9月は、4月からの半年分の入出金が通帳に並び、預金の残高と積立の残高を見比べる方が増える時期です。
そこで気になるのが、同じくらいの収入の家庭がどれくらいの資産を持っているのか、という点です。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の調査では、二人以上世帯が持つ金融資産の額が年収の階層ごとに公表されていて、年収1200万円以上の層と、その1つ下の層とのあいだには3000万円近い開きがあります。
ただ、資産全体に占める投資の割合のほうは、多くの階層が20%台に収まっています。比率だけを横に見ていくかぎり、開きがついている理由は表に出てきません。この記事では、年収別の保有額とその中身、富裕層・超富裕層の割合、年代別の貯蓄額を確かめたうえで、階層のあいだにある2910万円が何でできているのかを計算します。
なお、日本の富裕層の割合や、年収別・年代別の資産のデータに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 年収の階層ごとに、金融資産はいくら持たれていて、その中身はどう分かれているのか
はじめに、世帯の年間収入ごとに、金融資産がどれくらい持たれているのかを見ていきます。金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)」には、年間収入の階層別に、預貯金・債券・株式・投資信託といった種類ごとの平均額が並んでいます。
年代別の平均貯蓄額まで含めた全体像は、【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解にまとめています。
ここで並ぶ数字は、金融資産を持っていない世帯も母数に入れた平均です。持っている世帯だけを取り出した数字より低く出る点を、先に押さえておいてください。
1.1 金融資産を保有していない世帯まで含めた、種類別の平均額を確認する
《年間収入別》の金融資産保有額はどれくらいか「全国と7つの階層」
まず、種類を問わない合計額です。
全国:1940万円
- 収入はない:634万円
- 300万円未満:858万円
- 300~500万円未満:1431万円
- 500~750万円未満:1755万円
- 750~1000万円未満:2222万円
- 1000~1200万円未満:2725万円
- 1200万円以上:5635万円
いちばん上の1200万円以上だけが5635万円と離れていて、1つ下の1000~1200万円未満の2725万円とのあいだに2910万円の開きがあります。この開きが何でできているのかを、種類ごとに追っていきます。
《年間収入別》の預貯金(運用または将来の備え)はどれだけ置かれているか
全国:745万円
- 収入はない:385万円
- 300万円未満:368万円
- 300~500万円未満:631万円
- 500~750万円未満:693万円
- 750~1000万円未満:908万円
- 1000~1200万円未満:1028万円
- 1200万円以上:1649万円
預貯金は、階層が上がるにつれてなだらかに増えていきます。1200万円以上でも1649万円で、合計額の5635万円と比べると、増え方はゆるやかです。
《年間収入別》の債券はどれだけ保有されているか
全国:78万円
- 収入はない:7万円
- 300万円未満:36万円
- 300~500万円未満:54万円
- 500~750万円未満:58万円
- 750~1000万円未満:67万円
- 1000~1200万円未満:91万円
- 1200万円以上:343万円
債券は、全国平均で78万円と、ほかの種類にくらべて金額そのものが小さい区分です。それでも1200万円以上では343万円と、1つ下の91万円の3倍を超えています。
《年間収入別》の株式はどれだけ保有されているか
全国:433万円
- 収入はない:33万円
- 300万円未満:191万円
- 300~500万円未満:235万円
- 500~750万円未満:365万円
- 750~1000万円未満:434万円
- 1000~1200万円未満:572万円
- 1200万円以上:1792万円
株式は、1200万円以上で1792万円です。この層では、預貯金の1649万円を上回っています。
《年間収入別》の投資信託はどれだけ保有されているか
全国:216万円
- 収入はない:153万円
- 300万円未満:79万円
- 300~500万円未満:167万円
- 500~750万円未満:189万円
- 750~1000万円未満:238万円
- 1000~1200万円未満:292万円
- 1200万円以上:682万円
投資信託も、階層が上がるにつれて金額が大きくなります。「収入はない」世帯の153万円が300万円未満の79万円より多いのは、退職後に取り崩しながら暮らしている世帯が含まれるためと考えられます。
《年間収入別》の「債券・株式・投資信託の合計額」と、金融資産全体に占める割合がどう動くか
債券・株式・投資信託を合わせた金額と、それが金融資産全体の何%にあたるかを並べます。
全国:727万円(24.79%)
- 収入はない:193万円(8.99%)
- 300万円未満:306万円(22.14%)
- 300~500万円未満:456万円(26.21%)
- 500~750万円未満:612万円(23.42%)
- 750~1000万円未満:739万円(34.29%)
- 1000~1200万円未満:955万円(26.68%)
- 1200万円以上:2817万円(26.69%)
金額のほうは、年収が上がるにつれて大きくなっています。ここまでは想像どおりかもしれません。
ところが、金融資産全体に占める割合に目を移すと、様子が変わります。年収750~1000万円未満の34.29%がやや高いほかは、「収入はない」世帯を除けば、どの階層もおおむね20%台に収まっています。1200万円以上の26.69%と、1つ下の1000~1200万円未満の26.68%にいたっては、0.01ポイントしか違いません。
比率だけを横に見ていくと、階層のあいだに差はほとんど見えません。値動きのある置き場所に資産を回している家庭は、収入の高い層に限らず広がっている、という読み方もできます。それでも金額には2910万円の開きがある。この食い違いは、記事の後半で分解して確かめます。
2. 日本の富裕層・超富裕層は、世帯全体のどれだけを占めていて、世帯数はどこまで増えているのか
