6. 40歳代に多い「積み立てているのは一本だけ。このままで分散できているのか決めきれない」というご相談。IFA・奥田 朝が伝えたいこと

40歳代は、積み立てが軌道に乗って、しばらく手を入れないまま続いている状態になりやすい時期です。前半でみたように、全世界の株式に投じる一本を選んでおけば、それだけで地域の広がりそのものは確保できます。ただ、家計のご相談では、その一本の中身がどんな比率で組まれているのかまでは確かめないまま、これで分散はできているはずだと考えて、そこから先に進めずに途中で手が止まってしまう方にたびたびお会いします。広く投じているという事実と、どこにどれだけ寄っているのかは別の話です。中の比率が違えば、同じ値動きの局面を迎えても、手元の増減は変わってきます。相談の場では次のような声を耳にします。

6.1 40歳代に多いお悩み相談は「一本で世界に広く投じているつもりでも、中の比率までは見ていない」

40歳代(ご相談者)
「積み立ては以前から続けていて、全世界の株式に投じる投資信託を一本だけ持っています。ほったらかしで長く持つのがいいと聞いたので、買ってからは特に手を入れていません。それとは別に、以前から債券も持っています。どちらも長く持つつもりでいるので、いま困っていることは正直ありません。ただ、ときどき、これ一本のままでよいのだろうかと気になります。世界中に投じていると言われても、中でどの国にどれだけ入っているのかは見たことがないままです。もし何かを足すとしたら何を足せばいいのか、そもそも足す必要があるのかも分かりません。子どもの将来に向けた資金も兼ねているので、大きく失敗はしたくないのですが、どこから確かめればよいのかが決められずにいます」

相談の場でも、一本で広く投じているのだから中身は確かめなくてよいと考えて、そこから先の判断が止まってしまうという方に数多くお会いします。

6.2 【IFA・奥田 朝が回答】一本か複数かではなく、中の比率がどう置かれているかで手元の結果は変わる

奥田 朝
「一本で広く網羅しているから分散はできている」と決めつける前に、いま続いている積み立てはそのまま止めずにおき、手元にあるものをカテゴリー別に区分しましょう。資産間の重複を確認し、ポートフォリオで手薄な領域を補うのが合理的です。さらに、投資比率の偏りやご自身の投資意向とずれがないかも合せて定期的に確認していくことが大切です。このような手順を踏むことで、本当に一本だけでいいのかを自分でも納得して決められるようになります。

6.3 ポイント1:いま続いている積み立ては止めないところから考える

中身を見直したいというお話をいただくと、いったん止めて考え直したほうがよいでしょうかと聞かれることがあります。私はまず、続いているものは続けてくださいとお伝えしています。毎月決まった額を買い続ける形は、値段が高いときには少ない口数を、安いときには多い口数を買うことになるので、買い付けの値段が一つの時点に集中しません。この効き方は、中身を吟味したかどうかとは関係なく働く部分ですから、考え直すために止めてしまうと、その効き方だけが失われます。見直しは、積み立てを続けたまま並行してできる作業です。完璧な組み合わせが決まるまで待つ必要はありません。相談の場でも、正解を先に確かめようとして止まってしまう方には、まず書き出せる範囲から書き出して、続けながら整えていきましょうとお話ししています。そのほうが結果的に早く落ち着きます。なお、税金がかからない枠の上限や使い方は制度の決まりに沿って動きますので、ご自身に当てはめる段では金融機関の窓口や所管の窓口で確かめてください。

6.4 ポイント2:持っているものを区分ごとに一枚に並べて、重なりを探す

次にやっていただくのが、いま持っているものを一枚に並べる作業です。預貯金、投資信託、債券、保険という区分で書き出し、投資信託についてはさらに一段掘って、どの地域のどんな資産に投じるものなのかまで書き添えます。ここで見たいのは、持っている本数ではなく重なりです。本数を増やしても、中身が同じ地域の同じような資産であれば、全体の比率はほとんど動きません。逆に、一本しか持っていない場合は重なりの心配はいりませんが、その代わりに、その一本の中の比率がそのまま手元全体の比率になります。ここが、本数だけを見ていると気づけないところです。並べてみると、値動きに任せている部分と、受け取る条件が決まっている部分の割り振りも見えてきます。債券のように満期や受け取る条件が決まっている資産をすでに持っているなら、値動きの側と落ち着いた側の役割分担はある程度できていることになります。その場合、これから考えるのは全体を作り直すことではなく、値動きに任せている部分の中の偏りをどうするか、という一段細かい話に絞られます。

