10. 40歳代に多い「転職して勤め先の制度に入ることになったが、これまで積み立ててきたものをどうすればよいのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・長井 祐人が伝えたいこと
転職を機に、勤め先が用意している企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入することになった。一方で、これまでは自分でiDeCo(個人型確定拠出年金)を続けてきた。この二つが同時に起きたときに、これまで積み立ててきたものをどう扱えばよいのか分からなくなる。そうしたご相談は、40歳代の方から少なくありません。転職そのものの準備で手一杯になりやすい時期でもあり、お金の手続きは後回しになりがちです。
10.1 40歳代に多いお悩み相談は「転職して勤め先の制度に入ることになったが、これまで積み立ててきたものをどうすればよいのか分からない」

同じように、書類を出したところで止まってしまい、その先が進まないというお話は、相談の場でもよくうかがいます。ご本人の準備が足りなかったというより、勤め先の制度と自分で続けてきた制度で、届け出る相手が別になっていることが分かりにくい、という事情が大きいところです。
10.2 【ファイナンシャルアドバイザー・長井 祐人が回答】自分で解こうとするより、聞く相手を先に分ける
企業型DC・財形貯蓄といった勤務先の制度は、転職した際に手続きが必要となる場合があります。また、制度ごとに問い合わせ先や手続き方法が異なるため、「手続きが複雑で分かりにくい」と感じる方も少なくありません。
近年ではAIやインターネットで手続き方法を調べる方も増えています。
しかし、勤務先によって制度やルールが異なるため、インターネットで調べた情報が必ずしも自分のケースに当てはまるとは限りません。
手続きをスムーズに進めるためには、制度ごとに適切な問い合わせ先へ相談することが一番の近道です。そもそも「どこに聞けばいいのか分からない」という場合には、まず勤務先の担当者に確認をしてみましょう。
10.3 ポイント1:勤め先が変わると、これまでの分を移す手続きが必要になる場合がある
確定拠出年金は、加入している立場によって、掛金を出す先も記録を管理する先も変わる仕組みになっています。そのため、転職して新しい勤め先の企業型DCに加入することになると、これまで自分でiDeCoとして積み立ててきた分について、そのまま続けるのか、勤め先の制度のほうへ移すのか、といった取り扱いを届け出る必要が出てくる場合があります。どの取り扱いになるかは、転職先が導入している制度の内容によって異なります。相談の場では「転職の手続き書類に紛れていて、これがお金の話だと思っていなかった」というお声をよくうかがいます。気づきにくくて当然の分野なので、いま知ったところから進めていただければ十分です。
10.4 ポイント2:手続きが途中で止まっていると、意図していない扱いになることがある
移す手続きの書類は、記入する欄が多く、勤め先に記入してもらう部分と自分で記入する部分が混ざっていることがあります。そのため、提出したつもりでも、どこかが埋まっていなかったり、添付するものがそろっていなかったりして、処理が進まないまま時間が過ぎることがあります。この状態が続くと、これまで積み立てた分が、自分では選んでいない扱いに移されることもあります。そうなると、その間は自分で運用の内容を選べない形になったり、受け取りに関する取り扱いが変わったりすることも考えられます。ご本人に落ち度があって起きることではなく、書類の性質上どうしても起きやすいものなので、まずは「いまどこで止まっているのか」を確かめるところから始めれば大丈夫です。
10.5 ポイント3:iDeCoのことは国民年金基金連合会、勤め先の制度のことは担当窓口と、聞く相手を分ける
この手の不備は、書類を眺めていても自力では解きにくいものです。実際、相談の場でも「どこに聞けばよいか分かっただけで前に進んだ」という整理に行き着くことが少なくありません。iDeCoの加入や移す手続きに関することは、制度を実施している国民年金基金連合会に直接たずねてみるのが、いちばん近い入り口になります。一方、転職先の企業型DCに関することや、勤め先が記入する欄については、勤め先の担当窓口が答えられる範囲です。この二つを分けて考えるだけで、たらい回しになる場面が減ります。あわせて、確定拠出年金は自分で運用の内容を選ぶ仕組みなので、価格が変動するものを選んだ場合には、受け取るまでの間に増えることもあれば、積み立てた金額を下回る可能性もある点は知っておきたいところです。なお、制度の内容は改正されることがあり、勤め先や加入している制度によって取り扱いが異なるため、最新の内容は勤め先の担当窓口や公的機関の情報でご確認ください。
分からないまま止まっていること自体は、めずらしいことではありません。答えを自分で出そうとせず、聞く相手を分けて当たってみるだけで、次に何をすればよいのかは見えてきます。
11. まとめにかえて
転職は、勤め先や働き方だけでなく、加入している制度の立場も変わる場面です。これまで積み立ててきたものは、転職したからといって消えるものではありませんが、そのまま自動的に引き継がれるとも限らず、届け出が求められる場合があります。書類が途中で止まっているときは、ご自身で正解を探すよりも、iDeCoに関することは国民年金基金連合会に、勤め先の制度に関することは担当窓口にと、聞く相手を分けて確かめてみてください。それだけで、次の一手がはっきりすることが多いものです。確定拠出年金やiDeCoの手続きの流れ、必要となる書類、加入できる条件などは、法令の改正や勤め先の制度設計によって変わることがあります。ご自身の状況に沿った判断が必要な場面では、勤め先の担当窓口や公的機関の情報を確認したうえで、必要に応じて専門家にご相談ください。この記事でお伝えした内容は一般的な考え方であり、適した進め方は一人ひとり異なります。
参考資料
- LIMO「【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説」
- 日本年金機構「初めて老齢年金を請求するとき」年金請求書(国民年金・厚生年金保険 老齢給付)様式第101号
- 日本年金機構「か行 加給年金額」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 厚生労働省「再就職手当のご案内」
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額をお知らせする『年金額改定通知書』、『年金振込通知書』の発送を行います」
長井 祐人
