9月は年度の上半期が終わる月にあたり、積み立ての中身を一度確かめておきたい時期です。三菱UFJアセットマネジメントの公表資料によると、2026年6月22日時点で「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の過去1年間のリターンは+42.42%、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は40.01%でした。全世界の株式に投じる一本を選んでおけば、地域の分散そのものは一本で確保できます。ただ、その一本の中身は約6割が米国株です。この記事では、両ファンドの運用実績と組入上位銘柄の比率を並べたうえで、米国株の比率が100%の場合と60%の場合とで、同じ下落局面の影響がどれだけ違うのかを確かめます。

奥田 朝
「全世界に投じる一本を選んだのだから、地域の分散はこれで足りている」と受け止める前に、その一本の中で米国株が何割を占めているのか、上位10銘柄の合計で全体の何割になるのか、という2つの数字を先に見ておくと、値動きが荒れた月に自分の資産がどう動くのかの見当がつけやすくなります。

なお、オルカンとS&P500の運用実績に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年比較】オルカンとS&P500はどっちを選ぶべき?運用実績の違いとあなたに合う投資法
【2026年比較】オルカンとS&P500はどっちを選ぶべき?運用実績の違いとあなたに合う投資法

1. オルカンとS&P500の運用実績は、期間ごとにどちらが伸びているのか「1年・5年・設定来のリターン」

【2026年比較】オルカンとS&P500はどっちを選ぶべき?運用実績の違いとあなたに合う投資法では、両ファンドの運用実績と中身の違いを取り上げています。

ここで並べるのは、三菱UFJアセットマネジメントが公表している2026年6月22日時点の運用実績です。同じ日で切った数字なので、期間の取り方をそろえて見比べられます。

1.1 「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の実績は、期間ごとにどこまで伸びているのか

まず全世界株式のほうから見ていきます。2026年6月22日時点の実績は次のとおりです。

  • 設定日:2018年10月31日
  • 設定来のトータルリターン:+283.06%
  • 過去5年間のリターン:+151.72%
  • 過去1年間のリターン:+42.42%
  • 過去6カ月間のリターン:+15.36%
  • 過去1カ月間のリターン:+3.32%

設定日は2018年10月31日で、この時点までの運用期間は7年半ほどです。その間のトータルリターンが+283.06%、直近の1年間だけを取り出すと+42.42%という並びになります。

1.2 「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の実績は、同じ期間でどう推移してきたのか

続いて米国株式のほうです。同じ2026年6月22日時点で、実績は次のようになっています。

  • 設定日:2018年7月3日
  • 設定来のトータルリターン:+345.36%
  • 過去5年間のリターン:+175.94%
  • 過去1年間のリターン:+40.01%
  • 過去6カ月間のリターン:+13.08%
  • 過去1カ月間のリターン:+2.36%

設定日は2018年7月3日で、全世界株式より3カ月ほど早く運用が始まっています。設定来のトータルリターンを比べるときは、この期間の長さの違いが乗っている点に気をつけたいところです。

1.3 期間を分けて並べ直すと、上に来るファンドはどこで入れ替わるのか

2つの実績を、期間ごとに向かい合わせにしてみます。同じ数字でも、切り取る長さを変えると順位が動きます。

直近1年のリターンで上に来るのはどちらか

まず1年です。この期間では全世界株式のほうが上に来ています。

  • オルカン:+42.42%
  • S&P500:40.01%

差は2.41ポイントほどです。米国以外の地域を組み入れている分が、この1年については上向きに効いた形になります。

直近5年に広げると、順位はどう入れ替わるのか

次に5年で見ます。ここでは順位が逆になります。

  • オルカン:+151.72%
  • S&P500:+175.94%

今度は米国株式のほうが24.22ポイント上です。1年で見たときとは、上に来るファンドが入れ替わっています。

設定来のトータルリターンでは、どれだけ差がついているのか

最後に、運用が始まってからの通算です。

  • オルカン:+283.06%
  • S&P500:+345.36%

差は62.30ポイントですが、先に見たとおり設定日が約3カ月ずれているため、同じ長さを比べた数字ではありません。なお両ファンドとも運用期間が10年に届いていないため、ここでは設定来の約7年を長期として扱っています。

