2026年8月の人事院勧告により、国家公務員の俸給表改定に向けた動きが進んでいます。俸給表の改定は、退職金の算定基礎となる「退職日の俸給月額」に直接影響を与えるため、今後の給付額を左右する重要なポイントです。

本記事では、令和6年度の実績(定年退職平均2160万1000円、自己都合退職平均345万4000円)をもとに、基本額と調整額で決まる退職金の構造や、定年引上げ移行期における特例ルールについて詳しく解説します。

1. 【国家公務員の退職金】2026年8月の人事院勧告で、算定の基礎が動く

人事院は2026年8月7日、国家公務員の給与について国会と内閣に勧告を行いました。まずは、この勧告が退職金とどうつながるのかを確認します。

1.1 勧告で示された較差は月額1万5056円

勧告の基礎になったのは、企業規模100人以上の民間事業所を対象にした職種別民間給与実態調査です。調査を完了した事業所は8144所で、調査完了率は82.5%でした。

比較の結果、民間の月例給は44万3507円、国家公務員は42万8451円で、その差は1万5056円でした。率にすると3.51%です。

この42万8451円は行政職俸給表(一)の適用職員の平均給与月額で、適用人員は13万9564人、平均年齢は41.7歳です。前年の令和7年4月の41万4480円からは1万3971円増えています。

1.2 退職金の基本額は退職日の俸給月額で決まる

国家公務員の退職金は、国家公務員退職手当法にもとづいて計算されます。内閣官房内閣人事局は算定の構造を「退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率)+調整額」と説明しています。

ここでいう退職日の俸給月額は、一般職の職員であれば給与法に定める「俸給表の額」と「俸給の調整額」の合計です。つまり俸給表が改定されると、退職金の基本額を計算する出発点そのものが動くことになります。

ただし、較差の1万5056円をそのまま俸給の増加額と読むことはできません。比較の対象は諸手当を含む月例給であり、俸給表の額だけを取り出した差ではないためです。

勧告は国会と内閣に対して行われるものです。実際の給与は、これを受けた給与法の改正で決まります。

2. 【国家公務員の退職金】令和6年度の平均支給額はいくらだったか

次に、直近で公表されている実績を見ていきます。内閣官房内閣人事局の「退職手当の支給状況」によると、令和6年度に退職手当を受けた常勤職員は3万1193人で、平均支給額は1094万3000円でした。

2.1 定年退職は平均2160万1000円

退職理由別に見ると、定年退職者は1万1073人で、平均支給額は2160万1000円です。常勤職員全体の平均を1000万円以上上回っています。

最も高いのは応募認定退職で、1859人が平均2470万3000円を受けています。応募認定退職は早期退職の募集に応じて退職する場合で、勤続期間などの要件を満たすと定年前早期退職特例措置が適用されます。

2.2 自己都合退職は平均345万4000円

一方、自己都合退職者は9951人で、平均支給額は345万4000円でした。定年退職の平均と比べると、金額の水準は6分の1ほどになります。

そのほかの理由で退職した方は8310人で、平均263万円です。全体の平均が1094万3000円と定年退職より低くなるのは、この2つの区分に人数が集まっているためです。

退職理由によって平均支給額は6倍以上の差があります1/2

退職理由によって平均支給額は6倍以上の差があります

出所:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和6年度)」をもとにLIMO編集部作成

3. 行政職俸給表(一)の適用者では退職金の金額が変わる

同じ資料には、行政職俸給表(一)の適用者だけを取り出した数字も載っています。国家公務員のなかでも事務職の標準的な俸給表にあたる区分です。

3.1 定年退職は平均2148万8000円

行政職俸給表(一)の適用者で令和6年度に退職手当を受けたのは8458人、平均支給額は1389万6000円でした。定年退職者は3970人で平均2148万8000円、応募認定退職者は976人で平均2277万円です。

自己都合退職者は2163人で平均331万5000円、そのほかの理由は1349人で平均210万円でした。

3.2 全体の平均は母集団によって変わる

行政職俸給表(一)の適用者の全体平均1389万6000円は、常勤職員全体の1094万3000円を上回っています。一方で定年退職だけを比べると2148万8000円と2160万1000円で、差は11万3000円にとどまります。

全体平均の差が大きくなるのは、常勤職員全体には勤続期間の短い区分が多く含まれるためです。平均額を見るときは、どの母集団の数字なのかをあわせて確認する必要があります。