2. 老後に向けて考えておくべきこと

貯蓄額の目安に加えて、老後の資金計画では考慮しておきたい点がいくつかあります。ここでは3つ取り上げます。

老後に向けて考えておきたい3つのポイント3/3

老後に向けて考えておきたい3つのポイント

出所:国土交通省、厚生労働省、日本年金機構の公表情報をもとにLIMO編集部作成

2.1 ①住まい:賃貸か持ち家かで備え方が変わる

賃貸の場合、老後も家賃を払い続ける必要があります。現役時代と同程度の家賃を、年金収入だけで払い続けられるかどうかは事前に確認しておきたいポイントです。一方、持ち家でローンを完済していれば住居費の負担は下がりますが、その代わりに修繕費への備えが必要になります。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査によると、マンションの修繕積立金は1戸あたり月平均1万3054円です。戸建ての場合も、外壁や屋根、給湯器などは築年数に応じて定期的な補修が必要になるため、まとまった費用を計画的に準備しておくことが望まれます。

2.2 ②医療費:保険料は上昇傾向、制度も見直しが進む

後期高齢者医療制度の保険料は、令和8・9年度の全国平均で月7989円となる見込みで、令和6・7年度の7411円から578円、7.8%の増加です。あわせて、高額療養費制度についても、令和8年8月以降、所得に応じて自己負担限度額が段階的に引き上げられる見直しが行われる予定で、新たに患者負担の「年間上限」も設けられます。

医療費の自己負担そのものが増える可能性があるだけでなく、保険料の負担も重くなる傾向にあるため、老後資金の中に医療費分をあらかじめ組み込んでおくことが大切です。また、この機会に加入している民間の医療保険の保障内容(入院給付金や先進医療特約の有無など)を確認しておくのもよいでしょう。

2.3 ③年金の受け取り方:繰上げ・繰下げ、就労継続も選択肢に

年金は原則65歳から受け取りますが、66歳から75歳の間に受給を遅らせる「繰下げ受給」を選ぶと、1ヶ月あたり0.7%(最大84%)年金額が増えます。ただし、繰下げている間の生活費をどう確保するかが前提になるため、就労継続や私的年金の活用とあわせて検討する必要があります。

65歳以降も厚生年金に加入しながら働く場合は、賃金と年金の合計額が一定の基準額を超えると年金の一部または全部が支給停止される「在職老齢年金」のしくみにも留意が必要です。受け取り方によって税金や社会保険料の負担も変わってくるため、金額だけでなく、いつ・どのように受け取るかまで含めて考えることが老後資金の計画では重要になります。

和田 直子

住まい・医療費・年金の受け取り方は、いずれも「金額を確認すれば終わり」ではなく、ご自身の選択によって結果が変わる項目です。特に医療費や保険料は、今後も制度の見直しが続く分野なので、一度確認したら終わりにせず、数年に一度は最新の情報を確認する習慣を持つとよいでしょう。

ご夫婦で老後の生活をイメージする際は、金額の目安だけでなく、「どこに住み続けたいか」「どこまで働き続けたいか」といった希望もあわせて話し合っておくと、資金計画がより具体的になります。

3. まとめ

2025年の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は月4万2434円の赤字で、老後20〜35年と仮定すると、必要な貯蓄額は単純計算で1018万〜1782万円になります。2019年の「老後2000万円問題」の試算と大きくは変わらない規模感ですが、年齢が上がるほど不足額は縮小する傾向がある一方、医療費や住まいの維持費など今後増える可能性のある支出もあり、単純な数字だけで安心・不安を判断するのは禁物です。

住まいの維持費、医療費の上昇、年金の受け取り方といった要素を踏まえながら、ご自身の年金見込額や資産状況に応じた資金計画を立てることが大切です。具体的な数字については、日本年金機構の「ねんきんネット」で年金の見込額を確認したり、金融機関やファイナンシャルプランナーに相談したりしながら、早めに準備を進めることをおすすめします。

参考資料

和田 直子