株式会社野村総合研究所は2025年2月、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円になるという推計を公表しました。9月は上半期の区切りにあたる月で、取引のある金融機関から届く通知に目を通す機会が増えるころでもあります。

複数の会社に口座を持っていると、通知も別々に届きます。1枚ずつ見ているうちに、結局のところ自分は全体でどれだけ持っているのかが分からなくなった、という声を伺うことは少なくありません。この記事では、野村総合研究所の推計をもとに、純金融資産の保有額で分けた5つの区分と世帯数、2005年から2023年までの資産総額の並び、調査が名づけた新しい2つのタイプを整理します。さらに、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の調査から、世帯年収別に見た金融商品の保有額と、全体に占める割合を確かめます。そのうえで、口座が分かれていると全体の割合がどれくらい見えにくくなるのかを、金額ではなく割合の足し算で独自に試算します。

徳田 椋
口座の数についてのご相談では、「分かれているのが良くないのでしょうか」という形でご質問をいただくことがよくあります。数の多い少ないを先に決めるのではなく、世の中のデータがどういう区切りで作られているかを確かめたうえで、手元の見え方の話に戻っていく順序で整理していきます。

なお、資産1億円以上の世帯に共通する特徴に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】
資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】

1. 口座が複数に分かれていく経緯|数を減らす前に確かめておきたいこと

資産1億円以上の世帯に共通する特徴については、「資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】」でも整理されています。ここではその手前にある、口座がいくつかに分かれている状態をどう受け止めるか、というところから確かめていきます。

口座が複数あるという状態は、意図してそうしたというより、時間の積み重ねの結果であることがほとんどです。給与の受け取りに使ってきた口座、住まいの手続きに合わせて開いた口座、制度を使うために新しく開いた口座、勤め先の制度に紐づいた口座。きっかけが違えば、開く先も違ってきます。

1.1 数が増えること自体は、失敗の証ではない

相談の場では、口座が分かれていることを「整理できていない状態」として持ち込まれることがあります。ただ、そのときどきの必要に応じて開いてきた結果として分かれているのであれば、何かを取り違えたわけではありません。

むしろ、分かれていることで保てているものもあります。ひとつの会社のシステムに不具合が起きたときや、手続きが立て込んで時間がかかったときに、別の口座が使えるという状態は、いざというときの選択肢になります。目的ごとに置き場所を分けておけば、当面使わない資金と生活に使う資金が混ざらずに済むという面もあります。

1.2 困りごとの正体は「数」ではなく「全体が見えないこと」

とはいえ、分かれていることで不便が生じるのも事実です。ただ、その不便の中身をよく聞いていくと、口座の数そのものではなく、全体でどうなっているのかが把握しづらいという点に集まっていきます。

それぞれの画面に出てくるのは、その口座の中の内訳です。全体に占める割合ではありません。この違いが、思っていたより偏っていた、あるいは思っていたより偏っていなかった、というずれを生みます。この記事の後半では、そのずれがどのくらいの大きさになりうるのかを、割合の足し算で確かめます。

1.3 その前に、世の中の区切り方を確かめておく

手元の見え方を考える前に、資産の規模がどのような基準で語られているのかを押さえておくと、数字を受け取るときの目盛りが定まります。ここからは、野村総合研究所の推計をもとに、区分の切り方と世帯数を確かめていきます。

徳田 椋
口座の数を先に減らそうとされる方は多いのですが、数を減らしても全体の見え方が整うとは限りません。逆に、分かれたままでも全体が見えている方もいらっしゃいます。数と見え方は別の話だというところから、順番に確かめていく形にしています。

2. 【富裕層】純金融資産保有額でみる「ピラミッド」アッパーマス層はどんな人?

