YouTubeチャンネル『イズミダイズム』では、元機関投資家で証券アナリストの泉田良輔氏が、投資に役立つ情報を初心者にもわかりやすく解説しています。
今回の動画では、株式投資の初心者から「高配当銘柄」として絶大な人気を誇るJT(日本たばこ産業株式会社)が取り上げられました。
銀行の預金金利が低い現代において、安定した配当がもらえるJTはNISAの成長投資枠でもよく買われる銘柄です。
しかし、直近のJTは単なる「株価が安定している高配当銘柄」という枠を超え、まるで成長株のように株価が上昇しています。
本記事では、泉田氏がJTの最新の決算資料を読み解きながら動画内で語った、その躍進の理由と、機関投資家ならではの鋭い視点をご紹介します。
1. 機関投資家から見たJTと特殊な株主構成
まず動画の冒頭で泉田氏は、機関投資家から見たJTという銘柄の特殊性について語っています。
タバコという商材は健康被害の観点から、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する昨今の機関投資家、特に生命保険会社などにとっては、非常に投資対象にしにくいという背景があるとのことです。
一方で、JTの最大の株主は「財務大臣」(約37.5%保有)であるというユニークな事実が紹介されました。これはJTの前身が「日本専売公社」であり、かつては国が独占してタバコを販売していた歴史があるためです。
現在でもJT法により、国が3分の1以上の株式を保有することが義務付けられています。
つまり、JTが世界中で稼いだ利益による配当金は、国の税収(財源)の一部として大きく貢献している構造になっていると泉田氏は指摘しています。
【動画で解説】JT、初心者から「高配当銘柄」として絶大な人気を誇る一方で、まるで成長株のように株価が上昇している躍進の理由
2. 2025年度決算:成長株のような驚異的な業績
世間的には「斜陽産業」と思われがちなタバコ産業ですが、JTの2025年12月期の決算数値は驚異的なものでした。泉田氏が動画内で解説した主要な業績は以下の通りです。
- 売上収益:3兆4677億円(前年度比 13.4%増)
- 営業利益:8670億円(前年度比 175.9%増)
- 当期利益(親会社所有者帰属):5102億円(前年度比 184.6%増)
JTの決算短信を解説する泉田氏1/4
出所:各資料をもとにイズミダイズム作成
泉田氏はこの数字を見て、「もはや高配当銘柄ではなく、成長銘柄だ」と表現しています。売上が3.5兆円規模に達し、純利益が前年比で3倍近くにまで伸びているのは、成熟企業としては尋常なペースではありません。
3. 成長のドライバーは「海外市場」
では、なぜここまで業績が伸びているのでしょうか。泉田氏は「JTを分析する際は、海外がどう伸びるかを分析しなければならない」と強調しています。
動画内で紹介された国別の販売数量を見ると、日本の年間販売総数量は615億本(うち紙タバコ501億本、電子タバコなどのRRPが114億本)です。
しかし、海外に目を向けると、ロシアの販売数量は816億本、さらにトルコは501億本(前年比25.8%増)となっており、日本市場を上回る、あるいは匹敵する規模で海外市場が成長しています。
JTの決算短信を解説する泉田氏2/4
出所:各資料をもとにイズミダイズム作成
さらにJTでは、世界を「アジア」「ウエスタンヨーロッパ」「EMA(東欧、中近東、アフリカなど)」の3つの地域(クラスター)に分けていますが、売上収益も営業利益も、ロシアやトルコを含む「EMA」が全体のほぼ半分を占めています。
泉田氏が語るように、JTは「日本のタバコ会社」という枠を超え、グローバル企業として海外で稼ぐ構造が完成しているのです。
業績好調の要因として、これら海外市場における「プライシング効果(値上げ)」と、「RRP(電子タバコ等)」の売上増加が大きく寄与していると解説されています。
JTの決算短信を解説する泉田氏3/4
出所:各資料をもとにイズミダイズム作成
【動画で解説】JT、初心者から「高配当銘柄」として絶大な人気を誇る一方で、まるで成長株のように株価が上昇している躍進の理由
4. 株価上昇のもう一つの理由:カナダ訴訟の決着
業績の好調さに加えて、直近の株価上昇の大きな理由として泉田氏が指摘したのが「カナダにおける訴訟の決着」です。
JTのカナダ子会社は長年、健康被害に関する巨額の訴訟を抱えていました。
今回、その訴訟が決着し、「毎年の税引後利益の一定割合(70%〜85%)を支払う」という条件で和解が成立しました。
利益の大部分を持っていかれると聞くとマイナス要因に思えますが、泉田氏は「株式市場では、不透明であることの方が嫌気される」と解説します。
これまで「将来いくら賠償金を払うかわからない」という見えないリスク(不透明感)が株価の重しになっていました。
しかし、和解条件が明確に決まったことで「悪材料が出尽くし」となり、アナリストも今後の利益予想を正確に計算できるようになったため、これが市場にポジティブに受け止められたと分析しています。
5. まとめ:高配当と成長を両立するが、リスクの認識も必要
動画の結びとして泉田氏は、JTが会社として「配当性向75%(利益の75%を配当に回す)」という目安を明確に示していることを紹介しました。
実際に2025年度の年間配当金も過去最高となる234円が予定されており 、株価の上昇と高配当の両方を享受できる現在の状況は、投資家にとって非常に魅力的であると述べています。
ただし、注意点も忘れてはなりません。JTの成長の大きな牽引役がロシア市場である以上、地政学的なリスクは常に意識しておく必要があります。
泉田氏は「成長ドライバーが日本国内だけで完結しているわけではないため、不安定さの上に成り立っている利益でもある」と警鐘を鳴らしています。
単に「配当が高いから」という理由だけで投資するのではなく、企業がどこでどのように利益を生み出し、どのようなリスクを抱えているのか。そして、自身の投資スタイルや倫理観(タバコ産業への投資をどう捉えるか)と照らし合わせて判断することが重要だといえます。
【動画で解説】JT、初心者から「高配当銘柄」として絶大な人気を誇る一方で、まるで成長株のように株価が上昇している躍進の理由
6. イズミダイズムとは
イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。
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