奥田 朝
家計のご相談では、直近1年の数字だけを持ってきて、こちらのほうがよかったのではと迷われる方に数多くお会いします。ただ、ここで並べた数字のとおり、1年と5年では上に来るファンドが入れ替わっています。どの期間で切った順位なのかを添えずに結果だけを覚えてしまうと、次に順位が動いたときにまた迷うことになります。

2. 上位に並ぶ企業がほぼ同じでも成果が分かれるのは、どこに理由があるのか「組入比率と投資対象地域の広さ」

全世界株式と米国株式という名前を見ると、まったく違うものに投じているように思えます。ところが、中に入っている企業を上から並べるとほとんど重なります。それでも実績に差が出るのは、名前ではなく比率のほうに理由があります。

2.1 組入上位の銘柄は、両ファンドでどこまで重なっているのか

2026年5月29日時点では、両ファンドの組入上位5銘柄が同じ顔ぶれで並んでいます。まずはそれぞれの上位10銘柄を、比率まで含めて確かめます。

オルカンの組入上位10銘柄は、どの企業がどれだけを占めているのか(2026年5月29日時点)

  1. NVIDIA CORP(アメリカ / 情報技術):4.9%
  2. APPLE INC(アメリカ / 情報技術):4.3%
  3. MICROSOFT CORP(アメリカ / 情報技術):2.9%
  4. AMAZON.COM INC(アメリカ / 一般消費財・サービス):2.5%
  5. ALPHABET INC-CL A(アメリカ / コミュニケーション・サービス):2.1%
  6. ALPHABET INC-CL C(アメリカ / コミュニケーション・サービス):1.9%
  7. BROADCOM INC(アメリカ / 情報技術):1.8%
  8. TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC(台湾 / 情報技術):1.7%
  9. META PLATFORMS INC-CLASS A(アメリカ / コミュニケーション・サービス):1.3%
  10. TESLA INC(アメリカ / 一般消費財・サービス):1.2%

いちばん上のNVIDIA CORPで4.9%です。10番目のTESLA INCまで下りても1.2%で、上位に来ていても一社あたりの重みはそれほど大きくありません。10銘柄のうち9社が米国の企業で、残る1社が台湾の企業です。

S&P500の組入上位10銘柄では、同じ企業の比率がどこまで高くなっているのか(2026年5月29日時点)

  1. NVIDIA CORP アメリカ 半導体・半導体製造装置 7.9%
  2. APPLE INC アメリカ テクノロジ・ハードウェア・機器 7.0%
  3. MICROSOFT CORP アメリカ ソフトウェア・サービス 4.8%
  4. AMAZON.COM INC アメリカ 一般消費財・サービス流通・小売り 4.1%
  5. ALPHABET INC-CL A アメリカ メディア・娯楽 3.5%
  6. BROADCOM INC アメリカ 半導体・半導体製造装置 3.1%
  7. ALPHABET INC-CL C アメリカ メディア・娯楽 2.7%
  8. META PLATFORMS INC-CLASS A アメリカ メディア・娯楽 2.1%
  9. TESLA INC アメリカ 自動車・自動車部品 1.9%
  10. MICRON TECHNOLOGY INC アメリカ 半導体・半導体製造装置 1.6%

並んでいる企業の名前はほぼ同じですが、比率は別物です。NVIDIA CORPは7.9%で、全世界株式の4.9%と比べると1.6倍ほどの重みがあります。APPLE INCも7.0%と4.3%で、開きはさらに大きくなります。世界の景気を引っぱっている大手のIT企業が中核にいる点は共通していて、違うのはそこに置かれた比率のほうだ、という読み方になります。

2.2 同じ企業を持ちながら成果が分かれるのは、比率の置き方に理由がある

同じ銘柄を組み入れていてもリターンに差がつく最大の要因は、その銘柄が全体に占める割合です。割合が2倍あれば、その企業の値動きも2倍の重さで手元に返ってきます。

S&P500は米国の主要企業約500社に絞ると、上位の重みがどうなるのか

米国株式のほうは、米国の主要企業約500社だけで組み立てられています。投じる先の数がその範囲に収まるため、NVIDIA CORPやAPPLE INCといった上位の企業が占める割合が高くなります。米国のIT関連の株価が伸びた局面、たとえば過去5年間では、この寄せ方がそのままリターンの高さにつながりました。

