会社都合の退職やリストラで収入が減ったのに、前年の所得をもとに計算された国民健康保険料をそのまま払い続けている方は少なくありません。実は、条件を満たせば保険料が大きく下がる軽減制度があります。
この記事では、渋谷区の公式情報にもとづき、国民健康保険料の減免・軽減制度の仕組みと、編集部の試算をまじえて整理します。
1. 国民健康保険料には、失業・所得減少・災害による減免制度がある
国民健康保険料(税)には、大きく分けて「非自発的失業者の軽減制度」「所得減少による減免」「災害による減免」といった仕組みがあります。いずれも、条件を満たせば保険料の一部が軽減・免除される制度です。
このうち特に見落とされがちなのが、会社都合退職や雇止めで失業した場合の軽減制度です。前年の所得をもとに保険料が計算される国保の仕組み上、失業直後は収入が減っているのに保険料は高いまま、というミスマッチが起きやすくなります。この仕組みそのものについては退職後の国民健康保険料はなぜ高く感じるかを整理した別記事で詳しく解説しています。
2. 非自発的失業者は、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料が再計算される
会社都合退職や雇止めなど、非自発的な理由で失業した人は、申請により前年の給与所得を実際の30%とみなして国民健康保険料を再計算してもらえる制度があります。給与所得以外の事業所得や不動産所得は対象になりません。
対象になるかどうかは、ハローワークで発行される「雇用保険受給資格者証」または「雇用保険受給資格通知」に記載された離職理由コードで判定されます。特定受給資格者(コード11・12・21・22・31・32)と特定理由離職者(コード23・33・34)が対象です。
2.1 【非自発的失業者の軽減制度の対象区分】
特定受給資格者の場合
- 離職理由コード:11・12・21・22・31・32
- 主な該当例:解雇、倒産、雇止め、勧奨退職など
特定理由離職者の場合
- 離職理由コード:23・33・34
- 主な該当例:期間満了、正当な理由のある自己都合退職など
「自己都合退職だから対象外」と思い込んでいる方もいますが、契約期間満了などの正当な理由があれば特定理由離職者として対象になる場合があります。離職票に記載された離職理由コードを確認してみることをおすすめします。
3. 【編集者の視点】
「自己都合」という言葉だけを見て申請をあきらめてしまうのは、少しもったいない話です。
離職理由コードを実際に確認するまでは、対象かどうか判断しない方がよいでしょう。
4. 編集部試算:軽減制度を使うと、保険料の所得割はどれくらい下がるか
実際にどれくらい変わるのか、前年の給与収入400万円(給与所得276万円、令和8年度の給与所得控除を適用)の人を例に、編集部で試算しました。
- 軽減なしの場合:給与所得276万円がそのまま所得割の算定基礎になる。
- 軽減ありの場合:給与所得276万円を30%とみなし、82万8000円として所得割を算定する。
- 算定基礎額の差は193万2000円。所得割率を仮に10%とすると、年間の所得割額は約19万円軽くなる計算になる。
この試算はあくまで所得割率を10%と仮定した目安であり、実際の料率は自治体ごとに異なります。正確な軽減額は、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口で確認してください。
5. 軽減期間は離職日の翌日から、翌年度末まで
この軽減制度が適用される期間は、離職日の翌日が属する月から、その翌年度末までです。年度の途中で他の健康保険に加入するなどして国保の資格を喪失した場合は、その前月までが対象になります。
「1年間だけの軽減」と誤解している方もいますが、実際には離職のタイミングによって対象期間の長さが変わります。年度をまたいで長期間軽減が続くケースもあるため、対象期間がいつまでかを窓口で確認しておくとよいでしょう。
6. 【編集者の視点】
この軽減制度は、離職してすぐの家計が最も苦しい時期をカバーするように設計されています。
再就職までの期間が長引きそうな場合ほど、この制度の恩恵は大きくなります。
7. 所得が大きく減った場合の「所得減少減免」は、自治体ごとに基準が異なる
失業以外にも、事業の不振や休廃止などで所得が著しく減少した場合の減免制度があります。ただし、減少の基準や減免の割合は自治体ごとに異なるため、全国一律の基準があるわけではありません。
「所得が減ったら自動的に保険料も下がる」と思っていると、実際には自分で申請しなければ適用されないため、気づかないまま満額の保険料を払い続けてしまうことがあります。お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口に、所得減少減免の基準を確認しておくとよいでしょう。
