4. 株価上昇のもう一つの理由:カナダ訴訟の決着
業績の好調さに加えて、直近の株価上昇の大きな理由として泉田氏が指摘したのが「カナダにおける訴訟の決着」です。
JTのカナダ子会社は長年、健康被害に関する巨額の訴訟を抱えていました。
今回、その訴訟が決着し、「毎年の税引後利益の一定割合(70%〜85%)を支払う」という条件で和解が成立しました。
利益の大部分を持っていかれると聞くとマイナス要因に思えますが、泉田氏は「株式市場では、不透明であることの方が嫌気される」と解説します。
これまで「将来いくら賠償金を払うかわからない」という見えないリスク(不透明感)が株価の重しになっていました。
しかし、和解条件が明確に決まったことで「悪材料が出尽くし」となり、アナリストも今後の利益予想を正確に計算できるようになったため、これが市場にポジティブに受け止められたと分析しています。
5. まとめ:高配当と成長を両立するが、リスクの認識も必要
動画の結びとして泉田氏は、JTが会社として「配当性向75%(利益の75%を配当に回す)」という目安を明確に示していることを紹介しました。
実際に2025年度の年間配当金も過去最高となる234円が予定されており 、株価の上昇と高配当の両方を享受できる現在の状況は、投資家にとって非常に魅力的であると述べています。
ただし、注意点も忘れてはなりません。JTの成長の大きな牽引役がロシア市場である以上、地政学的なリスクは常に意識しておく必要があります。
泉田氏は「成長ドライバーが日本国内だけで完結しているわけではないため、不安定さの上に成り立っている利益でもある」と警鐘を鳴らしています。
単に「配当が高いから」という理由だけで投資するのではなく、企業がどこでどのように利益を生み出し、どのようなリスクを抱えているのか。そして、自身の投資スタイルや倫理観(タバコ産業への投資をどう捉えるか)と照らし合わせて判断することが重要だといえます。
【動画で解説】JT、初心者から「高配当銘柄」として絶大な人気を誇る一方で、まるで成長株のように株価が上昇している躍進の理由
6. イズミダイズムとは
イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。
新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。
教科書的な知識だけでなく、プロの実体験に基づいた分析を通じて、ビジネスパーソンや個人投資家に役立てていただけるコンテンツをお届けしています。
参考資料
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日