「富裕層」という言葉は、感覚で使われることもありますが、統計の世界では金額の区切りとして定義されています。

野村総合研究所が2025年2月13日に公表したニュースリリースでは、純金融資産保有額に応じて、日本の世帯を5つの層に切り分けています。純金融資産保有額として集計されているのは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの金融資産を世帯単位で足し上げ、不動産購入に伴う借入などの負債を引いた後の金額です。

2.1 金額で切り分けた5つの層|1億円以上を富裕層、5億円以上を超富裕層とする区切り

切り分けは、次の5つです。

  • マス層(3000万円未満)
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満)
  • 富裕層(1億円以上5億円未満)
  • 超富裕層(5億円以上)

純金融資産1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義したうえで、世帯数や保有資産の規模についての推計データが公表されています。

区分の物差しになっているのは資産の額で、収入の水準や働き方は基準に含まれていません。また、住まいなどの不動産は含まれていないため、この区分が世帯の暮らしぶりそのものを表しているわけでもありません。

2.2 1億円以上の世帯は165万3000世帯|推計が始まった2005年以降で最多

この2つを足し合わせた世帯数は165万3000世帯で、全世帯に占める割合は約3%にあたります。

合計としては、推計が始まった2005年以降でもっとも多い水準です。富裕層・超富裕層のそれぞれについても、2013年以降は世帯数が増える傾向が続いています。

この区分は、読み手をどちらかに振り分けるためのものではありません。日本全体でお金がどう分かれているかを眺めるための目盛りとして受け取っておくと、次の数字も落ち着いて読めます。

徳田 椋
階層の表をご覧になると、自分がどこに入るのかを先に探される方が多いところです。ただ、この区分は世帯ごとの合計額で切ったもので、その合計をどこに預けているかまでは分けていません。口座の話を考えるうえでは、どの層かよりも、その合計をご自身が言えるかどうかのほうが手がかりになりやすいかと思います。

3. 【富裕層】純金融資産5億円以上「ピラミッドの頂点」にいる世帯割合は?

純金融資産1億円以上を持つ世帯について、世帯数と資産総額が年を追ってどう動いてきたのかを並べていきます。

3.1 2005年から2023年までの世帯数と資産総額

富裕層と超富裕層を合わせた世帯数と純金融資産の総額は、親記事から次のとおり引用します。

  • 2005年:86万5000世帯・213兆円
  • 2007年:90万3000世帯・254兆円
  • 2009年:84万5000世帯・195兆円
  • 2011年:81万世帯・188兆円
  • 2013年:100万7000世帯・241兆円
  • 2015年:121万7000世帯・272兆円
  • 2017年:126万7000世帯・299兆円
  • 2019年:132万7000世帯・333兆円
  • 2021年:148万5000世帯・364兆円
  • 2023年:165万3000世帯・469兆円

世帯数と資産総額は、世界金融危機や東日本大震災などの影響を受けて一時的に落ち込んだものの、長期的に見ると増加傾向にあります。

なかでも2021年から2023年にかけての動きは大きく、同調査レポートでは、その背景として株価上昇や円安による資産価値の増大などが挙げられています。

3.2 2023年の内訳|全世帯の保有資産額の26.1%が上位2つの層に

2023年時点の層ごとの世帯数と純金融資産の保有規模も、親記事から次のとおり引用します。

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯・135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯・334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯・333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯・282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯・711兆円

富裕層と超富裕層が保有する資産の合計は、前回調査より約3割ほど増加し469兆円になりました。全世帯の保有資産額の26.1%が、この2つの層に集中していることが分かります。

ここで押さえておきたいのは、この数字が世帯の集計であって、ある一人の資産がこう動いたという記録ではないという点です。また、過去にこう動いたという並びであり、これからの動きを示すものでもありません。値動きのある資産には価格変動リスクがあり、局面が変われば元本割れとなる可能性もあります。

徳田 椋
右肩上がりの線をご覧になると、置いていかれているのではないかという受け止めになりやすいところです。ただ、この線は世帯を数えた集計で、ご自身の資産の軌跡ではありません。ご自身の資産をどう扱うかは、線の向きではなく、いまどこに何がどれだけあるかを言える状態かどうかから考えていく形になります。

