5. 預貯金も積立投資も保険もあるのに、10年先に使うお金の見通しが立たない。ファイナンシャルアドバイザー・山﨑 夏子が語る、置き場所ごとの割合から整えていく順序
40歳代は、働いてきた年数が積み上がってきて、預貯金のほかに積立投資や保険といった複数の置き場所を、いつのまにか同時に持っている時期です。前半でみたように、手元にどれだけの資産が残るかは、収入の多さだけで決まるわけではなく、そのお金をどこに、どれくらいの割合で置いてきたかによっても差がついていきます。生命保険会社と保険代理店で1500世帯以上のご相談に応じてきた立場から申し上げると、この時期の方の手元には、保険証券の入った封筒と、証券会社から届く取引残高のお知らせが、別々の引き出しにしまわれていることがとても多いのです。片方ずつ眺めているかぎり、自分がいま何をどれくらいの比率で持っているのかは見えてきません。相談の場では次のような声を耳にします。
5.1 置き場所は一通りそろったのに、10年先に使うお金がどこから出てくるのか分からない

相談の場でも、置き場所は一通りそろっているのに、それぞれがどれくらいの比率になっているかまでは把握できていないという方に数多くお会いします。
5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・山﨑 夏子が回答】商品を選ぶのは、いちばん最後でいい
次に保険と債券を同じ「増やす手段」の物差しで見比べて、途中で引き出すときの扱いと受け取るときの税の違いまで確かめることも大切です。それらを確認したうえで、使う時期の順に優先順位をつけてから比率を決めることが、10年先に使うお金の見通しを立てる順序になります。
5.3 ポイント1:持っている置き場所を、商品名ではなく比率で一枚に並べる
最初にお願いしているのは、いま持っているものを一枚の紙に書き出していただくことです。このとき商品名で並べても話は進みません。保険の名前、投資信託の名前と書いていくと、名前の数だけ増えて、結局どれが多いのか分からなくなるからです。並べるのは、預貯金・投資・保険という置き場所の区分と、それぞれが全体の何割にあたるかという比率です。金額の大小より、割合で見たときの偏りのほうが判断に効きます。預貯金に大きく寄っている方もいれば、保険で長く積み上げてきた分が思ったより大きい方もいて、書き出してみるまでご本人も気づいていないことがほとんどです。今はオンラインのマイページで、加入している保険の内容や積立の残高をまとめて確認できる仕組みも整ってきていますので、通帳と保険証券を一つずつ探すより、まずそこで全体像を出してしまうほうが早く済みます。あわせて、いまの積立をこのまま続けたら何年後にどれくらいになるのか、簡単な試算をご覧いただくようにしています。数字を見ると、足りないのか足りているのかが分かるだけでなく、そもそも自分が何年後を目指しているのかがはっきりしてきます。
5.4 ポイント2:保険と債券を、同じ「増やす手段」の物差しで見比べる
比率が見えたら、次はそれぞれの置き場所の性格を確かめます。ご相談の中で多いのが、保険の利率と債券の利回りを横に並べて「数字がそんなに変わらないなら同じだろう」と受け取ってしまうケースです。けれども、この二つは同じ条件で増えているわけではありません。保険は、増やす働きとあわせて万一のときの保障が付いていて、その分の費用が中に含まれています。債券は、満期まで持てば決まった利息を受け取り、満期に額面が戻ってくることを前提にした資産で、保障は付きません。さらに、貯蓄性のある保険には、途中で解約する際に、そのときの市場の金利水準に応じて受け取る額が増減する仕組みが組み込まれていることがあります。契約したあとに世の中の金利が上がっていると、解約して受け取れる額が思っていたより少なくなる、という向きに働くことがある仕組みです。同じ「増える」という言葉でも、どんな条件で増え、どんなときに目減りするのかが違います。数字を並べる前に、この違いを先に確かめておくことをおすすめしています。
5.5 ポイント3:途中で引き出せるかと、受け取るときの税の扱いまで確かめる
10年から15年先に使うお金だと考えていても、その間に別の出費が必要になることはあります。ですから、それぞれの置き場所が「途中でお金に戻せるかどうか」も見ておきます。預貯金は、いつ引き出しても金額そのものは変わりません。債券は、満期を待たずに売る場合は、その時点の価格での売却になりますから、受け取る額が買ったときを下回ることもあります。貯蓄性の保険も、加入から間もない時期に解約すると、それまでに払い込んだ額より受け取る額が少なくなるのが一般的です。途中でやめられることと、いつやめても損をしないことは別の話だと考えてください。もう一つ確かめておきたいのが、受け取るときの税の扱いです。運用で増えた分にどう課税されるかは、置き場所によって計算の仕方が異なります。保険の満期金や解約して受け取るお金は、投資の利益とは別の区分で扱われることがありますし、一定の枠内なら運用の利益に課税されない制度も使えます。利率の数字だけでなく、手元に残る額で見比べると、順位が入れ替わることがあります。
5.6 ポイント4:使う時期の順に優先順位をつけてから、比率を決める
最後が、ご本人が「そこさえ決まれば決められそう」とおっしゃっていた部分です。いくら必要で、それが何年後なのかを、近い順に並べていきます。数年以内に使う可能性があるお金は、増やすことより、必要なときにそのまま引き出せることを優先します。10年から15年先に使うお金は、時間を味方につけられる層ですから、値動きのある置き場所に回す余地があります。この層では、受け取った利息をそのまま使うのか、もう一度運用に回すのかで増え方が変わってきます。利息を再び運用に回していく持ち方は、置いておく期間が長くなるほど差が開くので、使う時期が遠いお金ほど向いています。そして、預貯金の中に、使う予定が決まらないまま置きっぱなしになっている部分があるなら、まずそこから、期間の短いものに充てていく。この順番で考えると、どこにどれだけ置くかという比率は、商品を選ぶ前にほとんど決まります。優先順位が先で、比率がその次、商品はいちばん最後です。
置き場所が一通りそろっている方ほど、次に何を足すかを考えがちですが、その前にいまの比率を一枚に並べるだけで、動かせる部分と動かしてはいけない部分が分かれてきます。これは一つの考え方であり、どの区分にどれだけ置くのが適しているかや、税の扱いがどうなるかは、収入や家族の状況、加入している契約の条件によって異なります。まずは通帳と保険証券、積立の残高が分かるものを同じ場所に集めて、区分ごとの割合を書き出してみてください。そのうえで、比率を動かす段階では、契約ごとの条件を専門家に確認しながら進めることをおすすめします。
6. まとめにかえて
年収の階層ごとに金融資産の中身を並べると、債券・株式・投資信託が資産全体に占める割合は、どの階層もおおむね20%台に収まっていました。年収1200万円以上の26.69%と、1000~1200万円未満の26.68%の差は0.01ポイントです。比率の表だけを見ていると、階層のあいだに大きな違いはないように映ります。
それでも金額には開きがあり、2910万円という差を分解すると、約64.0%にあたる1862万円が債券・株式・投資信託の差でした。預貯金の差は621万円で、約21.3%にとどまります。増えている中身のほうを見ると、比率の表とは違う姿が出てきます。
まずは、いま持っている資産を預貯金・債券・株式・投資信託・その他の区分に分けて、それぞれが全体の何割にあたるかを書き出してみてください。ここで挙げた数字は調査の平均値で、ご自身に当てはまる比率は収入や家族の状況によって変わります。値動きのある置き場所には元本割れの可能性があり、税や手数料の扱いも商品や契約の条件によって変わるケースがありますので、取引のある金融機関の窓口や、お手元の契約の書面で確かめながら進めてみてください。
