4. 変化するポートフォリオと「スノーボール」の哲学

長期保有が原則とはいえ、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオは決して固定されているわけではありません。泉田氏は、かつて「テック企業には投資しない」というスタンスが示されていたと紹介します。しかし実際にはIBMを一時期保有し、2016年1〜3月期からはアップルへの投資を開始しました。

直近では、アルファベット(グーグル)の株式を新たに取得しています。2025年9月期に初めて保有が確認されてからわずか4四半期で、アルファベットの株数は約5.9倍に、評価額は約8.7倍に急増しました。

アルファベットの急速な買い増し3/3

アルファベットの急速な買い増し

出所:13F 情報テーブル保有スナップショットを基にイズミダイズム作成

また、バフェット氏の後継者であるアベルCEOを中心とする新体制への移行に伴い、ポートフォリオの入れ替えも観測されています。2026年1〜3月期の報告では、保有する企業の数(同じ会社の複数銘柄はまとめて1社と数えます)が前四半期の39社から26社へと減少しました。ビザやマスターカードなど15社がリストから消え、新たに2社が加わるという大きな動きがありました(続く8月14日に公表された2026年4〜6月期の報告では、社数は26社で横ばいとなっています)。

さらに、かつて「航空会社はモートがない」として敬遠し、一度は購入したものの2020年に全売却したデルタ航空の株式を、2026年1〜3月期に再取得し、4〜6月期にはさらに44.0%買い増ししています。これらは、投資の神様であっても環境の変化に合わせて考えを更新している証拠だと言えます。

こうした投資行動の根底には、バフェット氏の公認伝記のタイトルにもなっている「スノーボール(雪だるま)」の哲学があります。泉田氏は、この言葉が意味する「複利」の力を強調します。

「バフェットがなんでROEというかというと、株主が投じたお金がどれぐらい増えるかっていうのがROEじゃないですか。これが雪だるまなのよ」

ROE(自己資本利益率)が8%の企業であれば、得られた利益が次の年にはさらに8%の利益を生む原資となります。雪だるまを転がすように、利益が利益を生んで資産が膨らんでいく構造こそが、バークシャー・ハサウェイが求める究極の姿なのです。

5. まとめ:上場株の向こう側にある本当の狙いを見る

バークシャー・ハサウェイの動向を知るために、多くの投資家が13Fで公表される上場株のリストに注目します。しかし、泉田氏はより本質的な視点を提示します。

「1回買っちゃったらなかなか売れないですよ。だって丸ごと買っちゃってんだから」

市場で簡単に売却できる上場株の一部保有とは異なり、企業を丸ごと買収する決断には、その企業のキャッシュフローや将来の成長性に対する強い自信が必要です。したがって、13Fに載っている銘柄を表面的な情報として真似るのではなく、彼らが丸ごと買い取った未上場企業群のビジネスモデルを分析する方が、本当の投資の狙いや、彼らが何を「モート」として評価しているのかを深く理解できると考えられます。

最後に、公開情報を投資判断に用いる際の注意点に触れておきます。13Fで公表される情報は、四半期末から45日後というタイムラグがあります。四半期そのものが約90日あるため、もし四半期の初日に取引されていれば、公表時点ですでに135日(約90日+45日)が経過しており、同じ価格で株を買うことは困難です。さらに、完全子会社化された企業や、日本を含む米国外の資産、現金や債券などは13Fの報告対象外です。見えているデータは全体の一部でしかないという限界を理解した上で、その背後にある企業の事業構造や財務体質を読み解く姿勢が求められます。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法の推奨を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

参考資料

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