「年金保険料、また上がった気がする」と感じたことはないでしょうか。実は、国民年金と厚生年金では、保険料が変わる仕組みそのものが異なります。この記事では、日本年金機構の公表資料をもとに、それぞれの改定ルールの違いを編集部で整理します。
「毎年上がり続けている」という漠然とした不安の正体を、実際の数字で確認していきましょう。特に、国民年金と厚生年金の両方に関わりがある人にとっては、この2つの仕組みの違いを整理しておくことが、家計の見通しを立てるうえで役立ちます。
この記事では、2つの制度の改定ルールの違いに加えて、負担を抑える前納の仕組みや、保険料が変わったと感じたときの確認方法まで、あわせて整理していきます。
1. 国民年金は「毎年度見直される」定額制
まず、国民年金保険料がどのように決まっているのかを確認します。
1.1 令和6年度から3年連続で引き上げ
日本年金機構によると、国民年金保険料(1号被保険者)は令和6年度が月額1万6980円、令和7年度が1万7510円、令和8年度が1万7920円です。3年連続で引き上げられています。
国民年金保険料は、法律で定められた基準額に、賃金や物価の動きを反映した「保険料改定率」を掛けて、毎年度見直される仕組みになっています。つまり「なんとなく毎年上がっている」という感覚は、国民年金に関しては制度上正しい理解ということになります。
1.2 【国民年金保険料の年度別推移】
- 令和6年度:1万6980円
- 令和7年度:1万7510円
- 令和8年度:1万7920円
令和6年度から令和8年度までの2年間で、月額940円上がった計算です。年額に直すと1万1280円の増加になります。
2. 【編集者の視点】
実務上の注意点は、この改定率が「今後も同じペースで上がり続ける」とは限らないという点です。賃金や物価の動向によって、改定率は年度ごとに変動するため、来年度以降も同じ幅で上がるとは決まっていません。過去の推移をそのまま将来に当てはめて家計を組み立てるのは避けた方がよいでしょう。
最新の保険料額は、毎年度、日本年金機構の公式ページで確認するのが確実です。前年度の金額をそのまま覚えておくと、思わぬ差額に気づかないことがあります。
3. 一方、厚生年金の保険料率は固定されている
国民年金とは対照的に、厚生年金の保険料率は長期間変わっていません。
3.1 平成29年9月を最後に、引き上げが終了
日本年金機構によると、厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、平成29年9月を最後に引き上げが終了しています。事業主と被保険者で折半するため、本人の負担分は半分の9.15%です。給与明細を見ても、この料率自体が変動している様子は確認できません。
厚生年金は毎月の給与(標準報酬月額)に一定の料率を掛けて計算する「定率制」のため、保険料率そのものが変わらなければ、給与が同じである限り、保険料額も変わりません。国民年金のように「基準額が毎年度見直される」という仕組みとは根本的に異なります。
この違いを整理すると、国民年金は「制度側の基準が動く」ことで保険料が変わり、厚生年金は「自分の給与水準が動く」ことで保険料が変わる、という対照的な構造になっていることがわかります。
3.2 【国民年金と厚生年金・改定ルールの違い】
- 国民年金:定額×毎年度の改定率で決まり、令和6〜8年度は3年連続で引き上げ
- 厚生年金:標準報酬月額×固定の料率18.3%で、平成29年9月以降は料率の変更なし
4. 【編集者の視点】
注意しておきたいのは、「料率が固定」というのはあくまで平成29年9月以降の現状であり、将来にわたって未来永劫変わらないと保証されたものではないという点です。少子高齢化の進行度合いによっては、法改正で再び見直される可能性はゼロではありません。
とはいえ、直近10年近く料率が動いていないという実績自体は、家計の見通しを立てるうえで一定の安心材料になります。給与が上がらない限り保険料も上がらない、という予測のしやすさは、国民年金にはない厚生年金ならではの特徴です。
5. 国民年金保険料の改定率は、何をもとに決まるのか
「毎年度見直される」と一口に言っても、その根拠となる仕組みを知らない人は多いはずです。もう少し詳しく確認します。この仕組みを知っておくと、ニュースで改定額が発表されたときの受け止め方も変わってきます。
