3. 【試算】子どものいない夫は改正後いくら遺族厚生年金を受け取れる?

遺族厚生年金は、亡くなった人が65歳から受け取れるはずだった老齢厚生年金の「報酬比例部分×3/4」を受け取れます。妻を亡くした45歳の夫を例に、現行制度と改正後の受給額を比べてみましょう。

試算条件は以下のとおりです。

  • 18歳年度末までの子どもはいない
  • 亡くなった妻の老齢厚生年金の報酬比例部分:年80万円

現行制度では、妻の死亡時に夫が55歳未満であるため、遺族厚生年金の受給額は0円です。

しかし、改正後は妻の報酬比例部分の4分の3にあたる年60万円を遺族厚生年金として受給できます。

加えて、実際には現行の約1.3倍の金額が支給されるため、支給額は年約78万円です。これが5年間続くと、合計で約390万円を受給できます。

現行制度では、男性の遺族厚生年金は受給開始までに時間がかかりましたが、改正後は妻を亡くした直後でも5年間の有期給付を受けられる可能性があります。

次章では、遺族厚生年金のポイントをあらためて整理し、これからの考え方について解説します。

4. 【元公務員・FPの見解】ポイント整理と遺族厚生年金への考え方

2028年4月の遺族厚生年金の改正まで残り2年を切りました。この制度改正について見る際は「遺族厚生年金が5年で終わる」という部分だけを見て判断・行動しないことが重要です。

女性については、2028年度末時点で40歳未満の人から5年間の有期給付が始まり、その後20年かけて対象年齢が段階的に引き上げられます。そのため、生涯の遺族厚生年金の受給額にも差が出る可能性があります。

しかし、給付額自体は増加が見込まれており、低所得・障がい状態にある人へは5年目以降も継続して年金が給付されます。

加えて、すでに遺族厚生年金や中高齢寡婦加算を受け取っている人の金額は、今回の見直しの対象外です。そのため、人によっては「実は見直しの対象外だった」という場合もあるでしょう。

夫婦のどちらが亡くなった場合でも、大事なのは「その後5年間の生活を立て直せるか」を確認することです。まずは夫婦それぞれの「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で厚生年金の加入記録を確かめましょう。

そのうえで、毎月の生活費から遺族年金や給与収入を差し引き、不足額を預貯金や生命保険でどの程度補う必要があるか、試算しておくと安心です。

現在の年齢や家族構成で遺族年金を受け取れるかどうか、いくら受け取れるか本格的にしたい際は、年金事務所などに問い合わせてみましょう。

5. まとめ

遺族厚生年金の中高齢寡婦加算は、2028年4月から新たに支給される分を対象に、25年かけて段階的に縮小されます。

しかし、施行日前から受け取っている妻の加算は維持され、改正後に受給が始まった場合も金額が毎年下がるわけではありません。

そして、男性は55歳未満でも原則5年間の遺族厚生年金を受け取れるようになり、年間約1万6000人が新たに対象となる見込みです。

改正の影響は、配偶者が亡くなった時点の年齢、子どもの有無、受給権の発生時期などによって異なります。まずは自分の年齢や家族構成が遺族厚生年金の要件に合致するか確かめ、家計収支や資産額などもチェックしておきましょう。

参考資料

石上 ユウキ