2. 月々の積立額はどうやって決める?「NISA貧乏」にならないために
試算結果を見ると積立額を増やしたくなりますが、決め方を誤ると生活そのものを圧迫しかねません。
2.1 上限まで使うことが目的化しないよう注意
生活費や自己投資に回すお金まで削って、つみたて投資枠を埋めることを優先してしまう状態は、SNSなどで「NISA貧乏」と呼ばれることがあります。制度の上限額はあくまで「積み立てられる上限」であって、「積み立てるべき目標額」ではありません。上限に近づけることを目的化してしまうと、家計の管理そのものが不安定になるおそれがあります。
2.2 家計の余裕資金から無理のない金額を逆算する
一般的には、まず生活費数カ月分程度の予備資金を確保したうえで、日々の生活に支障が出ない「余裕資金」の範囲内で積立額を検討する考え方があります。ボーナスや昇給のタイミングで見直しをおこない、無理のない範囲で段階的に増額していく方法も選択肢の一つです。積立額は一度決めたら固定するものではなく、収入や支出の変化に応じて調整できるものだと捉えておくとよいでしょう。
3. まとまった資金があるなら、一括投資でもいいのでは?
退職金や相続などでまとまった資金を得た場合、「積み立てるより一括で投資したほうが早いのでは」と考える方もいるでしょう。
3.1 一括投資は「時間を味方につける」度合いが大きい
一括投資は、手元の資金を早い段階からすべて市場に投じる方法です。相場が右肩上がりで推移した場合、資金が市場にさらされている期間が長くなる分、複利効果を活かせる期間も長くなります。一方で、投資した直後に大きく値下がりした場合は、資金全体がその影響を受けることになり、購入したタイミングによって結果が大きく左右される点には注意が必要です。
3.2 積立投資は「時間分散」で購入価格をならす仕組み
これに対して積立投資は、毎月一定額を継続的に購入する「時間分散」の考え方に基づく方法です。価格が高いときは購入できる口数が少なくなり、価格が安いときは購入できる口数が多くなるため、結果として平均の購入単価がならされます。これは「ドルコスト平均法」と呼ばれる仕組みです。
価格が変動する場合の、購入タイミングのイメージ(架空の例)2/2
※説明用に作成した架空の価格例(手数料・税等は考慮せず)
たとえば、基準価額が10,000円→8,000円→12,000円→9,000円→11,000円と変動する架空の例で考えてみます。
1カ月目に50万円を一括投資すると、購入単価は10,000円で50口を購入したことになります。一方、毎月10万円ずつ5回に分けて積み立てると、価格が安い月に多くの口数を購入できるため、平均購入単価は約9,797円まで下がり、合計の購入口数はおよそ51口とやや多くなります。ただし、これは価格が上下に変動した場合の一例であり、価格が一貫して上昇し続けた場合は、早い段階で多くの口数を購入できる一括投資のほうが平均購入単価は低くなります。
「一括投資と積立投資、どちらが得か」という質問をよく受けますが、将来の値動きは誰にも分からないため、どちらが正解ということはありません。短期的な値上がり益を狙うのか、長期的に安定した運用を目指すのかという、目的の違いで考えるとよいと思います。
4. 長期の資産形成なら、積立投資が選ばれやすい理由
老後資金のように、使う時期がずっと先で、かつ確保しておきたい金額がある程度決まっている資金については、一時点の市場環境に運用成果が大きく左右されにくい積立投資が選ばれやすい傾向があります。購入のタイミングを分散させることで、相場が大きく下落した直後に全資金を投じてしまうリスクを避けやすくなるためです。もちろん、一括投資が優れている局面もあり、資金の性格や使う時期によって、一括投資と積立投資を組み合わせるという考え方もあります。ご自身の資金の性格や目的に合わせて、無理のない方法を選ぶことが大切です。
5. まとめ
金融庁「つみたてシミュレーター」の計算方法をもとに試算すると、想定利回り年5%・20年間で、月10万円の積立は約4058万円、月3万円の積立は約1217万円となり、その差はおよそ2841万円に達します。ただし、積立額はつみたて投資枠の上限に近づけることを目的化するのではなく、家計の余裕資金の範囲内で、無理なく続けられる金額から決めることが大切です。
また、まとまった資金がある場合の一括投資と、毎月一定額を積み立てる時間分散(ドルコスト平均法)には、それぞれ異なる特徴があり、どちらが正解ということはありません。
老後資金など長期的な運用を目指す場合は、購入タイミングを分散できる積立投資が選ばれやすい傾向がありますが、ご自身の資金の性格や目的に合わせて、無理のない方法を検討することをおすすめします。
参考資料
和田 直子
