2026年度は国民年金・厚生年金ともに増額の改定となり、その金額は6月に振り込まれる分から反映されています。
年金の話題が身近になるこの時期は、現役世代のあいだでも「自分は毎月いくら積み立てておけばよいのか」という問いが浮かびやすいものです。とくに、収入が月ごと・年ごとに動く働き方をされている方からは、金額を決めたところで続けられるかどうかがわからない、という声が寄せられます。
この記事では、厚生年金と国民年金の平均年金月額、そして1万円刻みで見た厚生年金の受給額の分布を確認したうえで、収入が動く前提で毎月の積立額をどう考えるかを整理していきます。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額、受給額の分布に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 公的年金の2階建て|収入が変わっても動きにくい部分と、動く部分
毎月の積立額を考える前に、老後の収入の土台がどのくらいの高さになりそうかを確かめておくと、埋めたい差が見えやすくなります。その土台にあたるのが公的年金で、日本の制度は「2階建て」と呼ばれる形になっています。
制度の中身については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しておきましょう。
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。
1階部分の国民年金は、原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、保険料は所得にかかわらず一律(2026年度は月額1万7920円)。保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額(2026年度は月額7万608円)を受け取ることができます。
2階部分の厚生年金は、会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入します。保険料は収入に応じて変動し、受給額は加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます。
ここで押さえておきたいのは、1階と2階で金額の決まり方が違うという点です。1階の国民年金は保険料が所得にかかわらず一律で、納めた月数だけで受給額が決まります。収入が上下しても、この部分の金額はほとんど動きません。
一方、2階の厚生年金は収入に応じて保険料が変わり、その分だけ受け取る金額も変わります。収入に波のある働き方をしてきた方や、会社員として働いた期間が短い方ほど、2階部分の見込み額を早めに確かめておく意味があります。
2. 厚生年金・国民年金の平均年金月額|1つの数字には収まらない受け取り方の幅
土台の高さを具体的な数字で見ていきます。実際に受け取られている金額について、同じ記事から要点を引用します。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。
年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
厚生年金の平均には国民年金の分も含まれています。会社員や公務員として働いた期間が長い方ほど2階部分が積み上がるため、平均を上回りやすくなります。逆に、その期間が短い方は平均を下回りやすくなります。
国民年金は保険料が一律で、納めた月数だけで金額が決まる仕組みですので、男女の差は小さく、いずれも6万円前後に収まっています。いずれの金額も額面であり、ここから介護保険料や国民健康保険料、所得税・住民税などが差し引かれます。
ただし、平均という1つの数字は、その内側にどれだけの幅があるかまでは教えてくれません。積立額を考えるうえでは、平均よりも「自分がどのあたりに位置しそうか」のほうが手がかりになります。次の章で、金額帯ごとの人数を見ていきます。
3. 厚生年金の受給額分布|1万円刻みで人数がいちばん多いのは月10万円以上11万円未満
ここからは、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額が金額帯ごとにどう分かれているかを見ていきます。この分布は、LIMOの記事「【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント」でも整理されています。
3.1 年金月額の階級別に見た受給権者数
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
31の階級をすべて比べると、人数がいちばん多いのは「10万円以上~11万円未満」の111万2828人です。次いで「11万円以上~12万円未満」が107万1485人、「17万円以上~18万円未満」が103万1951人、「18万円以上~19万円未満」が102万6888人と続きます。1カ所に人が集まる形ではなく、月10万円台前半と、月17万円から19万円あたりの2カ所に厚みがあることがわかります。
ここに挙げた階級の人数を合計すると1608万5696人です。この合計に対して、月額10万円に届いていない方は約19%。月額10万円以上20万円未満の方が約62%を占め、月額20万円以上に達しているのは18.8%にとどまります。
つまり、厚生年金の受給権者のうち8割強はひと月20万円未満という水準です。年金収入は世帯単位で考える必要もありますが、公的年金だけで生活費をまかなう前提で組み立てると、ゆとりの部分は自分で用意することになります。
なお、この割合はあくまで厚生年金を受け取っている方のなかでの分布です。国民年金だけを受け取る方まで含めて全体を見渡すと、年金月額が20万円以上となる方の割合は、さらに低くなると考えられます。
年代ごとに貯蓄がどのくらい積み上がっているのかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」
4. 【試算】毎月一定額を積み立てた場合と、収入に応じて増減させた場合で20年後はどう変わるか
収入が動く前提のとき、金額を一定にするやり方と、収入に合わせて増減させるやり方では、20年後の到達額がどのくらい違いうるのか。前提を置いて試算してみます。
前提は次のとおりです。
- 積立期間:20年(240カ月)
- 想定利回り:年3%。月利は年利を12で割るのではなく、1.03の12分の1乗から1を引いた約0.2466%を使用
- 毎月末に積み立て、分配金などは再投資されるものとする
- 税金・手数料・物価の変動は考慮しない
- 3つのケースは、いずれも20年間に投じる元本の合計が720万円で同じ
この前提で、3つのケースを比べます。
- ケースA:収入の増減にかかわらず、毎月3万円を240カ月続ける → 約980万円
- ケースB:収入に応じて増減させる。収入が多い時期は月4万5000円、少ない時期は月1万5000円とし、多い時期が最初の10年に来る → 約1053万円
- ケースC:ケースBと同じ増減だが、少ない時期が最初の10年、多い時期が後半の10年に来る → 約909万円
投じた元本はいずれも720万円で同じですが、到達額はケースBとケースCで約144万円ひらきました。一定額を続けたケースAはその中間で、ケースBとの差もケースCとの差も約72万円ずつです。
この結果からわかるのは、収入に応じて金額を動かすやり方が、一定額を続けるやり方より有利とも不利とも決まらないということです。多く積み立てられる時期が早く来れば、その分だけ運用に回る期間が長くなり、到達額は伸びます。遅く来れば、その逆になります。そして、収入の波がどちらの順番で訪れるかは、前もって選べるものではありません。
一定額を続けるやり方には、毎回判断をしなくてよいという続けやすさがあります。収入に応じて増減させるやり方には、収入が少ない時期に無理をしなくて済むという続けやすさがあります。どちらを選ぶかよりも、20年という期間を通して積立そのものを止めずにいられるかどうかのほうが、結果に効いてくる場面が多いといえます。
なお、この試算では利回りが一定で続く前提を置いていますが、実際の運用ではそうはなりません。積立額を増やした時期の価格が高く、減らした時期の価格が安いということも起こりえます。増減の設計だけで結果が決まるわけではない、という点は押さえておきたいところです。
※上記は一定の利回りが続いたと仮定した場合の目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。実際の運用では価格が変動し、元本割れとなる可能性があります。税金・手数料は考慮していません。金額はいずれも概算です。