4. 【富裕層】都市部に住む「年収3000万円」超の共働き世帯=スーパーパワーファミリー

同じ調査では、「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」と名づけられた新しいタイプの層が現れていることも取り上げられています。いずれも、口座がいくつかに分かれやすい事情を抱えた層です。

4.1 「いつの間にか富裕層」|株式投資などを通じて到達した会社員が中心

「いつの間にか富裕層」は、株式投資などを通じて富裕層の仲間入りをした、40歳代後半から50歳代の一般の会社員を中心とする層です。

金融に関する知識は高い一方で、富裕層向けの専門的な金融商品や高度な資産管理には不慣れな面もあるとされています。

投資を続けてきた期間が長いほど、そのときどきの必要に応じて口座を開いてきた回数も増えます。制度が新しくなった時期に開いた口座、勤め先の制度に紐づいた口座、そのあとで自分の判断で開いた口座が並存している、という状態は珍しくありません。

4.2 「スーパーパワーファミリー」|都市部の共働き世帯に代表される層

「スーパーパワーファミリー」は、都市部に住む年収3000万円を超える共働き世帯に代表される層です。

20歳~30歳代のうちは教育費や住宅ローンなどの支払いに追われるものの、昇格・昇給を経て40歳前後から資産が急速に増えていく傾向があり、高い収入を背景に50歳前後で富裕層へ到達する可能性が高いとされています。

二人がそれぞれの名義で口座を持っている場合、世帯としての全体像は、二人分を足さなければ見えてきません。片方の画面だけを見ていると、世帯の偏りが分からないという事情が生じます。

4.3 共通するのは、自分で築いてきたという点

これら「新しい富裕層」に共通しているのは、相続や親の資産に頼らずとも、自分自身のキャリア形成や金融知識によって資産を築いてきた点だといえます。

自分で築いてきたということは、そのときどきの判断の積み重ねがそのまま口座の並びに残っているということでもあります。並びを整えるかどうかを考える前に、まず並びを書き出してみるところから始めると、話が進めやすくなります。

徳田 椋
ご夫婦でお越しになったときに、お互いの口座の中身を初めて並べたというお話を伺うことがあります。どちらかが把握していないというより、世帯として足し合わせる機会がなかっただけ、ということが多いものです。足し合わせてみたら思っていた形と違った、という感想はよく出てきます。

5. 世帯年収別に見た金融商品の保有額|種類ごとの金額と全体に占める割合

J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2025年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」から、世帯年収ごとに金融資産の内訳がどうなっているかを確かめていきます。ここで並ぶのは種類別の金額で、それがどの口座に置かれているかは分けられていません。手元で全体像を作るときも、まずは種類ごとに足していく形になります。

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額3/3

世帯年収別にみる種類別の金融商品保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

5.1 金融資産保有額の合計

全国: 1940万円

  • 収入はない: 634万円
  • 300万円未満: 858万円
  • 300~500万円未満: 1431万円
  • 500~750万円未満: 1755万円
  • 750~1000万円未満: 2222万円
  • 1000~1200万円未満: 2725万円
  • 1200万円以上: 5635万円
  • 無回答: -

5.2 種類ごとの保有額|預貯金・債券・株式・投資信託

金額が動きにくい「預貯金」の保有額

全国: 745万円

  • 収入はない: 385万円
  • 300万円未満: 368万円
  • 300~500万円未満: 631万円
  • 500~750万円未満: 693万円
  • 750~1000万円未満: 908万円
  • 1000~1200万円未満: 1028万円
  • 1200万円以上: 1649万円
  • 無回答: -

値動きの幅が比較的小さいとされる「債券」の保有額

全国: 78万円

  • 収入はない: 7万円
  • 300万円未満: 36万円
  • 300~500万円未満: 54万円
  • 500~750万円未満: 58万円
  • 750~1000万円未満: 67万円
  • 1000~1200万円未満: 91万円
  • 1200万円以上: 343万円
  • 無回答: -

