3. 都心を離れるのは「妥協」ではない? 変わる購入者の選択

価格高騰によって変化しているのは、購入者が見るエリアです。

磐前氏は「実需層では『自分たちに無理のないエリアはどこか』という視点で、都心周辺へ検討範囲を広げる動きがみられる」と話します。

ここで興味深いのは、周辺エリアが単なる「都心を買えない人の受け皿」になっているわけではないことです。

都心から少し離れることで、同じ予算でも、

  • より広い物件
  • 設備やグレードの高い物件
  • 子育て・教育環境を重視した住まい

などを選べる可能性があります。

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出所:アットホーム株式会社

出所:アットホーム株式会社

つまり、「価格が安いから郊外」ではなく、価格と利便性、広さ、住環境などを組み合わせた結果、周辺エリアを積極的に選ぶという動きが広がっているのです。

選択肢はエリアだけではありません。新築戸建てや築古マンションを購入してリノベーションするなど、「築浅の中古マンションを買う」という前提そのものを外して考える人も増えているといいます。

4. 売り手にも変化。「高くても売れる」市場から調整へ

市場の変化は、買い手だけに表れているわけではありません。

不動産会社へのヒアリングでは、売り手側で売却までの期間が長期化している、希望価格では売れず段階的に値下げするケースが増えている、在庫が積み上がり始めているといった声が出ているそうです。

相続した物件や長期間保有してきた物件を「高いうちに売りたい」と考える所有者も少なくないため、売り物件が増えて在庫が積み上がれば、早期に売却するための値下げにつながる可能性もあります。

こうした状況を踏まえ、磐前氏は今後について、都心部を中心に横ばい、あるいは緩やかな調整が続く可能性を指摘しています。ただし、現時点で東京23区全体が本格的な下落局面に入ったと判断するのは早いとの見方です。

5. 住宅購入は「相場の底」より家族のライフプランを重視

では、これから住宅を購入する人は、価格が下がるまで待ったほうがよいのでしょうか。

磐前氏の答えは、必ずしもそうではありません。

価格が下がるのを待っている間に住宅ローン金利が上昇すれば、物件価格の下落以上に金利負担が増える可能性もあるためです。

重要なのは「いつが一番安いか」を当てにいくことではなく、自分たちにとって無理のない選択をすることです。

買うのか借りるのか。マンションか戸建てか。23区に住むのか、周辺エリアまで広げるのか。さらに、現在の予算だけでなく、子どもの成長や将来の家族構成、通勤・通学、住宅ローンの返済まで含めて支払い可能なのか、なども考える必要があります。

磐前氏も、こうした高値の局面だからこそ「マンションを買う」ことを最初から前提にしすぎず、家族それぞれの価値観を整理して、全員が納得できる住まいを選ぶことが重要だと話します。

価格の先行きが見通しにくい不動産市場では、「価格が下がるか、上がるか」だけで見るのは、十分ではありません。価格高騰を背景に、どこに住むか、何を買うかという住宅選びそのものが変化していることこそ、今回のデータから読み取れる大きなポイントといえそうです。

※本記事中の「価格」は成約価格ではなく、アットホームに登録・公開された中古マンションの「1戸あたり平均登録価格(売り希望価格)」です

参考資料

大蔵 大輔