5.1 賃金や物価の変動を反映した「保険料改定率」で決まる
国民年金保険料の額は、法律で定められた基準となる金額(保険料額)に、その年度の「保険料改定率」を掛けて算出されます。この改定率は、前年度の物価変動や賃金の伸びといった、経済全体の動きを反映する仕組みになっています。
つまり、景気が良く賃金が上がっている局面では保険料額も上がりやすく、逆に賃金が伸び悩む局面では、上昇幅が小さくなったり据え置かれたりすることもあり得ます。「毎年必ず一定額ずつ上がる」という単純な仕組みではない点は覚えておくとよいでしょう。ニュースで改定額が発表されるたびに、その背景にある経済指標にも目を向けてみると理解が深まります。
5.2 年度の途中で変わることはなく、4月に切り替わる
国民年金保険料の見直しは、年度の途中で行われることはありません。新しい年度(4月分)から新しい金額が適用される形で、1年間は同じ金額が続きます。給与のように月ごとに変動するものではなく、年度単位で固定される仕組みだという点も、厚生年金の等級見直し(定時決定・随時改定)とは異なる特徴です。
6. 厚生年金の保険料が上がったと感じたら、まず確認すること
料率が固定されているにもかかわらず「保険料が上がった」と感じた場合、考えられる原因を整理します。
6.1 標準報酬月額が変わっていないか、給与明細を確認する
厚生年金保険料は、実際の給与そのものではなく、32段階に区切られた「標準報酬月額」という等級に当てはめて計算されます。昇給・降給や、賞与を含めた年間の報酬水準が変わると、この等級が変わり、結果として保険料額も変わります。
給与明細の保険料額が変わった場合は、まず自分の標準報酬月額の等級が変わっていないかを確認するのが近道です。等級ごとの具体的な金額は、日本年金機構が公表する保険料額表で確認できます。等級の見直しは毎月起きるものではなく、決まったタイミングでのみ反映されます。
6.2 子ども・子育て拠出金など、別の負担と混同していないか
給与明細に記載される社会保険料関連の項目には、厚生年金保険料のほかにも、健康保険料や雇用保険料など複数の項目が含まれます。厚生年金保険料そのものではなく、これらの別項目が変動したことで、社会保険料全体の負担感が変わっているケースもあります。
特に健康保険料は都道府県ごとに料率が異なり、毎年度見直される仕組みになっているため、「社会保険料が上がった」と感じたときに、まず厚生年金なのか健康保険なのかを切り分けて確認することが大切です。給与明細の各項目名を一つずつ照らし合わせる習慣をつけておくと、原因の特定がスムーズになります。
7. 国民年金保険料には、前納すると安くなる仕組みもある
国民年金保険料が毎年度見直される一方で、支払い方を工夫することで負担を抑える方法も用意されています。
7.1 まとめて前払いすると、割引が適用される
国民年金保険料は、毎月納めるだけでなく、半年分・1年分・2年分をまとめて前払いする「前納」という制度があります。前納すると、通常の納付額よりも割引が適用され、口座振替であればさらに割引額が大きくなります。まとめる期間が長いほど、割引額も大きくなる傾向があります。
厚生年金のように給与天引きで自動的に納付が完了する仕組みとは異なり、国民年金は自分で納付方法を選べる分、前納などの工夫によって実質的な負担を抑える余地があります。まとまった資金を用意できる場合は、検討する価値があります。
※本記事は、編集部が日本年金機構が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
8. 【編集者の視点】
実務上のポイントは、前納を選ぶ場合、年度が始まる前後の申込時期を逃さないことです。前納の申込には受付期間が設けられているため、興味がある場合は日本年金機構の公式ページで最新の受付期間を確認しておく必要があります。
厚生年金は自分で納付方法を選ぶ余地がない一方、国民年金は前納という形で自分なりの工夫ができる点も、2つの制度の性質の違いのひとつです。毎月の家計に余裕がある年は、前納の申込を選択肢に入れてみるとよいでしょう。
なお、関連して老後資金の正しい「内訳」と不足額のあぶり出しについても、あわせて確認しておくと理解が深まります。
9. まとめ
