地方移住を考えるとき、最後まで残る不安はたいてい仕事です。

住まいは探せば見つかります。支援金の情報も調べられます。ただ「移った先で何をして食べていくのか」だけは、事前に見通しを立てにくい部分です。

この問いに対して、国が用意している仕組みのひとつが地域おこし協力隊です。移住と仕事を同時に手当てする制度で、総務省が毎年、隊員数と任期終了後の進路を公表しています。

2026年4月に公表された最新の結果から確認していきます。

この記事の3つのポイント
  • 令和7年度の地域おこし協力隊の隊員数は8196人で、前年度から286人増えて過去最多
  • 直近5年間に任期終了した8762人のうち、70.3%にあたる6163人が同じ地域に定住
  • 定住した人のなりわいは起業45.6%、就業34.8%、就農・就林11.6%

1. 隊員数は8196人で過去最多

まずは制度の規模から見ていきます。

総務省「令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等」によると、令和7年度の隊員数は8196人でした。前年度から286人の増加です。制度が始まった平成21年度は89人でしたから、およそ92倍の規模になっています。

受け入れ側も広がっています。取り組んでいる自治体は1187団体で、前年度から11団体の増加。受入可能な自治体1461団体の約81%にあたります。

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【図表1】地域おこし協力隊の隊員数と取組自治体数の推移

各種資料をもとにLIMO編集部作成

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域などの条件不利地域に住民票を移し、各自治体の委嘱を受けて地域協力活動に従事する制度です。総務省によると任期はおおむね1年から3年で、活動しながらその地域への定住・定着を図ることが目的とされています。

あわせて、より短い期間で地域を体験できる入り口も用意されています。「おためし地域おこし協力隊」は令和7年度に1450人、「地域おこし協力隊インターン」は1414人が参加しました。インターンは令和3年度の106人から4年で13倍以上に増えています。

いきなり住民票を移すのではなく、まず短期で試す。そういう使われ方が広がっているようです。

2. 隊員の6割超が20代・30代

どんな人が参加しているのかも見ておきます。

令和7年度の隊員の年齢構成は、20代が33.6%、30代が30.1%で、この2つを合わせると63.7%。40代が20.1%、50代が11.5%、60歳以上が4.4%と続きます。

男女比は男性59.7%、女性40.3%でした。

20代・30代が6割を超えるのは、任期がおおむね1年から3年という制度設計と無関係ではないでしょう。任期終了後の進路を組み立て直す余地が大きい年代が中心になっている、という見方ができます。

ここまでの数字で目を引いたのが、おためし地域おこし協力隊の1450人と、インターンの1414人でした。とくにインターンは令和3年度の106人から4年で13倍以上に増えています。

隊員数8196人と比べれば小さい数字ですが、増え方の勢いはこちらのほうが上です。住民票を移す前に、短い期間で地域を見てから決める。そういう入口が用意され、実際に使われているということなのだと思います。

年齢構成を見ると20代と30代で63.7%。任期がおおむね1年から3年という設計を考えると、終わったあとに進路を組み直せる年代が中心になるのは自然です。自分もこの層に入る年代ですが、3年後の身の振り方を先に決めておけと言われると、正直なところ簡単ではないなと思ってしまいます。

だからこそ、いきなり本番から入らずに済む選択肢があることの意味は、小さくないように思います。

中沢 新

3. 任期終了後、70.3%が同じ地域に定住

制度を評価するうえで重要なのは、任期が終わったあとに何が起きているかです。

総務省は、令和2年4月1日から令和7年3月31日までの直近5年間に任期終了した隊員について、その後の状況を調査しています(調査時点は令和7年5月1日)。

対象となった8762人のうち、同じ地域に定住したのは6163人で70.3%。内訳は、活動していた市町村内に定住した人が5038人(57.5%)、近隣の市町村に定住した人が1125人(12.8%)です。

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【図表2】任期終了後の動向と、定住した隊員のなりわい

各種資料をもとにLIMO編集部作成

一方、その地域外へ転出した人は2013人で23.0%。このうち228人は、活動地と関わりのある地域協力活動などに従事しているとされています。

なお、令和7年3月31日までに任期終了した隊員は累計で1万5045人。前回の調査から2363人増えています。

7割が定住しているという数字は、制度としては高い水準に見えます。ただし裏返せば、4人に1人近くはその地域を離れているということでもあります。この点は後述します。

4. 定住した人のなりわいは「起業」が45.6%

定住した人が何で生計を立てているのかも公表されています。

活動地と同じ市町村内に定住した5038人の内訳は次のとおりです。

起業が2296人で45.6%と最も多く、就業が1753人で34.8%、就農・就林が583人で11.6%。この3つで92.0%を占めます。ほかに事業承継が70人(1.4%)、その他が181人(3.6%)、不明が155人(3.1%)でした。

