4. 貯めやすさの違いはどこから生まれるのか
年間収入が同じ水準でも貯蓄額に差がつく理由を、同じ調査に載っている別の数値から確かめておきましょう。
家計調査報告(貯蓄・負債編)には、都道府県庁所在市ごとの持家率や世帯人員、世帯主の年齢も公表されています。
4.1 持家率と負債の残り方が地域で違う
全国の二人以上の世帯の持家率は87.0%で、世帯主の平均年齢は60.1歳、世帯人員は2.88人でした。
持家率が高い地域は住宅ローンを組んでいる世帯も多くなります。貯蓄が積み上がっていても、住宅・土地のための負債が同時に残っている場合があります。全国の二人以上の世帯では、負債現在高の9割強が住宅・土地のための負債です。
貯蓄額のランキングだけを見ると、負債の側が見えません。地域の水準を比べるときは、貯蓄から負債を差し引いた純貯蓄で見る方法もあります。
4.2 世帯主の年齢構成で残高は変わる
貯蓄は年齢とともに積み上がるため、世帯主の年齢が高い地域ほど平均額が大きくなりやすくなります。逆に若い世帯が多い地域は、同じ収入でも残高が少なく出ます。
地域の順位を自分の世帯と比べる前に、その市の世帯主の平均年齢が自分と近いかどうかを見ておくと、比較の精度が上がります。
5. この数値を自分の家計に当てるときに確認したいこと
ランキングを自分の目標に置き換えるときは、次の3点を押さえておきたいところです。
5.1 対象は都道府県庁所在市の二人以上の世帯である
表8-1は都道府県ではなく都道府県庁所在市を単位に集計しています。同じ県でも県庁所在市以外の地域は含まれていません。
対象も二人以上の世帯です。単身世帯は別に集計されているため、ひとり暮らしの方が自分の水準と比べる資料としては合いません。
都道府県庁所在市ごとの集計は標本の数が限られるため、年による振れが全国の数値より大きくなります。1年分の順位だけで地域の傾向を決めない見方が必要です。
5.2 平均額は上位の世帯に引き上げられる
全国の二人以上の世帯で見ると平均は2059万円ですが、貯蓄保有世帯の中央値は1264万円で、795万円低い水準です。
ランキングの数値は、その市の「ふつうの世帯」の残高ではありません。自分の位置を確かめるなら、平均額よりも中央値のほうが実感に近くなります。
5.3 まず自分の世帯で毎月いくら残っているかを把握する
地域の平均と比べるより先に、自分の世帯で毎月いくら残せているかを確かめるほうが役に立ちます。通帳の残高の推移を1年分たどるだけでも、残せている額は見えてきます。
そのうえで住居費や保険料の水準を見直すと、収入を増やさなくても残る額を変えられる場合があります。運用益が非課税になるNISAのつみたて投資枠を使う方法もありますが、元本が保証される制度ではありません。
どこから手をつけるかは世帯の状況によって変わります。判断に迷う場合は、金融機関の窓口や公的な相談窓口で確認しておくと安心です。
6. まとめにかえて
都道府県庁所在市別の平均貯蓄額で最も少なかったのは那覇市の777万円で、全国平均2059万円を1282万円下回りました。最も多い千葉市2951万円とは約3.8倍の差があります。
貯蓄が少ない市は年間収入も低い傾向にありましたが、一致はしていませんでした。松山市は年間収入が47市中9位でも貯蓄は39位、逆に奈良市は年間収入が全国平均を下回りながら貯蓄は6位でした。
この数値は都道府県庁所在市の二人以上の世帯を集計したもので、平均額は上位の世帯に引き上げられます。地域の順位を眺めるより、自分の世帯で毎月いくら残せているかを確かめるところから始めたいところです。
参考資料
和田 直子