オルカンは米国を中核に置きながら、残りの約4割をどこへ配るのか

全世界株式のほうも、構成の約6割は米国株です。ただし残りの約4割には日本や欧州、新興国などが入ります。同じ企業を持っていても、その分だけ一社あたりの割合は抑えられる形になります。

2.3 地域の分散が結果を左右するのは、どんな場面か「米国以外の約4割の働き」

直近1年間で全世界株式が上に来たのは、この米国以外の約4割による分散が働いた場面だったと読めます。

米国のIT関連の伸びが緩んだ一方で、日本や欧州の株式が相対的に堅かったような局面では、米国に寄せた組み立てよりも、広く分散させた組み立てのほうが上に来ることがあります。逆の局面では、同じ理由で下に回ります。

これから伸びるのは米国だと考えるなら米国株式、米国を中心に置きながら他の地域が伸びた分も取りこぼしたくないと考えるなら全世界株式、という整理のしかたもできるでしょう。どちらを選んでも、上位に並ぶ企業の顔ぶれは変わりません。変わるのは、その企業に置く比率のほうです。

奥田 朝
上位の銘柄がほとんど同じだと知って、では中身は同じなのかと聞かれることがあります。同じなのは並んでいる企業の名前までで、そこに置かれた比率は倍近く違います。ご自身が持っている一本がどちらの形に近いのかは、運用会社が公表している月次レポートの組入比率の欄で確かめられます。

3. どちらを選んだのがよかったのかは、どれだけの長さで見れば判断できるのか「20年・30年の物差しと途中の変動」

ここまで見てきたリターンは、いずれも2026年6月22日時点で切り取った数字です。1年で上に来たファンドが5年では入れ替わっていたように、区切る位置を変えれば順位も動きます。どちらを選んだのがよかったのかという問いに答えを出すには、20年、30年といった長さで見る必要があります。

逆にいえば、数カ月から1年ほどの動きで決めようとすると、比率の違いが結果に表れきる前に手を動かすことになります。過去1カ月間のリターンは全世界株式が+3.32%、米国株式が+2.36%、過去6カ月間ではそれぞれ+15.36%と+13.08%でした。この幅は、どちらの中身が自分に合っているかを決める材料としては短すぎます。

途中の変動をどう受け止めるかは、そのお金をいつ使うつもりなのかで変わります。使う時期が20年、30年先であれば、途中の上下には行きも帰りもあります。反対に、数年以内に使う予定のお金であれば、換金する時点の値段がそのまま結果になります。同じ比率でも、期間の置き方によって受け止め方は変わってきます。

なお、この記事は特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資信託には価格変動リスクがあり、元本を割り込むこともあります。最終的な判断はご自身の責任において行っていただくようお願いいたします。制度の枠や税金の扱いは改正されることもありますので、実際に使う段階では金融機関の窓口や所管の窓口で確かめてください。

奥田 朝
何年持つつもりなのかが決まっていないと、途中の下げをどこまで引き受けられるのかも決まりません。使う時期が先のお金と、数年以内に使う予定のお金を分けて書き出したうえで、それぞれに置く比率を考えていくのも進め方の1つです。

積み立てに使える期間が限られる年代で、運用の前提をどう置いて見積もるのかについては、【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーションが参考になります。

4. 【独自試算】もしも30%下落したら100万円はどうなる?

ここからは編集部による独自の試算です。ここまで見てきた「構成の約6割が米国株、残りの約4割がそれ以外」という比率の違い、つまり分散の度合いの違いが、下落局面でどれだけの差になって表れるのかを、100万円あたりの金額で確かめます。前提は次のとおりです。