- 国民年金保険料は毎年度見直され、令和6〜8年度は1万6980円→1万7510円→1万7920円と3年連続で引き上げられています。
- 厚生年金保険料率は18.3%で固定されており、平成29年9月以降、引き上げは行われていません。
- 厚生年金の保険料が変わったと感じた場合、多くは標準報酬月額(給与水準)の変化が原因です。
- 国民年金・厚生年金いずれも、最新の金額は日本年金機構の公式ページで確認するのが確実です。
「年金保険料が毎年上がっている」という感覚は、国民年金には当てはまりますが、厚生年金の料率自体には当てはまりません。2つの制度で改定の仕組みが根本的に異なることを知っておくだけで、家計の見通しが立てやすくなります。
漠然とした不安のまま放置するのではなく、自分がどちらの制度に、どのような形で保険料を納めているのかを、あらためて確認しておくことをおすすめします。
自分が納めている保険料の内訳や最新額を確認したい場合は、日本年金機構の公式ページやねんきんネットで確認することをおすすめします。制度の違いを理解したうえで数字を見ると、単なる不安ではなく、根拠のある家計管理につながります。
あわせて、ねんきん定期便から読み解く受給額のリアルも参考にしてみてください。
10. よくある質問
10.1 Q. 国民年金保険料は、これからも毎年上がり続けますか。
A. 断定はできません。国民年金保険料は賃金や物価の動向を反映した改定率によって毎年度見直されるため、上がる年もあれば据え置き・引き下げになる年も制度上はあり得ます。
10.2 Q. 厚生年金保険料率18.3%は、今後も変わりませんか。
A. 平成29年9月以降は変更されていませんが、将来にわたって変わらないと保証されているわけではありません。法改正があれば見直される可能性はあります。
10.3 Q. 給与が変わっていないのに厚生年金保険料が変わったのはなぜですか。
A. 標準報酬月額は、定時決定(毎年1回)や随時改定(給与が大きく変わった場合)というタイミングで見直されます。実際の給与変動と保険料への反映には時間差があるため、変わっていないように見えても等級が動いている場合があります。
10.4 Q. 国民年金と厚生年金、どちらの保険料の方が高いですか。
A. 一概には比較できません。国民年金は定額(令和8年度は月1万7920円)ですが、厚生年金は給与水準によって金額が変わる定率制のため、標準報酬月額が低い人は国民年金より安く済む場合もあります。
10.5 Q. 国民年金保険料の改定率は、どこで確認できますか。
A. 日本年金機構の公式ページで、当該年度の保険料額とあわせて公表されています。前年度の金額と比較したい場合も、同じページで過去の推移を確認できます。
10.6 Q. 前納すると、必ず割引になりますか。
A. 前納には割引が適用されますが、割引額は前納する期間(半年・1年・2年)や納付方法(口座振替・現金など)によって異なります。詳しい割引額は日本年金機構の公式ページで確認してください。
10.7 Q. 厚生年金保険料率が固定される前は、どうなっていたのですか。
A. 平成29年9月より前は、段階的に保険料率が引き上げられていく仕組みが続いていました。平成29年9月の引き上げを最後に、以降は18.3%のまま固定されています。
10.8 Q. 国民年金保険料が払えない場合、どうすればよいですか。
A. 所得が少ない場合などに利用できる免除・猶予制度があります。未納のまま放置せず、まずは日本年金機構や市区町村の窓口に相談することをおすすめします。
10.9 Q. 国民年金保険料の改定率は、毎年必ず発表されますか。
A. はい。新しい年度が始まる前に、日本年金機構から当該年度の保険料額として公表されます。前年度との比較も含めて、公式ページで確認できます。
10.10 Q. 厚生年金保険料率が今後また引き上げられる可能性はありますか。
A. 現時点では平成29年9月以降18.3%で固定されていますが、制度の見直しは将来的にあり得ます。最新の情報は日本年金機構の公表資料で随時確認することをおすすめします。固定されているからと安心しきらず、制度改正のニュースにも目を配っておくとよいでしょう。長期間変わっていない数字ほど、変わったときの家計への影響が大きくなりがちです。
関連して老後資金の正しい「内訳」と不足額のあぶり出しもあわせてご覧ください。
参考資料
齊藤 慧