金額の大きい層がどれくらいいるのかも見ておきます。ここでいう富裕層と超富裕層は、株式会社野村総合研究所のレポート『野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計』のなかで、世帯の純金融資産保有額によって次のように区切られています。
- 富裕層:世帯の純金融資産保有額が1億円以上5億円未満
- 超富裕層:世帯の純金融資産保有額が5億円以上
純金融資産は、持っている金融資産から負債を引いた額を指します。区切りに使われているのが年収ではなく、手元に残っている資産の額だという点が、ここまで見てきた年収別のデータとの違いです。
この2つの層が全世帯に占める割合は、次のようになっています。
- 富裕層:約2.75%
- 超富裕層:約0.21%
2つを合わせても3%に届きません。ただ、2023年の調査では、この2つの層の世帯数が2005年以降で最も多くなりました。
【2023年】時点での富裕層・超富裕層の世帯数
- 富裕層:153万5000世帯
- 超富裕層:11万8000世帯
割合だけを見ると縁遠く感じられるかもしれませんが、世帯数そのものは増えています。背景には、株式市場の値上がりや投資信託の広がりによって、持っている資産の評価額が上がったことがあると考えられます。収入から貯めて積み上がった分だけでなく、置いていた資産が値上がりした分が効いている、という見方ができます。
ここが、年収別のデータと重ねて読むときに効いてきます。値上がりの分を受け取れるかどうかは、資産のうちどれだけを値動きのある置き場所に回しているかで変わるためです。ただし、値動きは上下どちらにも振れますから、元本割れの可能性は常に残ります。
3. 20歳代から70歳代までの貯蓄額は、平均値と中央値でどこまで離れるのか
次は、年代ごとの貯蓄額です。J-FLEC(金融経済教育推進機構)の『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和7年)』および『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)』から、金融資産を保有していない世帯を含む数字を並べます。
3.1 単身世帯の20歳代から70歳代までを、平均値と中央値でならべて確認する
- 20歳代:平均値255万円・中央値37万円
- 30歳代:平均値501万円・中央値100万円
- 40歳代:平均値859万円・中央値100万円
- 50歳代:平均値999万円・中央値120万円
- 60歳代:平均値1364万円・中央値300万円
- 70歳代:平均値1489万円・中央値500万円
年齢が上がるほど金額も大きくなる形ですが、平均値と中央値の開きのほうが目を引きます。40歳代は平均値859万円に対して中央値100万円で、30歳代の中央値と同じ額です。60歳代で中央値が300万円まで伸びるのは、退職金を受け取る時期にあたることが影響していると考えられます。
3.2 二人以上世帯の20歳代から70歳代までを、平均値と中央値でならべて確認する
- 20歳代:平均値525万円・中央値125万円
- 30歳代:平均値1096万円・中央値311万円
- 40歳代:平均値1486万円・中央値500万円
- 50歳代:平均値1908万円・中央値700万円
- 60歳代:平均値2683万円・中央値1400万円
- 70歳代:平均値2416万円・中央値1178万円
二人以上世帯は、平均値も中央値も単身世帯を上回ります。世帯の人数が多い分、暮らしにかかる費用も将来に向けた備えも大きくなるためです。子どものいる家庭が含まれることで、教育費に向けた蓄えが積み上がっている面もあります。
3.3 平均値ではなく「中央値」を先に見ておきたいのはどうしてか
平均値は、資産の大きい一部の世帯に引き上げられます。前の章で見たとおり、純金融資産1億円以上の世帯は全体の3%に届かない規模ですが、金額そのものが大きいため、平均値のほうを押し上げます。自分の位置を確かめる目安としては、真ん中にあたる中央値のほうが使いやすいという見方ができます。
たとえば30歳代の二人以上世帯の中央値は311万円です。ここを下回っているなら、まず毎月出ていく固定費を書き出して、動かせる部分がないかを見ていくのも方法の1つです。
4. 物価が上がるなかで、資産の置き場所とその比率をどう見直していくか
ここまで、年収別の金融資産保有額とその中身、富裕層・超富裕層の割合と世帯数、年代別の貯蓄額を見てきました。
並べてみて見えてくるのは、資産の額そのものより、中身がどう分かれているかで、これから先の増え方が変わってくるという点です。
参考までに、2025年8月29日に日本銀行調査統計局が公表した「資金循環の日米欧比較」では、米国の家計金融資産のうち「現金・預金」が占める割合は11.5%となっています。日本の家計とは、置き場所の比重が大きく異なります。
物価が上がっている局面では、預貯金に置いたままの資金は、額面が変わらなくても買えるものが目減りしていきます。一方、値動きのある置き場所に回した資金には、価格変動リスクが伴います。どちらにも避けられない性質があるため、片方に寄せきるかどうかではなく、比率をどう置くかという形で考えていくことになります。
4.1 データから組み立てる、年代と年収に合わせた比率の整え方3段階
中央値を目安にしながら、どの順で手をつけるかを3つの段階に分けて整理します。
1つ目は、暮らしを守る資金を確保する段階です。毎月の生活費の3〜6カ月分を、いつでも引き出せる形で持っておきます。30歳代の二人以上世帯であれば、100万〜150万円程度が1つの目安になります。
2つ目は、運用の利益に課税されない枠を使う段階です。毎月一定額を積み立てる形にして、手取り年収の10〜15%を目安に置くという考え方があります。金額を先に決めておくと、値動きに合わせて出し入れする場面が減ります。
3つ目は、余っている資金を分けて置く段階です。暮らしを守る資金と毎月の積立に支障が出ない範囲で、値動きの幅を受け入れられる部分に回します。ここは、無理のない範囲でゆっくり広げていくところで、急いで比率を動かす場面ではありません。
見直しに入る前に確かめておく3つの点
- いますぐ動かせる資金が、同じ年代の中央値と比べてどのあたりにあるか
- 毎月いくらを、どの置き場所に積み立てているか
- 半年から1年は使わない資金と、近く使う予定のある資金が、区分として分かれているか
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