値動きを受け入れて収益を狙う「株式」の保有額

全国: 433万円

  • 収入はない: 33万円
  • 300万円未満: 191万円
  • 300~500万円未満: 235万円
  • 500~750万円未満: 365万円
  • 750~1000万円未満: 434万円
  • 1000~1200万円未満: 572万円
  • 1200万円以上: 1792万円
  • 無回答: -

複数の対象に分けて持つ「投資信託」の保有額

全国: 216万円

  • 収入はない: 153万円
  • 300万円未満: 79万円
  • 300~500万円未満: 167万円
  • 500~750万円未満: 189万円
  • 750~1000万円未満: 238万円
  • 1000~1200万円未満: 292万円
  • 1200万円以上: 682万円
  • 無回答: -

「債券・株式・投資信託の合計額」と全体に占める割合

全国: 37.5%

  • 収入はない: 193万円(30.4%)
  • 300万円未満:306万円(35.7%)
  • 300~500万円未満:456万円(31.9%)
  • 500~750万円未満: 612万円(34.9%)
  • 750~1000万円未満:739万円(33.3%)
  • 1000~1200万円未満: 955万円(35.0%)
  • 1200万円以上: 2817万円(50.0%)
  • 無回答: -

5.3 数字の読み方|投資額そのものと、全体に占める割合は別の数字

数字を並べてみると、「債券・株式・投資信託」に投じられている金額そのものは、年収とある程度連動しています。

一方、金融資産保有額の全体に対する割合で見ると、年収1200万円未満の層はおおむね30%台に収まっています。

ここからは、資産運用が一部の世帯だけのものではなく、標準的な年収の世帯にも広がっている様子がうかがえます。

これに対して年収1200万円以上の層では、「債券・株式・投資信託」が金融資産保有額全体の50.0%を占めており、資産運用を組み込んだ資産形成に積極的な様子が確認できます。

ここで注目したいのは、金額と割合が別の数字だという点です。金額が大きくても割合が小さいことはありますし、その逆もあります。そして、この割合は世帯全体を分母にして出したものです。口座がいくつかに分かれていると、この分母を手元で組み立てるところから始めることになります。

物価の動きが話題になる場面では、預貯金だけに置いておくと実質的な価値が目減りする可能性があることも取り上げられます。一方で、値動きのあるものに移せば元本を下回る可能性が生じます。どちらの面もあるため、割合の大小そのものを直すべき数字として受け取る必要はありません。まずは、いまの割合がいくつなのかを取り違えずに出せる状態かどうかから確かめていくのが現実的です。

世帯年収と資産形成の関わりについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
新NISA、実は「年収300万円未満」が4割?利用者のリアルな年収割合と人気の投資銘柄を解説【2026年最新】

6. 【独自試算】同じ「7割・4割・2割」でも、どの口座が大きいかで全体の割合は約34%にも約54%にもなる

口座が分かれていると、全体でどれだけ持っているかがどれくらい見えにくくなるのか。ここでは金額を使わず、割合の足し算だけで確かめてみます。誰かの実際の口座を想定したものではなく、数字の組み立て方そのものを確かめるための試算です。

前提は次のとおりです。いずれも計算のために仮に置いた数字であり、こうなると見込んでいるものでも、実在する口座を写したものでもありません。

  • 保有している資産の全体を100とし、これを3つの口座に分けて持っているものとする。それぞれを口座A・口座B・口座Cと呼ぶ
  • それぞれの口座の画面には、その口座の中での割合だけが表示されるものとする。全体に占める割合は表示されない
  • ここでは「値動きのある資産」がその口座の中で占める割合を見ていく。口座Aは7割、口座Bは4割、口座Cは2割とする
  • 3つの口座の大きさ(全体に占める比重)の置き方を、3つのケースで変える
  • 金額、手数料、税金は扱わない。あくまで割合だけの計算とする

まず、3つの画面に出てくる数字だけを見た場合の受け取り方を置いておきます。7割・4割・2割を単純に平均すると、(70+40+20)÷3で約43%です。全体でもそのくらいだろう、という受け取りになりやすいところです。

ケース1:3つの口座の大きさがそろっている場合(口座A・B・Cがそれぞれ全体の約33%)