8. 災害による減免は、損害の程度が3割以上であることが一つの目安になる
震災・風水害・火災などの災害で住宅や家財に著しい損害を受けた場合も、国民健康保険料の減免制度が用意されています。渋谷区の場合、原則として罹災証明書などで証明された損害の程度が3割以上と認められる場合が対象です。
「災害に遭ったらとにかく役所に相談すればいい」という認識だけでは、実際にどの程度の減免が受けられるのか見通しが立ちません。渋谷区では、申請月以降、最大6期分の保険料について、所得割額を対象に減免が行われる仕組みになっています。
8.1 【渋谷区の災害減免の基準】
- 対象となる損害の程度:罹災証明書等で証明された損害(保険金等で補てんされた分を除く)が3割以上。
- 減免される期間:申請月以降、最大6期分の保険料が対象。
- 減免の対象:これから納期限が到来する保険料のうち、所得割額の部分。
具体的な減免割合や基準は自治体ごとに条例で定められており、渋谷区の基準がそのまま他の自治体にも当てはまるとは限りません。被災した場合はまず罹災証明書を取得したうえで、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口に相談することが第一歩になります。
9. 【編集者の視点】
災害直後は生活再建で手一杯になりがちですが、保険料の減免申請も忘れずに行っておきたい手続きの一つです。
罹災証明書があれば手続きがスムーズに進みやすくなるため、早い段階で取得しておくことをおすすめします。
10. 減免は原則「申請」が必要で、自動的には適用されない
非自発的失業者の軽減制度も、所得減少・災害による減免も、いずれも自治体への届け出・申請が前提です。何もしなければ、前年の所得をもとにした通常の保険料が請求され続けます。
申請には、雇用保険受給資格者証などの離職理由が分かる書類が必要になることが一般的です。窓口・郵送・オンライン申請のいずれかで手続きできる自治体が多いため、まずは自分の状況が対象になるかどうかを確認し、早めに申請することが大切です。転職・退職時の社会保険から国民健康保険への切り替え手続き自体については就職・転職時の切り替え手続きを整理した別記事もあわせてご覧ください。
※本記事は、編集部が渋谷区が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
11. まとめ
- 会社都合退職や雇止めなど非自発的な失業では、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料が再計算される。
- 軽減期間は離職日の翌日が属する月から翌年度末まで。所得減少・災害による減免は自治体ごとに基準が異なる。
- いずれの減免も自動的には適用されず、届け出・申請が必要になる。
「保険料が高くて払えない」と感じたときこそ、まずは自分が減免制度の対象になるかどうかを確認してみることが、負担を軽くする近道になります。
失業・所得減少・災害と、対象になる事情は人それぞれですが、いずれも「知らなければ使えない」制度である点は共通しています。心当たりがある方は、まずお住まいの窓口に相談してみましょう。
12. よくある質問
12.1 Q. 非自発的失業者の軽減制度とは何ですか。
A. 会社都合退職や雇止めなどで失業した人が、前年の給与所得を実際の30%とみなして国民健康保険料を再計算してもらえる制度です。
12.2 Q. 自己都合退職でも軽減の対象になりますか。
A. 契約期間満了など正当な理由のある離職であれば、特定理由離職者として対象になる場合があります。離職理由コードを確認してください。
12.3 Q. 軽減される期間はいつまでですか。
A. 離職日の翌日が属する月から、翌年度末までです。他の健康保険に加入した場合は、その前月までとなります。
12.4 Q. 給与所得以外の所得も軽減の対象になりますか。
A. なりません。軽減の対象は前年の給与所得のみで、事業所得や不動産所得は含まれません。
12.5 Q. 所得が減っただけでも保険料は下がりますか。
A. 自治体ごとの所得減少減免の基準を満たせば下がりますが、自動的には適用されず、申請が必要です。
12.6 Q. 減免を受けるにはどうすればよいですか。
A. 雇用保険受給資格者証など離職理由が分かる書類を用意し、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口に申請します。
参考資料
齊藤 慧
