4. 国保料が本来の3割に?「特定理由離職者」への軽減特例
ハローワークで「特定理由離職者」等の認定を受けた場合、市区町村の国民健康保険(国保)窓口に届け出ることで、高額な国保料を大幅に削減できる特例措置が受けられます。
4.1 ① 給与所得を「本来の3割」として保険料を計算
国保料は前年の所得をもとに算出されるため、退職直後は非常に高額になりがちです。
しかしこの制度では、対象者の前年の「給与所得」を本来の100分の30として保険料を再計算します。
例えば前年の給与所得が400万円だった人は、120万円の所得があったものとみなして計算されるため、支払う保険料は劇的に下がります。
なお、事業所得や不動産所得などは軽減の対象外です。
4.2 ② 高額療養費等の自己負担限度額も引き下げ
軽減特例は「高額療養費制度」にも適用されます。
対象者の給与所得を100分の30として自己負担の所得区分を判定するため、限度額自体が引き下げられ、医療費の負担も抑えられます。
4.3 ③ 軽減される期間と手続き
軽減期間は、離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までとされています。
この期間の長さは退職のタイミングによって変わる点に注意が必要です。
例えば2025年10月末に離職した場合、翌日である11月分から翌年度末の2027年3月分までの約1年5ヶ月(17ヶ月)が軽減の対象です。
一方、年度替わり直前の2025年3月31日に離職した場合は、翌日の4月分から2027年3月分までの丸2年間(24ヶ月)が対象となり、退職時期が年度の早い時期であるほど軽減を受けられる期間は長くなります。
ただし自動的には適用されないため、住所地の市区町村の国保窓口(保険年金課など)へ、ハローワークが交付した「雇用保険受給資格者証」(または通知)の原本を持参して届け出る必要があります。
5. 国民年金にもある「失業等による特例免除制度」
退職後に直面するもう一つの固定費が「国民年金保険料」です。
収入がないからと未納のまま放置すると将来の受給に不利益が生じますが、年金にも「失業等による特例免除制度」が用意されています。
5.1 ① 本人の前年所得を「ゼロ」とみなして審査
国民年金の保険料免除は、本来「本人」「配偶者」「世帯主」の3者の前年所得をもとに判定される制度です。
失業特例免除では、このうち本人の前年所得だけを「ゼロ」とみなして審査します。
これにより、退職直後で本人の前年の所得水準が高くても、全額免除や納付猶予が承認されやすくなります。
ただし、配偶者や、実家に戻った場合の世帯主(親など同居家族)に一定以上の所得がある場合は、審査対象がゼロになるのは本人分だけであるため、免除や猶予が認められないケースもある点には注意が必要です。
申請には、ハローワーク発行の「雇用保険受給資格者証」のコピーなどを添付し、市区町村の国民年金窓口へ提出します。
5.2 ② 免除を申請する4つのメリット
受給資格期間への算入
老齢基礎年金を受け取るための最低10年の加入要件に、免除期間もそのままカウントされる
将来の年金額への反映
全額免除でも、国庫負担分(本来の年金額の2分の1)は将来の受給額に反映される(未納は完全にゼロ)
障害・遺族基礎年金の受給権確保
免除手続きをしておけば、介護期間中に本人が病気や事故で障害を負ったり亡くなったりした場合も、本人や家族が障害基礎年金・遺族基礎年金を受け取れる
10年以内の追納制度
再就職後10年以内であれば、免除された保険料を追納することで将来の年金額を満額に回復できる
未納のまま放置するのと、免除の承認を得ておくのとでは、将来の生活防衛に大きな差がつきます。
保険料額や免除基準は年度により変わるため、申請前に日本年金機構の最新情報を確認することをおすすめします。
6. まとめにかえて|使える公的支援は、迷わずフル活用を
介護離職は、多くの場合、突発的に訪れます。
だからこそ、退職前後の手続きについて事前に知っておくかどうかで、その後の家計の余裕は大きく変わってきます。
やむを得ない事情で仕事を辞めることになった場合は、まずハローワークで「特定理由離職者」に該当するかどうかを確認し、該当するのであれば、国民健康保険料の軽減特例と国民年金保険料の特例免除の両方を、忘れずに市区町村の窓口へ申請しましょう。
いずれも自動的には適用されず、申請主義である点には注意が必要です。
ご自身の状況に当てはめた具体的な軽減額や免除の可否については、お住まいの市区町村や日本年金機構の窓口で確認することをおすすめします。
7. 筆者からのコメント:元ビジネスケアラーの視点
どんなに手を尽くしても両立が難しく、最終的に仕事を辞める決断をせざるを得ないこともあるでしょう。
私自身も「この先、家計も自分の人生もどうなってしまうのだろう」と、目の前が真っ暗になるほどの不安を経験しました。
心身ともに疲れ果ててしまう日もあるかもしれません。
それでも知っておいていただきたいのは、介護に専念するためにキャリアを一時的に中断することになったとしても、今回ご紹介した「国保の軽減」や「年金の特例免除」のような、ビジネスケアラーをそっと支えてくれる公的なセーフティネットが、確かに用意されているということです。
どうか一人で抱え込まず、こうした公的な制度をフルに活用して、少しでも心と生活の負担を軽くしてください。
あなたがご家族を大切にするのと同じように、あなた自身のこれからの暮らしも、どうか大切に守ってくださいね。
