9月は、すでに年金を受け取っている方のもとへ「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次届く月です。年金だけでは足りない分を手元の資産から埋めていくしかないと頭を悩ませる前に、確かめておきたいことがあります。この上乗せの給付が、毎月の取り崩しをどれくらい引き受けてくれるのかという点です。1000世帯以上のご相談を担当してきた経験からお伝えすると、月あたりの金額だけを見て「これでは変わらない」と判断してしまうと、使えるはずの仕組みを取りこぼすことになります。ここでは支給要件、2026年度の給付基準額、請求の手続き、そして公的年金そのものの平均額までを順に確かめていきます。
なお、年金生活者支援給付金に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 「年金生活者支援給付金」の支給要件は、どこで線が引かれているのか
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受け取っている方のうち、年金などの収入とその他の所得を合わせた額が一定の水準を下回る場合に、年金へ上乗せして受け取れるお金です。受け取っている基礎年金の種類に応じて老齢・障害・遺族の3つに分かれており、それぞれに別の要件が定められています。制度が始まった背景から、判定に使われる所得の考え方までを通して押さえておきたいときは、年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説にまとめています。
1.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件を確認
老齢の給付は、下の3つをすべて満たしている方が対象になります。所得の基準額は令和8年10月分から引き上げられるため、まず10月分からの額でみていきます。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれた方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下
3つのうち、年齢と所得はご自身の情報だけで確かめられます。しかし真ん中の一つは、住民票を同じにしている家族全員の課税状況を見ることになります。自分の年金額が低くても、同じ世帯に住民税を納めている方が一人でもいれば、それだけで対象から外れるということです。
この所得の基準額は、10月を境に切り替わります。令和8年9月分までの要件は、次のとおりです。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下である(※2)
新旧を並べると、次のようになります。
老齢年金生活者支援給付金の所得基準額
- 令和8年9月分まで:80万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下)
- 令和8年10月分から:82万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下)
補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となる所得の範囲
- 令和8年9月分まで:80万9000円を超え90万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円を超え90万6700円以下)
- 令和8年10月分から:82万6500円を超え92万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円を超え92万4100円以下)
なお、判定に使う収入には、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
1.2 「障害年金生活者支援給付金」の支給要件はどう定められているのか
障害の給付は、世帯の課税状況ではなくご本人の所得で判定されます。令和8年10月分からは、前年の所得が491万8000円以下(扶養親族等の数に応じて増額)であることが基準です。障害基礎年金を受給していることと、この所得の要件をともに満たす方が対象になります。
令和8年9月分までの要件は、次のとおりです。
- 障害基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて増額されます)
つまり、令和8年9月分までが479万4000円以下、令和8年10月分からが491万8000円以下という二段の見方になります。
1.3 「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件はどんな内容なのか
遺族の給付も、障害と同じ形で判定されます。令和8年10月分からの所得の基準は491万8000円以下です。
令和8年9月分までの要件は、次のとおりです。
- 遺族基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数に応じて増額されます)
判定に使う所得に遺族年金等の非課税収入を含めないのは、障害の給付と共通です。
2. 2026年度の「年金生活者支援給付金」の給付基準額はどれくらいなのか
給付の額は、物価の動きに応じて年度ごとに見直される決まりになっています。2026年度は前年度から+3.2%の増額改定となり、6月に支給される4月分の給付金からこの増額率が反映されています。
2.1 2026年度は前年度から+3.2%の改定「老齢・障害・遺族の月額」
- 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級は月額7025円、2級は月額5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円
ここで見落としたくないのは、老齢の給付だけは上の額が「基準額」として扱われるという点です。実際に届く額は、この基準額をもとに保険料の納付済期間や免除期間に応じて一人ひとり計算されます。月額5620円がそのまま入るとは限らないということです。
3. 給付金を受け取るための請求手続きは、どの順番で進めるのか
この給付は、要件を満たしたからといって自動的に年金へ上乗せされるものではありません。請求の手続きをとらないかぎり、支給は始まりません。ここでは、該当する方が多い2つの場面に分けて流れを確かめます。
3.1 これから老齢年金を受け取り始める方に届くもの
- 65歳になる3カ月前に、年金の受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封されて、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」が届く
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と併せて年金事務所へ提出する
3.2 すでに年金を受け取っている方に届くもの
- 毎年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送される
- 2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構からはがき型の請求書が届いた方は、電子申請を利用できる
- 電子申請を利用しない場合は、必要事項を記載し、ポストに投函する
支給は原則として、請求した月の翌月分から始まります。逆にいえば、届いた封筒を後回しにした月数分は、そのまま受け取らない期間になります。一度手続きを済ませれば、要件を満たすかぎり2年目以降の請求は不要です。
4. 公的年金そのものの平均年金月額はどれくらいか「全体・男女別」
上乗せの金額を家計に当てはめるには、土台になる年金本体がいくらなのかを知っておく必要があります。ここからは厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータをもとに、国民年金と厚生年金の平均年金月額を見ていきます。
4.1 「国民年金・厚生年金」の平均年金月額は、男女でどれだけ開いているのか
4.2 厚生年金の平均年金月額はどれくらいか「全体・男女別」
〈全体〉平均年金月額:15万289円(国民年金部分を含む)
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
4.3 国民年金の平均年金月額はどれくらいか「全体・男女別」
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
厚生年金の額には国民年金の金額も含まれています。上乗せ分だけの金額ではないという点は、読み違えやすいところです。そのうえで男女を見比べると、男性は16万9967円、女性は11万1413円となり、差は約6万円にのぼります。厚生年金に加入していた月数と、その間の収入の水準が額に反映されるためです。
一方で、国民年金(老齢基礎年金)の平均は男女ともに月額約6万円にとどまっています。保険料の未納や免除を受けた方が一定数含まれるため、その分だけ平均が下に引っ張られます。なおこれらは令和6年度の実績で、先に見た2026年度の改定とは時点が違います。
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