1. 1カ月で大きく振れた株価と、PBR6.1倍台という値段

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近1カ月、8月6日から9月4日までの21営業日の値動きは荒い。

起点の8月6日は3,909円。そこから8月18日に4,368円まで水準を上げ、9月3日には3,613円まで下げた。8月18日から9月3日までの下げは17%を超える。

そして9月4日の終値は3,844円。前日から231円、6.4%の上昇である。この日に個別の開示があったわけではない。相場全体の動きが影響した可能性が高い。

1カ月の起点と終点だけを並べれば小幅安にとどまるが、その内側で1割を超える上下があった。ボラティリティ(株価の日々の値動きの激しさ)の高い銘柄になっている。

直近時点のバリュエーションは、PBR(株価純資産倍率)6.19倍、PER(株価収益率)25.76倍。前日はPBR5.82倍、PER24.21倍だった。なお同社は2026年7月1日を効力発生日として1株を10株にする株式分割を実施しており、ここで見ている株価はその後の水準である。

PBR6倍台は、非鉄金属という業種で見ればかなり高い。ここで一つ、素直な理由を挙げておきたい。分母である純資産が薄いのだ。

2026年3月期末の自己資本比率は39.1%で、非鉄金属の業種中央値53.3%を下回る。第1四分位の41.2%にも届かない。同じ利益を出す会社でも、自己資本が薄いほうがPBRは高く出る。指標の水準そのものより、その分母がどう作られているかを見たいところだ。

2. 利益を伸ばしたのはインフラ、売上を支えるのは電装エレクトロニクス

ここから事業ごとに割っていく。2026年3月期のセグメント別の姿は、連結の数字だけを見ていたときの印象とかなり違う。

最も大きいのは電装エレクトロニクスで、売上7,561億円、構成比57.8%。営業利益は338億円、利益率は4.48%だ。前期比では売上が+3.9%、営業利益が+3.9%と、伸びは緩やかである。

次がインフラで、売上3,639億円、構成比27.8%。営業利益214億円で利益率5.89%。前期比は売上+20.0%、営業利益+276.1%と桁が違う。

機能製品は売上1,508億円、構成比11.5%。営業利益153億円で、利益率10.20%は4事業で最も高い。前期比は売上+7.0%、営業利益+8.9%だった。

残るサービス・開発等は売上366億円、構成比2.8%で、67億円の営業損失を計上している。

増収の理由は会社が説明している。光ファイバケーブル等のデータセンタ関連製品の増収、ワイヤハーネス等の自動車部品での増収、そして銅地金価格の高騰の影響により、グループ全体の売上が増加したという。損益面では、売上増による押し上げに加えて生産性改善や販売価格の適正化に取り組んだことで増益になったとしている。

増益の主役がどこにあったかは、この並びで足りる。連結営業利益は前期の470億円から638億円へ168億円増えた。そのなかで前期比+276.1%という伸びを見せたのはインフラだけで、電装エレクトロニクスは+3.9%、機能製品は+8.9%、サービス・開発等は減益だった。

つまりこの会社では、伸びている事業、稼いでいる事業、支えている事業が別々にある。伸びているのはインフラ、利益率で稼いでいるのは機能製品、売上の土台を支えているのは電装エレクトロニクスだ。

光ファイバとデータセンタで語られる会社という見方は、間違いではない。ただしそれは売上の3割弱を占める部分の話であり、残りの7割はワイヤハーネスや機能材料の世界にある。この二つは同じ決算のなかで同時に成り立っている。

会社の重心が動いていることは、投資の配分にも出ている。セグメント別の設備投資はインフラが254億円で最も多く、電装エレクトロニクスの143億円、機能製品の97億円を上回る。構成比3割弱の事業に、いちばん厚い投資が向いているということだ。

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出所:古河電気工業株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:古河電気工業株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

3. 2027年3月期1Qと、引き上げられた通期計画

直近決算を押さえておく。2027年3月期1Qは売上高3,652億円、営業利益254億円、経常利益309億円、親会社株主に帰属する四半期純利益222億円。1株当たり四半期純利益は31円60銭となった。

あわせて通期計画が動いている。2026年5月の通期決算の時点では、2027年3月期の営業利益を950億円と見込んでいた。それが1,230億円へ引き上げられた。売上高も1兆4,600億円から1兆5,300億円へ上がっている。

前期比で見れば、売上高+17.0%、営業利益+92.6%、経常利益+88.5%、当期純利益+44.8%という計画だ。

ただし1Qの営業利益254億円は、通期1,230億円に対して2割程度の進捗にとどまる。単純な4分の1のペースをやや下回る位置であり、下期に比重を置いた計画になっている。

株価が8月半ばに水準を上げたあと切り下がったのは、この引き上げをいったん織り込んだうえで、実現の確度を測り直す動きだった可能性がある。株価が動く理由は相場全体の地合いや需給も絡むため、単一の材料に還元して考えるのは避けたい。

4. 筆者コメント

見逃せないのは、増収の説明のなかに銅地金価格の高騰が並んでいる点だ。

原料価格が上がれば、電線という製品の売価も上がる。売上高は素直に膨らむ。だがそれは、この会社が新しく何かを売れるようになったという話とは違う。

売上の伸びと稼ぐ力の伸びが同じ向きを向かない事業は、決算の読み方に注意が要る。増収率だけを追うと、外から来た値上がり分を自社の実力と取り違えることになる。

逆に言えば、原料が下がる局面では売上が縮む。そのときに利益率がどう振る舞うかで、価格の適正化がどこまで身についたのかが分かる。

決算を見るときは、増収率と利益率を必ずセットで並べることをおすすめしたい。この会社の場合、その並べ方でしか見えない部分がかなりある。