2. 「終活は必要」と思っていても約3人に1人が準備なし?高齢者の老後準備の実態

親の老後について考えるとき、健康や生活費だけでなく、将来に向けたさまざまな準備についても考えておきたいところです。ところが、必要性を感じていても、実際には準備まで進んでいない人も少なくありません。

2.1 「健康」や「終活」は意識しても「財産管理」は1割未満

内閣府「令和7年版高齢社会白書」では、60歳以上の人に「老後のために、どのような備えが必要だと思うか」を尋ねています。

必要な備えは?2/3

老後に必要な備え(内閣府調査)

出所:内閣府「令和7年版 高齢社会白書」をもとにLIMO編集部作成

最も多かったのは「健康に関する備え」で約8割。続いて「終活関係の準備」が約4割となっています。一方、「財産管理に関する備え」は1割未満にとどまりました。

ここでいう財産管理に関する備えとは、認知機能の低下などに備えた財産管理の相談や、金銭管理サービスの利用などを指します。

健康維持や終活については意識していても、将来的に自分で財産を管理することが難しくなった場合への備えは、まだ十分に浸透していないことがうかがえます。

2.2 終活が必要だと思う人でも約3割が「何も準備していない」

さらに興味深いのが、「終活関係の準備が必要だ」と考えている人の実際の行動です。同調査では、終活関係の準備が必要だと思う人のうち、約3割が「準備しているものはない」と回答しています。

つまり、「準備したほうがよい」と考えていることと、「実際に準備を始めていること」は、必ずしも一致していません。

老後のことはまだ先の話だと思っているうちに、日々の生活に追われて後回しになってしまうケースもあるでしょう。

だからこそ、親が元気に暮らしている今の段階で、「何か準備している?」と確認してみることには意味があります。

3. 親の老後、備えておきたい3つのことと、放置しがちな実家の庭

老後の備えというと、まとまった貯蓄や年金額を思い浮かべがちですが、それだけではありません。これからの暮らしをどのようにしたいのかまで含めて考えておくことが大切です。

3.1 暮らしに必要なお金をどう確保するか

まず確認しておきたいのが、今後の生活に必要なお金です。現在の収入と支出だけでなく、住宅の修繕や車の買い替え、医療・介護など、今後まとまったお金が必要になる可能性もあります。

親自身が「これからのお金をどう使っていきたいのか」を把握しておけば、子ども側も必要になったときに相談しやすくなります。

3.2 介護が必要になったとき、どこで暮らすか

「できるだけ自宅で暮らしたい」「介護サービスを利用しながら今の家に住みたい」「必要になれば施設への入居も考える」など、希望は人によって異なります。実際にその状況になってから家族が決めるのではなく、元気なうちに本人の希望を聞いておけば、いざというときの判断材料になります。

3.3 自分で判断できなくなったとき、誰に頼るか

お金の管理や各種契約などについて、「誰に相談したいのか」「どこまで手伝ってほしいのか」をあらかじめ考えておくことも、老後の備えの一つです。必要に応じて、任意後見制度などの公的な仕組みを検討する方法もあります。

3.4 実家の庭も、早めに方針を決めておく

実家が空き家になったとき、意外と見落とされがちなのが庭の管理です。2023年12月施行の改正空家法では、管理が行き届かず周囲に悪影響を及ぼすおそれのある空き家を「管理不全空家等」として新設しました。特に隣家や道路への庭木の越境は要注意で、自治体から勧告を受けると、住宅用地の固定資産税を6分の1に軽減する特例が解除される可能性があります。

たとえば、固定資産税評価額600万円・面積200平方メートル以下の宅地であれば、特例適用時の課税標準は100万円ですが、特例が外れると600万円に戻り、税額は大きく増えることになります。

庭の手入れを業者に依頼する場合も、一度きりではなく毎年発生する固定費になる点に注意が必要です。シルバー人材センターは依頼できる作業の範囲が限られ、危険を伴う高木の剪定などは民間の造園業者への依頼が必要になることもあります。

庭木を減らす、剪定しやすい高さに整える、防草シートを活用するなど、負担を抑える方法は複数あります。実家が空き家になる前に、庭をどうするか家族で話し合っておきましょう。

4. まとめにかえて

年金受給者に届く「公金受取口座登録の意向確認書」をきっかけに、親の老後について考えるとき、口座登録の手続きだけでなく、「これからどう暮らしたいのか」まで確認しておくことが大切です。

内閣府の調査では、「終活関係の準備が必要」と考えている人でも約3割が実際には何も準備しておらず、「財産管理に関する備え」を必要と考える人は1割未満でした。必要性を感じていても、具体的な準備にはなかなか踏み出せない。これは、親世代だけでなく、子世代にとっても無関係な話ではありません。

「財産はいくらあるの?」と切り出せば、親も身構えてしまいます。お彼岸の帰省など、届いた郵便物を確認したことをきっかけに、まずは「これからもこの家に住みたい?」「介護が必要になったらどうしたい?」といった暮らしの話から聞いてみましょう。希望が見えてきたら、任意後見制度など必要な制度を調べるのは、そのあとで十分です。

そんな小さな会話の積み重ねが、親の希望を知り、これからの老後を家族で考えるきっかけになるかもしれません。

監修者:熊谷 良子

「まだ元気だから」と先延ばしにしがちですが、老後の希望を聞くタイミングは、思っている以上に限られています。かしこまった相続の話でなくてもかまいません。「これからどう暮らしたい?」という何気ないひと言から、少しずつ聞いておく。

そうした小さな積み重ねが、いざというときに家族みんなが納得できる選択につながっていきます。今回の意向確認書のような身近な話題も、親子で話すきっかけの一つにしてみてください。

参考資料

池上 翠