3. 標準報酬月額が上がると、厚生年金の保険料はいくら増えるのか
では、金額をみていきます。日本年金機構によると、厚生年金保険料率は18.300%で固定されており、2017年(平成29年)9月を最後に引上げが終了しています。
そして、この保険料は事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。本人が負担するのは9.150%の部分です。
図は、保険料額表から標準報酬月額と本人負担額を抜き出したものです。標準報酬月額38万円なら月3万4770円、41万円なら月3万7515円、44万円なら月4万0260円となっています。
さらに上をみると、47万円で月4万3005円、50万円で月4万5750円、53万円で月4万8495円、56万円で月5万1240円です。
標準報酬月額が38万円から41万円へ、3万円上がった場合を考えてみます。本人負担は月2745円増える計算になります。3万円に9.150%を掛けた額です。
月2745円という数字は、単月でみれば大きくないと感じるかもしれません。ただ、この金額が9月から翌年8月までの各月に効いてくることになります。
なお、上に挙げた額は厚生年金保険料だけのものです。実際の給与明細からは、これに健康保険料や介護保険料なども加わって引かれます。手取りへの影響は、厚生年金保険料の分だけではないということです。
4. 天引きが動くのはいつの給与から。9月分の保険料は10月に納める
最後に、時期の話です。ここは「9月分から変わる」という言い方が誤解を生みやすいところでもあります。
厚生年金保険法第84条は、事業主は被保険者に対して報酬を支払う場合において、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる、と定めています。
前月分を当月の報酬から控除する、というのが法律上の原則です。この原則にしたがえば、9月分の保険料が引かれるのは10月に支払われる給与ということになります。
ただし、実務では当月分を当月の給与から控除している会社もあります。どちらの扱いかは勤務先の給与規程によって異なるため、一律に「10月から変わる」と決めつけることはできません。
ご自身の場合がどちらなのかは、給与明細の控除欄と、勤務先の人事労務部門への確認で分かります。9月と10月の明細を並べて、社会保険料の欄がどこで動いたかをみるのが早い方法です。
5. まとめにかえて
今回は、9月から適用される標準報酬月額の決まり方をみてきました。4月・5月・6月の3カ月の報酬をもとに毎年決め直され、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
そして天引きが動くのは、法律上の原則にしたがえば10月に支払われる給与からということになります。額面が動いた4月と、手取りが動く秋。この半年のずれが、昇進の実感をつかみにくくしている方もいる一因かもしれません。
裏を返せば、保険料が上がるということは、将来受け取る老齢厚生年金の計算の土台も上がるということでもあります。引かれる側面だけをみると損をした気持ちになりますが、そればかりでもありません。
秋は、家計の前提を組み直すのにちょうどよい時期です。9月と10月の給与明細を並べて、社会保険料の欄がいくら動いたかを確かめておくと、年末に向けた見通しが立てやすくなります。
ご自身の適用等級や控除の時期、随時改定に当たるかどうかの判断は、勤務先の人事労務部門またはお近くの年金事務所にご確認ください。制度の当てはめは個別の事情によって変わるため、この記事だけで確定できるものではありません。
6. 元証券会社社員の執筆者コメント
参考資料
- 日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分〜)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」
- e-Gov法令検索「厚生年金保険法」
宮野 茉莉子
