4. 「厚生年金が月20万円以上の男性」は約294万人、「厚生年金が月20万円以上の女性」は約9万人。約30倍の開き

20万円以上の302万7673人を男女に分けます。

男性が293万6780人、女性が9万893人でした。きりのいい数字にすると、男性が約294万人、女性が約9万人です。割合では男性27.5%、女性1.7%になります。

人数で見るとおよそ30倍の開きです。女性は10万人を切っていました。女性の受給権者は540万5752人いますから、そのうち9万人ほどということになります。

18.8%という全体の数字だけを見ていると、5人に1人弱の話に見えます。ところが中身は、男性のおよそ3.6人に1人と、女性のおよそ59.5人に1人を足して平均した数字でした。同じ「20万円以上」という言葉が、男女でまったく異なります。

もう少し細かく見ておきます。女性の場合、10万円以上だと61.8%、12万円以上が33.9%、15万円以上が12.3%、20万円以上が1.7%です。男性は10万円以上が90.7%、12万円以上が84.4%、15万円以上が68.8%、20万円以上が27.5%でした。どの境界線でも差はありますが、上に行くほど開きが大きくなります。

ここまでの差は、1階部分では生まれていませんでした。前の章で見たとおり、国民年金の男女差は4013円です。差は2階部分、つまり厚生年金に加入していた期間と、その間の納めた保険料からきています。ここには個人の選択だけでなく、その時々の雇用のあり方や、育児や介護を担ってきた事情も重なっています。数字の高い低いが、そのまま歩んできた道の評価になるわけではありません。

ここで、集団の取り方をもう一度確かめておきます。いま見ている1608万5696人は「厚生年金」の集計で、男性1067万9944人・女性540万5752人と男性が多い集団です。国民年金のみの人をふくめるとまた数字は変わるでしょう。

5. 順位でそろえると「男性の20万円は、女性の13万円」

もう一つ、別の見方をしてみます。

金額でそろえるのではなく、順位でそろえたらどうなるか、という見方です。男性の「20万円以上」は男性の中で上位27.5%にあたります。では、女性の中で上位27.5%あたりに立つのは、いくらの人でしょうか。

表をたどると、女性は13万円以上が24.2%、12万円以上が33.9%でした。上位27.5%はこのあいだに入るので、13万円のあたりということになります。男性の20万円と、女性の13万円が、それぞれの中でおおむね同じ位置になる計算です。

ほかのしきい値でも同じことをしてみます。男性の22万円以上は上位13.4%で、女性で近いのは15万円以上の12.3%です。男性の25万円以上は上位3.4%で、女性で近いのは19万円以上の2.6%でした。金額にすると6万円から7万円ほどずれた位置に、同じ順位が並んでいます。

この見方をすると、「20万円は高望みか」という問いの答えが人によって変わることが分かります。男性にとっては3.6人に1人が超えている線ですが、女性にとっては59.5人に1人の線です。同じ数字でも、置かれた条件によって意味が変わるということです。

自分がどのあたりにいるかを知りたいときは、平均と比べるより、この階級表で自分の額の行を探すほうが早いかもしれません。

同じ順位に立つ額は、男女でいくら違うか2/2

同じ順位に立つ額は、男女でいくら違うか

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

図のとおり、同じ順位に立つ額は男女で6万円から7万円ずれています。金額を並べるだけでは見えない差です。

6. 自分の年金額がどのあたりにいるかを確かめる手順

最後に、この記事の表を自分に当てはめる順番を置いておきます。

まず自分の年金額を確かめます。ねんきんネットにマイナポータル経由でログインすると、これまでの加入記録をもとに見込額が出ます。50歳以上の方なら、毎年の誕生月に届くねんきん定期便にも見込額が載っています。すでに受け取っている方は、年金振込通知書か年金額改定通知書に額が書かれています。

次に、その額が1階だけなのか、1階と2階の合計なのかを見ます。この記事の表は厚生年金(国民年金を含む)の金額です。

そのうえで、男女別の表で自分の行を探します。全体の18.8%ではなく、男性なら27.5%、女性なら1.7%のほうが自分に近い数字です。平均と比べるより、階級表のどこに入るかを見るほうが、実感に合うことが多いと思います。

読むときの注意点も3つ挙げておきます。1つめは、この数字が受給権者を数えたものだということ。2つめは、共済期間がある方の年金月額に共済組合等から支給される分が入っていないこと。3つめは、これがいま受け取っている方の集計であることです。これから受け取る世代の姿は、加入期間や報酬の変化に応じて変わっていきます。

これから働き方を選ぶ場面がある方は、厚生年金に加入する期間が将来のこの表の位置につながる、ということも材料の一つになります。どちらが正しいという話ではありません。個別の見込額はねんきんネットなどで確認しましょう。

7. 元証券会社社員の執筆者コメント

宮野 茉莉子
平均は真ん中とはかぎりませんし、まして男女を混ぜた平均は、どちらの実感からも離れるケースがあります。今回の18.8%がまさにそれで、中身は男性27.5%と女性1.7%でした。ひとつの数字だけを見て「こういうものだ」と決めてしまうことは危ういもの。数字はさまざまな角度で分解して本当の数字を見分けることが大切です。また、厚生年金の個人差は、ライフイベントや家族、自身の状況などによるもの。育児や介護を担ってきた時間、その時々に選べた働き口、制度の設計ーいくつもの事情が重なった結果として、いまこの数字になっています。数字を読むというのは、その後ろにある事情まで含めて考えるといいでしょう。大切なのは数字を把握した上で、「自分はいくらか」をたしかめること。そして老後の生活費と比較していくら不足するかを計算し、老後資金のためにいくら貯めればいいのか、具体的な金額を出してみましょう。

参考資料

宮野 茉莉子