3. 差額が生まれる理由と「上限480ヶ月」のルール
なぜ差額が生まれるのかを、もう少し見ておきます。
3.1 老齢基礎年金は20歳から60歳まで
日本年金機構によると、老齢基礎年金は20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金や厚生年金の加入期間等に応じて年金額が計算されます。
一方で定額部分は、厚生年金の加入期間に応じて決まるもので、年齢による区切りは示されていません。上限として被保険者期間の月数が定められているだけです。
3.2 単価の違いも効いてくる
定額部分の単価は令和8年4月分から1766円です。これに生年月日に応じた率と被保険者期間の月数を掛けます。
老齢基礎年金とは計算式そのものが違いますので、同じ加入期間でも金額が一致しません。当分の間は定額部分のほうが多いという状態が続いている、という説明はこの構造から来ています。
4. 制度移行期の特別な調整
定額部分には、世代ごとの調整も入っています。
4.1 240月とみなす特例
生年月日が昭和26年4月1日以前の人は、40歳以降の厚生年金の被保険者期間が生年月日に応じて15年から19年あれば、240月未満であっても240月として計算します。女性と坑内員・船員については、35歳以降の期間で判定します。
なお、この期間には共済組合等の加入期間は含まれません。中高年になってから厚生年金に加入した人への配慮として設けられている仕組みです。
4.2 上限の月数も世代で分かれる
被保険者期間の上限が444月、456月、468月、480月と生年月日で分かれているのも、制度が段階的に整えられてきた名残です。
自分がどの区分に当てはまるかは生年月日で決まります。細かく分かれているため、通知書の金額を自分で検算するのは簡単ではありません。
5. 通知書のどこを見るか
実際に確認する方法です。
5.1 65歳を境に項目が増える
65歳になると、それまで1つだった老齢厚生年金が、老齢基礎年金と老齢厚生年金に分かれます。そこに経過的加算が加わる形です。
相談の場でも、項目が増えたことで金額が変わったと思われる方にお会いします。合計額を前年と比べるほうが、状況をつかみやすくなります。
5.2 金額の確認は年金事務所で
経過的加算の額は、定額部分と老齢基礎年金の差額として計算されます。生年月日、加入期間、単価、上限が絡むため、自分で正確に出すのは難しいところです。
見込額はねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。内訳や計算の根拠まで知りたい場合は、年金事務所で説明を求めてみてください。
6. まとめにかえて
65歳になると、特別支給の老齢厚生年金の定額部分が老齢基礎年金に、報酬比例部分が老齢厚生年金に切り替わります。ただし当分の間は老齢基礎年金より定額部分のほうが多いため、その差額が経過的加算として上乗せされます。
定額部分は令和8年4月分から、昭和31年4月2日以後生まれで1766円、それ以前の生まれで1761円に、生年月日に応じた率と被保険者期間の月数を掛けて計算します。被保険者期間には生年月日ごとの上限があります。
この仕組みにより、65歳以降も60歳からの年金額が保障されます。通知書の項目が増えて不安になったときは、合計額で比べたうえで、年金事務所に確認してみてください。
参考資料
村岸 理美