6.5 ポイント3:足すのなら、いまの中身で薄くなっている区分から選ぶ

足す必要があるかどうかは、並べた一枚を見てから決まります。そのうえで、足すという判断になったときの選び方をお伝えしています。全世界の株式に投じる一本は、世界の株式市場に占める大きさに応じて組み入れる作りになっているものが多く、その結果として、比率の上位は特定の国の大企業に寄ります。反対に、国内の株式が占める割合はごく小さな部分にとどまります。日本で暮らして日本円で支払いをしていく前提なら、国内の株式を薄いままにしておくのか、少し厚くするのかは、選ぶ余地のある論点です。そこで、もし足すのなら、いま薄くなっている区分から選んでくださいとお話ししています。同じ地域の似た中身をもう一本増やしても、比率は動かないので、手間だけが増えます。足す先として並ぶのは、国内の株式のように地域が違うもの、あるいは債券のように値段が動く理由そのものが違うものです。どれを足すかを決める前に、いまの一枚のどこが薄いのかを言葉にしておくと、選択肢はかなり絞られます。

6.6 ポイント4:比率の偏りは、円で見た増減と持ち続ける年数の両方に出る

比率の話は、そのまま円で見た増減の話につながります。海外の資産を組み入れている部分は、現地での値段が動かなかったとしても、円と外貨の交換比率が動けば、円に換算した額は変わります。円安に振れれば円で見た額は増えやすく、円高に振れれば逆に働きます。つまり、海外に寄っている比率が高いほど、この効き方は大きく表れます。一本の中の比率を見ておくというのは、こういう形で自分の手元に返ってくるからです。ここで大事なのは、この上下を止める方法を探すことではなく、持ち続ける年数と合わせて見ることだとお伝えしています。長く持つ前提であれば、途中の上下には行きも帰りもありますし、毎月買い続けている間は、円で見た値段が下がった局面では同じ金額でより多くの口数を買うことになります。何年持つつもりなのか、そのお金をいつ使うのかが決まっていれば、途中の増減の受け止め方も決まります。逆に、使う時期が近いお金を海外に寄った比率のまま置いておくと、換金する時点の交換比率がそのまま結果になります。交換比率の見通しを当てにいくのではなく、自分で比率を決めて、決めた比率のまま持ち続ける。これが、比率の違いを結果の違いとして引き受けるやり方です。

一本のままでよいかという問いは、はい・いいえでは決まりません。決まるのは、いま持っているものを並べて、中の比率を言葉にできたときです。積み立ては止めずに続け、一枚に並べて重なりと薄いところを探し、足すなら薄い区分から選び、比率の偏りが円で見た増減としてどう出るのかを持ち続ける年数と合わせて見る。この順で進めれば、迷ったまま止まっている時間は短くなります。これは一つの考え方であり、どの区分をどれだけ持つのが適切かは、ご本人の収入や家族の状況、そのお金をいつ使うのかによって異なります。制度の枠や税金の扱いに関わる部分はご自身だけで判断せず、金融機関の窓口や所管の窓口、税務署や税理士といった専門家に確かめながら進めていただければと思います。

7. まとめにかえて

オルカンの過去1年間のリターンは+42.42%、S&P500は40.01%で、過去5年間では+151.72%と+175.94%と順位が入れ替わりました(いずれも2026年6月22日時点)。上位に並ぶ企業はほぼ共通しているのに成果が分かれるのは、分散の広さではなく、それぞれの企業に置かれた比率が違うからです。組入上位10銘柄の合計はオルカンが24.6%、S&P500が38.7%でした(2026年5月29日時点の比率を合計)。米国株だけが20%下がり、それ以外は変わらないと置いた試算では、100万円あたりの目減りが米国株比率100%で20万円、60%で12万円と8万円の差が出ています。名前で選んだままになっている方は、一度、月次レポートでご自身の一本の比率を確かめてみてください。どの比率を置くのが合っているかは、そのお金をいつ使うのかによって変わりますので、制度や税の扱いに関わる部分は金融機関の窓口や所管の窓口で確かめながら進めてください。

参考資料

奥田 朝