  • 元手は100万円とし、一度に投じたものとして計算する(積み立ての途中経過は考えない)
  • 「米国株比率100%」は全額が米国株。「米国株比率60%」は米国株が60%、それ以外の地域の株式が40%。これは本文で確認した「構成の約6割は米国株、残りの約4割には日本や欧州、新興国などが含まれる」という記載に合わせた置き方
  • 下落局面は「米国株だけが下がり、それ以外の40%は変わらない」と置く。下落率は10%・20%・30%の3通りで見る
  • 為替の変動、信託報酬などの費用、税金は計算に入れない
  • 組入上位10銘柄の合計比率は、本文に並べた2026年5月29日時点の各銘柄の比率を単純に足したもの
  • 実際の相場では地域をまたいで同時に下がる局面もあり、片側だけが動くとは限らない。比率の効き方だけを取り出して見るための目安として扱う

まず、下落率ごとの残高です。米国株が10%下がった場合、米国株比率100%では100万円が90万円になり、10万円の目減りです。米国株比率60%では94万円で、目減りは6万円にとどまります。差は4万円です。

20%下がった場合は、100%が80万円(20万円の目減り)、60%が88万円(12万円の目減り)で、差は8万円に広がります。30%下がった場合は、100%が70万円(30万円の目減り)、60%が82万円(18万円の目減り)で、差は12万円です。下落率が10ポイント大きくなるごとに、100万円あたりの差は4万円ずつ開いていく計算になります。

次に、下がったあと元の100万円に戻すために要る上昇率を出します。10%の下落なら、100%の側は90万円から11.1%、60%の側は94万円から6.4%です。20%の下落では25.0%と13.6%、30%の下落では42.9%と22.0%となり、いずれも小数第2位を四捨五入しています。目減りの金額よりも、戻すために要る上昇率のほうが差の開き方は大きく、30%の下落では20.9ポイントの開きになりました。

最後に、比率の寄り方そのものも見ておきます。本文に並べた組入上位10銘柄の比率を足すと、全世界株式は24.6%、米国株式は38.7%でした。この上位10銘柄がまとめて30%下がったとすると、全体に及ぶ影響は前者が約7.4%、後者が約11.6%です。100万円あたりでは約7万4000円と約11万6000円で、差は約4万2000円になります。なお全世界株式の上位10銘柄には台湾の企業が1社(1.7%)含まれるため、この合計比率がそのまま米国株の比率を表しているわけではありません。

いずれも約束された金額ではなく、比率の違いがどう効くのかを見るための目安です。実際の値動きは地域や銘柄ごとに異なり、円で受け取る立場では為替の変動も重なります。投資信託には価格変動リスクがあり、元本を割り込むこともあります。ご自身の家計にあてはめて考える段階では、金融機関の窓口や所管の窓口、税務署や税理士といった専門家に確かめながら進めてください。

5. 【監修者コメント・村岸理美】比率の違いは、目減りの金額よりも戻すために要る上昇率に表れる

村岸 理美

今回のデータで注目していただきたいのは、期間の取り方によって上に来るファンドが入れ替わっている点です。過去1年間ではオルカンが+42.42%でS&P500の40.01%を上回り、過去5年間では+151.72%と+175.94%で逆になります。いずれも2026年6月22日時点の実績です。設定日はオルカンが2018年10月31日、S&P500が2018年7月3日と約3カ月ずれていますので、設定来のトータルリターンは同じ長さの期間を比べた数字ではないという点も押さえておいていただきたいところです。過去のリターンは、これからの成果を示すものではありません。

記事中の試算のように、米国株だけが下がってそれ以外は動かないと置くと、比率の効き方だけを取り出して見ることができます。ただし適用条件があります。実際の相場では地域をまたいで同時に下がる局面もあり、円で受け取る立場では為替の変動も重なります。信託報酬などの費用や税金も、この試算には含めていません。組入比率も2026年5月29日時点のもので、市場の値動きに合わせて毎月変わります。数字はあくまで、比率の置き方が結果にどう効くのかを見るための目安として受け取っていただければと思います。

CFPとして家計相談を受けるなかでも、分散という言葉と一本を持っていることを同じ意味に受け取って、中身の比率までは確かめていないケースを見てきました。ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、ご自身がどちら側に近い比率を持っているのかを、まず手元の資料で確かめていただきたいということです。組入比率は運用会社が公表している月次レポートや目論見書に載っています。数字を見比べたうえで、制度の枠や税金の扱いに関わる部分は金融機関の窓口や所管の窓口で確かめながら進めてみましょう。