三菱重工業、川崎重工業、IHI。日本のインフラや防衛を支える巨大企業として知られる重工3社ですが、一般的には「油臭い」「防衛の会社」というイメージが先行しがちです。
しかし、実は各社で利益を稼ぎ出している事業は全く異なり、同じ「重工」という名がつきながらビジネスモデルは三者三様です。
一体なぜ、彼らは独自の市場で高い利益率を叩き出せるのでしょうか。また、それぞれの競争優位性の源泉はどこにあるのでしょうか。この秘密について、元機関投資家の泉田良輔氏が重工3社の事業構造と財務体質を分析し、業績好調の本当の理由を解説します。
1. この記事のポイント
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三菱重工は「エナジー」が収益の柱であり、大型ガスタービンの圧倒的なシェアが強み
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川崎重工はバイクの売上が最大だが、利益の源泉は航空宇宙システムとロボット事業にある
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HIは航空宇宙防衛に特化し、戦闘機エンジンのストックビジネスで安定収益を稼ぐ
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3社3様の競争優位(MOAT)を理解し、利益が出ている事業を見極めることが投資の鍵
2. 見る角度で顔が変わる?重工3社は結局「何屋」なのか
株式市場において「重工3社」と一括りにされがちな3社ですが、泉田氏は「見る人によってその会社の顔が違うというか、表情が違う」と指摘します。
インタビュワーから「川崎重工といえばバイクのイメージがある」という声が上がると、泉田氏は一般のイメージと株式市場からの見え方との違いを説明しつつ、各社の決算セグメント構造を紐解き、それぞれの実像に迫りました。
2.1 三菱重工:エナジーと航空防衛宇宙が柱
三菱重工の事業は大きく4つのセグメントに分かれていますが、売上・利益ともに最大の柱となっているのが「エナジー(エネルギー)」事業です。次いで規模が大きいのが「航空・防衛・宇宙」事業となります。
泉田氏は、エナジー事業の主力であるガスタービンや原子力関連設備の重要性に触れ、AIの普及などにより世界的な電力不足が叫ばれる中、このエナジー事業と防衛・宇宙事業の2つをしっかりと抑えていることが、現在の三菱重工への高い注目度につながっていると分析します。
2.2 川崎重工:売上の主役と利益の主役が異なる
川崎重工の事業構造は少し特殊な形をしています。2026年度(FY2026)の会社計画ベースで見ると、売上が最も大きいのはバイクなどを扱う「パワースポーツ&エンジン」事業(7,300億円)です。しかし、利益面で最大の稼ぎ頭となっているのは「航空宇宙システム」事業(720億円)であり、次いで水素関連などを扱う「エネルギーソリューション&マリン」(690億円)となっています。
泉田氏は、プロの機関投資家・アナリストならではの視点をこう語ります。
「川崎重工に関しては、僕からすると(利益の大きい航空宇宙の)イメージあるな。やっぱり利益大きいところからアナリストは見るんで」
売上規模の大きさと、実際の利益の源泉が異なる点こそが、川崎重工の企業分析において注意すべきポイントです。
2.3 IHI:航空宇宙防衛に特化した収益構造
IHI(旧・石川島播磨重工業)は、3社の中で最も特徴が際立っています。2026年度(FY2026)の会社計画ベースで、売上(8,600億円)と利益(1,300億円)の両面において「航空・宇宙・防衛」事業が圧倒的なトップを占めています。
泉田氏の言葉を借りれば、IHIはまさに「航空宇宙防衛の会社」と言える収益構造を持っています。このように決算セグメントを分解するだけでも、3社がそれぞれ全く異なる「本業」を持っていることがわかります。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日