起業が半数近くを占めているのは、この制度の特徴です。任期中に地域とのつながりをつくり、そこで見つけた需要を事業にする、という流れが読み取れます。

就業した人の勤め先で最も多いのは行政関係(自治体職員、議員、集落支援員等)の480人。次いで観光業176人、農林漁業138人、地域づくり・まちづくり支援業99人、教育業78人、医療・福祉業72人と続きます。

就農・就林では農業が477人で圧倒的に多く、林業54人、畜産業20人、漁業・水産業12人となっています。

5. 協力隊は「移住×仕事」の一つの形にすぎない

ここで注意しておきたいことがあります。

地域おこし協力隊は、移住して仕事を得るルートのひとつでしかありません。年間8196人という規模は制度としては大きいものの、移住する人全体から見ればごく一部です。定住率70.3%という数字も、協力隊という枠組みを経た人の話であって、移住者一般に当てはめられるものではありません。人の流れ全体で見れば、2025年に転入超過となったのは47都道府県のうち7都府県だけで、東京一極集中は続いています。

仕事の当てをつくる方法は、ほかにもあります。

ひとつは、勤務先を変えずに移る方法です。テレワークを導入している企業は50.1%で、制度としては企業の半数に広がっています。収入水準を保ったまま生活コストだけを下げられる可能性がある一方、雇用型テレワーカーの割合は首都圏37.7%に対し地方都市圏17.2%と地域差が大きい点には注意が必要です。

もうひとつは、生活の拠点を完全には移さない方法です。主な拠点を残したまま別の地域にも拠点を持つ暮らし方は二地域居住と呼ばれ、2024年11月施行の改正法で国の政策としても位置づけられました。仕事を変えずに地域との関わりを増やせるぶん、判断を先送りできます。

協力隊に応募するにしても、任期はおおむね1年から3年です。任期が終わったあとにどうするかを入口の段階で考えておくことが、結果として定住につながっているのだと思われます。

テレワークを導入した企業は50.1%、3年連続の低下から反転。雇用型テレワーカーは25.2%で首都圏37.7%・地方都市圏17.2%
テレワークを導入した企業は50.1%、3年連続の低下から反転。雇用型テレワーカーは25.2%で首都圏37.7%・地方都市圏17.2%
「二拠点生活」を後押しする法律が2024年11月に施行。5年で計画600件・支援法人600法人が目標、国が使う正式名称は
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6. 応募を検討するときに確認したいこと

制度の詳細は自治体ごとに異なります。

募集内容、活動内容、報酬額、住居の手当、任期終了後の支援。これらはすべて受け入れ自治体が個別に定めており、条件は一様ではありません。同じ「地域おこし協力隊」という名称でも、実態はかなり幅があります。

総務省は、隊員は各自治体の委嘱を受けると説明しています。実際の任用の形態や社会保険の扱い、兼業の可否といった条件は自治体が定めるため、募集ごとの確認が必要です。

応募を検討する段階では、募集要項の記載だけで判断せず、受け入れ自治体の担当窓口に直接確認することをおすすめします。任期終了後の支援制度についても、事前に聞いておきたいところです。

7. まとめにかえて

今回は、総務省の資料から地域おこし協力隊の状況を確認しました。

  • 令和7年度の隊員数は8196人で過去最多、取組自治体は1187団体
  • 直近5年間に任期終了した8762人のうち70.3%(6163人)が同じ地域に定住
  • 定住した5038人のなりわいは起業45.6%、就業34.8%、就農・就林11.6%
  • 就業先で最も多いのは行政関係の480人、就農では農業が477人

移住先での仕事は、探すものであると同時に、つくるものでもある。起業が45.6%という数字は、そういう現実を示しているのかもしれません。

8. 【執筆者コメント】3年という区切りが効いているのかもしれない

数字を見ていて意外だったのが、起業45.6%という比率でした。

移住して仕事を探すというと、地元企業に就職する姿を想像していました。実際には就業34.8%より起業のほうが多い。地方は求人が少ないという話と、この数字は同じ方向を向いているのだと思います。就職先がないから自分でつくる、という側面は否定できません。

ただ、それだけでもなさそうです。任期がおおむね1年から3年と決まっているぶん、入った時点で「終わりの日」がおおよそ見えています。そのあいだに地域を知り、人とつながり、需要を見つける。制度としてはかなり合理的な設計に見えます。

私は群馬県の山間の地域に住んでいますが、住んでいる地域にも協力隊の募集はあります。眺めていると、活動内容が本当にさまざまで、同じ制度名でくくるのが難しいくらいです。報酬も住居の条件も自治体ごとに違うので、比較するにはそれなりの手間がかかりそうです。

もうひとつ引っかかったのが、地域外へ転出した23.0%のほうです。制度の評価としては定住率が語られがちですが、4人に1人近くが離れているという事実も同じ資料に載っています。次はこちらの側、つまりうまくいかなかったときに何が起きるのかを追ってみようと思います。

参考資料

中沢 新