4. 国家公務員の退職金には「調整額」という別枠がある
ここまでは基本額の話でしたが、退職手当にはもう1つの枠があります。平成18年に創設された調整額です。
4.1 調整月額は級ごとに決まっている
調整額は、在職していた各月について、その月に属していた職員の区分に応じた額を積み上げる仕組みです。この額を調整月額といい、第1号区分から第11号区分まで定められています。
行政職俸給表(一)と指定職の場合、指定職6号俸以上が9万5400円、指定職5号俸以下が7万8750円です。行政職俸給表(一)では10級が7万400円、9級が6万5000円、8級が5万9550円、7級が5万4150円、6級が4万3350円、5級が3万2500円、4級が2万7100円、3級が2万1700円で、そのほかの職員は0円です。
4.2 多い順に60月分を合計する
調整額は、在職期間のすべての月を足すのではありません。調整月額のうち、額が多いものから60月分を合計します。
内閣人事局はこの計算例も示しています。行政職俸給表(一)の7級が24月、6級が36月で対象の60月になる場合、5万4150円×24月+4万3350円×36月=286万200円が調整額になります。
級が上がった期間が長いほど調整額は大きくなり、3級より下の期間しかなければ調整額は0円です。同じ勤続年数でも退職金に差がつくのは、この部分が効いているためです。
なお、勤続期間が9年以下の自己都合退職者などには調整額が支給されません。勤続期間1年以上4年以下の退職者と、勤続期間10年以上24年以下の自己都合退職者は、調整額が半額になります。
5. 定年引上げの期間中は退職金の計算で退職理由の扱いが変わる
国家公務員の定年は段階的に引き上げられています。この移行期間には、退職手当の計算について特別な取り扱いが置かれています。
5.1 60歳以後の退職は定年退職とみなして算定する
内閣人事局は、令和5年4月1日以降、当分の間、引上げ前の定年に達した日以後にその者の非違によることなく退職した場合は、退職理由を「定年退職」とみなして算定すると説明しています。
引上げ前の定年は60歳です。つまり60歳に達したあとに自分の意思で退職しても、支給率は自己都合退職のものではなく定年退職のものが使われることになります。
令和6年度の実績で定年退職の平均が2160万1000円、自己都合退職の平均が345万4000円と大きく離れていることを踏まえると、この扱いの差は小さくありません。
あわせて、基本額には俸給月額が減額されたことがある場合の特例も置かれています。60歳以降に俸給の水準が変わる方は、この特例の対象になるかどうかを勤務先に確認しておくとよいでしょう。
国家公務員の退職金は「退職日の俸給月額」がベースとなるため、人事院勧告に伴う給与法改正は将来の給付額に直接影響します。ただし、勧告で示される月例給の較差には諸手当が含まれているため、すべての職員の基本俸給を一律に引き上げるものではない点に注意が必要です。
また、現在は定年引き上げの移行期間中にあたり、60歳到達後に退職する場合は自己都合であっても「定年退職」として扱われる特例措置が講じられています。60歳以降は俸給月額が減額されるケースも多いため、自身の退職時期や「俸給月額の減額特例」の適用有無について、事前に人事担当部署へ確認したうえで生活設計を立てることをおすすめします。
6. 国家公務員の退職金を確かめるときに見るところ
最後に、自分の金額を把握するための手がかりを挙げます。
6.1 俸給表の額と俸給の調整額の合計を見る
基本額の出発点は退職日の俸給月額です。給与明細や辞令で、俸給表の額と俸給の調整額を確認しておくと、計算の土台がつかめます。
支給率は退職理由と勤続期間の組み合わせで決まります。国家公務員退職手当支給率早見表が内閣人事局のサイトで公表されているので、自分の区分にあたる数値を見ることができます。
6.2 平均額は自分の見込み額ではない
この記事で挙げた金額は、いずれも令和6年度に実際に退職した方の平均です。級や勤続期間、退職理由が違えば金額は変わります。
退職手当の適用対象は、司法・立法・行政すべての国家公務員のうち常時勤務に服することを要する職員などで、令和4年時点で約59万人とされています。行政執行法人の役員や国会議員は対象になりません。
見込み額は勤務先の人事担当部署で確認できます。制度の適用や特例の可否は、給与や退職手当を担当する部署に確認してください。
7. まとめにかえて
令和6年度の国家公務員(常勤職員)の退職手当は、定年退職が平均2160万1000円、自己都合退職が平均345万4000円でした。退職理由によって6倍以上の差がついています。
金額は退職日の俸給月額に支給率と調整率を掛けた基本額に、調整額を足して決まります。2026年8月の人事院勧告を受けて俸給表が改定されれば、この基本額の出発点も動くことになります。
ただし勧告で示された1万5056円は諸手当を含む月例給の較差であり、俸給の増加額そのものではありません。実際の金額は給与法の改正を待つ必要があります。
参考資料
LIMO編集部年収解説班
