間や職種の構成も含んだ平均です。転職を考えるときは、個別の求人条件とあわせて見てください。

7. まとめにかえて

令和7年賃金構造基本統計調査によると、所定内給与額は部長級が月63万5800円、課長級が月52万9200円、係長級が月39万9200円でした。賞与を4カ月分と仮定した年収の目安は、部長級で1017万2800円になります。

2026年9月8日に公表された毎月勤労統計調査の2026年7月分結果速報では、一般労働者の現金給与総額が調査産業計で57万8123円、産業別では建設業の69万8599円から飲食サービス業等の40万5658円まで開いていました。

役職による差と産業による差は、どちらも月30万円前後の規模でした。収入を考えるときは、役職だけでなくどの産業で働くかも同じくらいの重みを持っています。

公表されている数字は平均です。自分の給与明細と並べながら、どの部分が動きそうなのかを確かめてみてください。

参考資料

太田 彩子