「認知症と診断されたのだから、介護保険サービスもすぐに使えるはず」——そう思っていると、実際の手続きに戸惑うかもしれません。認知症の診断と、介護保険サービスを利用するための要介護認定は、別々の手続きです。

この記事では、住民税非課税世帯であれば介護に関する優遇措置も重なる場合があることに触れつつ、認知症と診断された後、介護保険サービスを使うまでにどのような手続きが必要かを、自治体の公式情報にもとづき編集部が整理します。

1. 診断を受けただけでは、介護保険サービスは使えない

自治体の案内によると、認知症の診断を受けて介護サービスの必要性が出た場合、まずは市区町村の介護保険担当窓口か地域包括支援センターで「要介護認定」の申請を行う必要があります。診断書があれば自動的に介護保険サービスが使えるわけではなく、あくまで要介護認定という別の手続きを経る必要があります。

介護保険の自己負担割合や保険料の基本的な仕組みについては、介護保険料は40歳から天引き開始。自己負担割合の基本を整理した別記事で詳しく解説しています。この記事では、認知症というテーマに絞って、介護保険とのつながりを見ていきます。

齊藤 慧
「診断書をもらったから、あとは待っていればサービスが始まる」と思っていると、実際には要介護認定の申請という次のステップが必要なことに気づかず、時間が過ぎてしまうことがあります。診断を受けたら、その足で申請の相談に行くくらいの意識でいると、支援が必要になったときにスムーズに動けます。

2. 【編集者の視点】

実務上、本人に病識がなく、認定調査や申請そのものを拒否してしまうケースもあります。家族だけで抱え込まず、早い段階で地域包括支援センターに相談し、本人への説明の仕方も含めてアドバイスをもらうとよいでしょう。

※本記事は、編集部が自治体が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。

3. 40〜64歳でも、「初老期における認知症」なら介護保険の対象になる

介護保険サービスは、通常は65歳以上が対象ですが、40歳から64歳までの人(第2号被保険者)でも、老化に伴う16の特定疾病に該当すれば要介護認定を受けられます。この16の特定疾病のうちの1つが「初老期における認知症」です。

つまり、若年性認知症と診断された40代・50代の人でも、要介護認定を申請し、認定を受ければ介護保険サービスを利用できます。「介護保険は高齢者だけの制度」という思い込みは、若年性認知症の場合には当てはまりません。

3.1 【認知症と介護保険の関係】

前提:自治体公表の案内に基づく編集部整理1/2

前提:自治体公表の案内に基づく編集部整理

出所:LIMO編集部作成

  • 65歳以上:要介護・要支援の認定を受ければ対象(認知症の有無を問わない)
  • 40〜64歳:「初老期における認知症」等の16の特定疾病に該当し、認定を受けた場合のみ対象
齊藤 慧
「まだ40代だから介護保険とは無縁」と思っていた家庭ほど、若年性認知症の診断を受けたときに戸惑いが大きくなります。40〜64歳でも対象になり得ることを知っておくだけで、いざというときの心構えが変わってきます。

4. 認知症の重さと要介護度は、必ずしも一致しない

もう一つ見落とされがちなのが、認知症の進行度と、要介護認定の結果は必ずしも比例しないという点です。要介護認定は、認知症の症状だけでなく、身体機能の状態や、日常生活でどれだけの介助が必要かを総合的に判断して決まります。

「認知症の診断名だけを見れば、これくらいの要介護度になるはず」と自己判断していると、実際の認定結果とズレが生じることがあります。認定調査の際は、本人の普段の様子を最もよく知る家族が立ち会い、実態を正確に伝えることが大切です。

5. 認知症の人向けの専門的なサービスもある

要介護認定を受けた後は、一般的な訪問介護やデイサービスに加えて、認知症の人を対象にした専門的なサービスも選択肢に入ります。代表的なのが「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」で、少人数の家庭的な環境の中で、専門知識を持つスタッフの支援を受けながら共同生活を送るサービスです。

「介護保険サービスといえばデイサービスか訪問介護くらい」と思っていると、認知症の特性に配慮したサービスがあることを見落としがちです。ケアマネジャーにケアプランを相談する際は、こうした専門的なサービスも選択肢に入れて検討してもらうとよいでしょう。

5.1 【認知症に関わる介護保険サービスの例】

前提:介護保険制度の一般的なサービス区分に基づく編集部整理2/2

前提:介護保険制度の一般的なサービス区分に基づく編集部整理

出所:LIMO編集部作成

  • 一般的な訪問介護・デイサービス:要介護度に応じた日常生活の介助・生活援助が中心
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):少人数の家庭的な環境で、認知症に配慮した専門的な支援を受けられる
齊藤 慧
認知症の症状は一人ひとり異なるため、どのサービスが合うかも家庭によって変わってきます。「まだ在宅で頑張れるはず」と抱え込まず、ケアマネジャーに率直に悩みを伝えることで、こうした専門的なサービスにつながることもあります。

6. 【編集者の視点】

実務上、グループホームは要支援2以上が対象で、原則として認知症の診断を受けている必要があります。定員も少人数のため、地域によっては空きを待つ場合もあります。気になる場合は、早めにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、見学の予約を取っておくとよいでしょう。

7. まとめ

  • 認知症の診断を受けただけでは、介護保険サービスは使えません。別途、要介護認定の申請が必要です。
  • 40〜64歳でも、「初老期における認知症」に該当すれば、認定を受けて介護保険サービスを利用できます。
  • 認知症の進行度と要介護度は、必ずしも比例しません。身体機能等もあわせて総合的に判断されます。

認知症と診断されたら、まずは市区町村の窓口か地域包括支援センターに相談し、要介護認定の申請という次のステップに進むことが大切です。

年齢にかかわらず、認知症の診断を受けた時点で、介護保険サービスにつながる道があることを知っておくと、いざというときに落ち着いて対応しやすくなります。

8. よくある質問

8.1 Q. 認知症と診断されれば、自動的に介護保険サービスが使えますか。

A. いいえ。診断とは別に、市区町村への要介護認定の申請が必要です。

8.2 Q. 40代・50代で若年性認知症と診断された場合も、介護保険は使えますか。

A. 「初老期における認知症」という特定疾病に該当し、要介護認定を受ければ利用できます。

8.3 Q. 認知症が重いほど、要介護度も高くなりますか。

A. 必ずしも比例しません。身体機能の状態や日常生活での介助の必要度もあわせて総合的に判断されます。

8.4 Q. 本人が認定調査を嫌がる場合はどうすればよいですか。

A. 家族だけで抱え込まず、早めに地域包括支援センターに相談し、本人への説明の仕方を含めてアドバイスをもらうことをおすすめします。

参考資料

齊藤 慧