  • 口座A……全体の約33%×7割=全体の約23%
  • 口座B……全体の約33%×4割=全体の約13%
  • 口座C……全体の約33%×2割=全体の約7%
  • 合計……全体の約43%

ケース2:割合の高い口座が大きい場合(口座A=全体の55%、口座B=30%、口座C=15%)

  • 口座A……全体の55%×7割=全体の38.5%
  • 口座B……全体の30%×4割=全体の12%
  • 口座C……全体の15%×2割=全体の3%
  • 合計……全体の約54%

ケース3:割合の低い口座が大きい場合(口座A=全体の15%、口座B=30%、口座C=55%)

  • 口座A……全体の15%×7割=全体の10.5%
  • 口座B……全体の30%×4割=全体の12%
  • 口座C……全体の55%×2割=全体の11%
  • 合計……全体の約34%

3つのケースで、それぞれの画面に出てくる数字は「7割・4割・2割」で同じです。開く順番を変えても、見えている数字は変わりません。それでも全体に占める割合は、約43%、約54%、約34%と分かれました。ケース2とケース3の差は20ポイントほどになります。

単純に平均した約43%と一致するのは、3つの口座の大きさがそろっているケース1だけです。大きさに偏りがあると、平均は実際の割合とずれます。しかも、そのずれは上向きにも下向きにも出ます。

なぜこうなるかというと、全体に占める割合は、口座ごとの割合をそのまま並べるのではなく、その口座が全体のどれだけを占めるかで重みをつけて足したものだからです。口座の画面に出てくるのは前者で、知りたいのは後者です。この2つが同じになるのは、口座の大きさがそろっているときだけです。

つまり、同じ性格のものを別々の口座で持っていると、どの画面を開いても偏りは見えません。一つひとつの口座では「半分以下」に見えていても、全体では過半になっていることがありますし、その逆もあります。見えにくさは、口座の数そのものではなく、割合の分母がそれぞれの口座になっていることから生まれています。

ここから言えるのは、口座をまとめたほうがよい、ということではありません。分けたままでも、それぞれの口座が全体のどれだけを占めるかをいったん書き出して足し合わせれば、全体の割合は出せます。逆に、まとめれば一つの画面で済むという楽さは得られますが、片方の会社で手続きが立て込んだときにもう一方が使えるという備えや、目的ごとに置き場所を分けておける自由度は手放すことになります。どちらを選んでも失われるものと得られるものがあるため、まとめる・分けたままにするのどちらかが正解と決まっているわけではありません。

なお、税制上の優遇がある制度を使って持っている口座を別の会社へ移す場合、所定の手続きが必要になったり、取り扱える時期や方法に制約がある場合があります。制度の取り扱いは改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報や口座を開いている窓口でご確認ください。売却をはさむ形になる場合は、そのときどきの価格の影響を受けるため、投じた金額を下回った状態で手続きすることもあり得ます。

この試算はあくまで一定の条件を置いた目安であり、実際の資産の内訳や割合は世帯ごとに異なります。ここで置いた比重や割合も、計算の構造を示すために仮に置いたものです。

村岸 理美
この試算で並べているのは、同じ「7割・4割・2割」という3つの数字から、全体としては約34%から約54%まで幅のある答えが出てくるという構造です。数字が間違っているわけでも、どこかを見落としているわけでもなく、それぞれの画面が別々の分母で割合を出しているために起きています。ここから取りうる形はいくつかあります。分けたまま、口座ごとの比重を書き出して一度足し合わせておく。役目が重なっている口座だけを寄せて、性格の違う口座は分けたままにしておく。あるいは、まとめて一つの画面で見られるようにする。どれを選んでも構いませんが、まとめる側にも分ける側にも手放すものがありますので、全体の割合を出せる状態になっているかどうかを先に確かめていただくと、判断の材料がそろいます。制度を使っている口座については、移し替えの手続きや時期の取り扱いが改正されることがありますので、最新の内容は公的機関の情報や口座を開いている窓口でご確認いただければと思います。