7. 30歳代に多い「昇給しても、積立額を増やしていいのか決めきれない」というご相談。IFA・神田 翔平が伝えたいこと
30歳代は、勤続年数が積み上がるにつれて昇給の機会が増え、収入が変わりやすい年代です。ただ、前半でみたように、額面が上がると、そこから引かれる社会保険料や税金も一緒に増えるため、手取りの伸びは額面の伸びよりも小さくなります。筆者もよくお客様から、収入が増えた分をどこに振り分ければいいのかというご相談をいただきます。増えた分を生活費に吸収させてしまうのも惜しい、けれども積立をどこまで増やしていいのかも分からない。相談の場では次のような声を耳にします。
7.1 30歳代に多いお悩み相談は「NISAの積立額を、いくらまで増やしていいのか分からない」

相談の場でも、収入が変わったときに積立額をどう見直すか決め手が見つからず、始めたときの設定のままにしている方に数多くお会いします。
7.2 【IFA・神田 翔平が回答】増やす前に、今の積立が続けられているという事実から確かめる
そのうえで、今現在の積立金額を無理なく続けられているのであれば、まずはそこをベースに続けていくことを考えましょう。
また、手段もむやみにどんどん分散させていくのではなく、制度のメリット・デメリットを比較したうえで判断しましょう。
手段によっては、流動性が低くなってしまい、本来の使いたい時期に使えなくなってしまう可能性があります。
そのような点を意識していくことが、収入が変わった年にできる静かな進め方の1つとなるでしょう。
7.3 ポイント1:続けられている積立は止めず、増額は「いつでも変えられる設定」として考える
専門的な話になるんですが、積立投資でいちばん効きにくいのは、金額の大小よりも「途中で止めてしまうこと」です。物価が上がっている局面では、今の積立額では追いつかないのではないかと不安になりますが、そこで設定をいじろうとして手が止まり、結局そのまま何もしないというのがよくある展開です。まず確かめたいのは、今の積立が生活を圧迫せずに続けられているかどうか。続けられているなら、それは崩さないほうがいい土台です。そのうえで、積立額は口座の設定を変えるだけで増やしたり戻したりできるものだと知っておくと、判断のハードルが下がります。ネット証券であれば、証券会社のサイトやアプリの積立設定の画面から、積立金額の変更や引き落とし方法の確認ができます。一度決めたら動かせないものではないので、迷っている間は現状の額を維持しておく、という選択も十分にありえます。
7.4 ポイント2:ほかの制度や個別の株に広げる前に、引き出せる時期とリスクの性格を確かめる
要点を先に申し上げると、収入が増えたからといって、使える制度をすべて並行して始める必要はありません。たとえばiDeCoは、掛けたお金がその年の所得から差し引かれる仕組みがある一方で、原則として60歳まで引き出せません。教育費や住宅の頭金など、途中で使う可能性のあるお金まで入れてしまうと、制度としては有利でも家計としては動きが取れなくなります。加えて、所得から差し引かれることによる負担の軽減は、そのときの年収の水準によって効き方が変わるため、節税を目的に置くのであれば、自分の年収がその効果を活かせる水準にあるかを先に確かめておくとよいでしょう。個別の株についても、投資信託との違いは「上がるか下がるか」ではなく、リスクの散らばり方です。投資信託は多くの銘柄にまとめて分散されますが、個別の株は一つの会社の業績や出来事がそのまま値動きに出ます。値動きの大きさが気になるという感覚は、その違いを言い当てているものなので、無理に打ち消す必要はありません。
7.5 ポイント3:増やす額は手取り収入に対する割合で見て、変更の締め切りと税金の扱いまで確かめる
では、いくらまでなら増やしていいのか。ひとつの目安として、積立額が手取り収入の2〜3割程度に収まる範囲であれば、増額を検討してもよいと考えています。ここで大事なのは、額面ではなく手取りで見ることです。昇給によって額面が上がっても、社会保険料や税金も一緒に増えるので、手取りの伸びはそれより小さくなります。額面の増えた分をそのまま積立に足すと、手取りに対する割合が思っていたより上振れしてしまいます。実務的な注意点も二つあります。ひとつは、積立設定の変更には金融機関ごとに締め切りがあり、翌月の買付から反映させたいなら前月のうちに手続きを済ませておく必要があるということ。もうひとつは、配当や分配金にかかる税金の扱いです。課税される口座で受け取る配当には税金がかかりますが、NISAの枠内で保有している分については、その税金がかからない仕組みになっています。
収入が増えた年こそ、積立額を「増やすか、増やさないか」の二択で考えるのではなく、手取りに対する割合と、いつでも戻せる設定であることの両方を確かめてみてください。これは一つの考え方であり、どこまで積立に回せるかは、手取りの水準や近い将来に予定している支出、すでに入っている保険の内容によって異なります。判断に迷うときは、今の積立額と手取り額を並べて書き出したうえで、専門家に相談してみるのも選択肢の1つです。
