衣替えの季節を迎え、初夏の爽やかな風が吹き抜ける時期となりました。近年、国内における精神障害者保健福祉手帳の所持者数は増加傾向にあり、社会的な関心や雇用の現場における重要性も日増しに高まっています。
今回は、厚生労働省の最新の調査結果をもとに、手帳の交付状況やハローワークにおける最新の就職状況について詳しく解説します。自分や大切な人の働き方、あるいは企業の障がい者雇用を考えるきっかけになれば幸いです。
1. 【精神障害者保健福祉手帳】所持者154万人超「1年で10万人以上の増加」2級が最多
精神障害者保健福祉手帳の交付状況は「交付台帳」によって管理されています。厚生労働省の「令和6(2024)年度衛生行政報告例」によると、手帳の所持者数は2020年度から2024年度まで5年連続で増加しました。
2024年度末時点では、前年より10万9340人増え、154万7433人に達しています。この数字は有効期限が切れていない有効な手帳の所持者を集計したものであり、手帳が2年ごとの更新制であることも踏まえた実数です。
1.1 等級別にみると「2級」が最多
手帳の等級は1級から3級までに分かれており、2024年度末時点で最も人数が多いのは2級で、89万7292人と全体の過半数を占めています。一方で、前年からの増加率が最も高かったのは3級で、10.0%増と大きな伸びを示しました。
1.2 3つの等級「判定基準」はどんなもの?
精神障害者保健福祉手帳の等級は、精神疾患の状態と日常生活・社会生活への影響を総合的に評価して決められます。
- 1級:日常生活のほとんどにおいて、自力で行うことが困難で、常時の介助や支援が必要な状態
- 2級:日常生活に著しい制限があり、日常の多くの場面で継続的な支援や配慮を必要とする状態
- 3級:日常生活や社会生活に一定の支障があり、状況に応じた支援や配慮が必要となる状態
この等級制度は、個々の状態に応じた支援を設計することに役立つ仕組みです。適切な支援につなげるためにも、制度を正しく理解しておくことが重要です。
2. 【障害者手帳】3種類《身体・精神・療育》それぞれの役割の違いとは?
障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼び方です。いずれも、障がいのある方が日常生活や社会活動をより安心して送れるように、必要な支援や配慮につなげるための制度として位置づけられています。手帳を取得することで、障がいの種類や程度に応じた福祉サービスや各種支援を受けられるようになります。
2.1 3種類の障害者手帳
①身体障害者手帳:所持者数467万4999人
身体の機能に一定以上の障がいがあると認められた方に交付されます。
②療育手帳:所持者数132万1350人
児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障がいがあると判定された方に交付されます。
③精神障害者保健福祉手帳:所持者数154万7433人
精神疾患があり、長期にわたり日常生活や社会生活に相当の制限を受けると認められた方に交付されます。
このように、3種類の手帳はそれぞれの障がい特性や日常生活への影響に基づいて区分されており、個々の状況に応じた適切な福祉サービスや就労面での配慮を受けるための重要な基盤となっています。
3. 【精神障がい者の就労状況】過去最高の16.5万件!どんな就労先が多い?
2026年6月19日に厚生労働省より「令和7年度(2025年度)ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」などが公表されました。
新規求職申込件数は約27.8万件(対前年度比3.7%増)、就職件数は約11.5万件(対前年度比0.4%減)となり、新規求職者申込件数は過去最高だった2024年度実績を上回りました。
3.1 精神障がい者のハローワークを通じた求職・就職状況
- 新規求職申込件数:16万5316件(対前年度比7.9%増)
- 就職件数:6万6580件(対前年度比1.6%増)
- 就職率:40.3%(対前年度差2.5ポイント減)
新規求職の申し込みが増加した一方で、就職率は前年度より低下する結果となりました。なお、就職件数は障がい者全体の57.8%を占めており、すべての障がい種別の中で最も多い区分となっています。主な就職先の産業と職業精神障害者の具体的な就職先における、上位の産業と職業の傾向は次の通りです。
- 主な産業:「医療、福祉」が2万7567件(41.4%)、次いで「製造業」が7156件(10.7%)
- 主な職業:「事務従事者」が1万9518件(29.3%)、次いで「運搬・清掃・包装等従事者」が1万8317件(27.5%)
産業別では「医療、福祉」への就職が4割を超えており、他の産業に比べて高い割合を占めていることが分かります。
また職業別で見ると、「事務従事者」と「運搬・清掃・包装等従事者」の2つの職種だけで全体の5割以上を占めています。解雇者数の推移ハローワークに届け出のあった精神障がい者の解雇者数は、今年度は1402人となりました。これは、解雇者数が大幅に増加していた前年度の4244人から大きく減少しています。
4. まとめにかえて
今回は、厚生労働省の最新の調査結果をもとに、精神障害者保健福祉手帳の交付状況やハローワークにおける職業紹介の現状について解説しました。
データが示す通り、手帳の所持者数は154万人を超えて5年連続で増加しており、ハローワークへの新規求職申込件数も高水準で推移しています。就職件数は障害者全体の57.8%を占めて最多となった一方、全体の就職率は低下しており、特定の産業や職種への偏りといった課題もみられます。
また、解雇者数は前年度から大幅に減少しているものの 、雇用環境の安定には個々の状態に応じた適切な配慮や定着支援が継続して求められます。働く障害者を取り巻く環境が変化する中、現状の課題を客観的に捉え、公的支援や制度を正しく活用していくことが重要です。
参考資料
村岸 理美