公的年金の額は現役時代の収入を反映しますが、その反映のされ方は比例ではありません。平均収入の差が2倍でも、受け取る年金額の差は2.9倍近くまで広がります。
年金を主な収入とする単身世帯では、実収入の9割超を社会保障給付が占めます。収入源がほぼ年金に一本化されるため、この差はそのまま暮らしの差になります。
本記事では、65歳以上・単身無職世帯の収入構成と、平均収入別に示された2026年度の年金月額について解説します。
なお、65歳以上・単身無職世帯の家計収支と加入経歴別の年金額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
- 65歳以上・単身無職世帯は実収入13万1456円のうち12万212円が社会保障給付
- 平均収入の差2.03倍に対し、年金月額の差は2.86倍に広がる
- 平均収入がほぼ同じでも、加入期間の違いで年金月額は2.12倍違う
1. 年金を含む実収入の91.4%は社会保障給付が占める
年金を主な収入とする単身世帯の家計から確かめます。LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用します。
65歳以上の無職単身世帯では、実収入13万1456円(うち社会保障給付12万212円)に対し、支出は消費支出14万8445円と非消費支出1万2990円を合わせて16万1435円。毎月2万9980円が不足している計算になります。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
実収入13万1456円のうち社会保障給付は12万212円で、比率は91.4%です。収入のほぼ全部が年金で占められている状態だといえます。
だからこそ、いくら年金を受け取れるかが家計の水準をほぼ決めてしまいます。支出16万1435円との差2万9980円を貯蓄で埋めることになりますが、その負担の重さも年金額しだいです。
2. 年金は現役時代の収入差2倍が受給額2.9倍に広がる
その年金額は、現役時代の収入をどう反映しているのでしょうか。まず2026年度の水準を押さえたうえで、平均収入別のモデルを見ていきます。
2.1 2026年度の改定率は国民年金1.9%・厚生年金2.0%
年金額は物価や現役世代の賃金の動きを織り込んで、毎年度改定されます。2026年度の改定後の金額として、日本年金機構は次の水準を公表しました。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
厚生年金の23万7279円は、平均収入45万5000円で40年間働いた場合の夫婦2人分です。この前提から離れるほど、実際の受給額はこの水準から遠ざかっていきます。
2.2 厚生労働省の5つのモデルを平均収入とあわせて見る
厚生労働省は年金額の改定にあわせ、加入経歴を男性2通り・女性3通りに整理した年金額例を公表しました。以下は「2026年度に65歳になる人」を想定した概算で、LIMOの記事「【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説」から引用しています。

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
2.3 平均収入50万9000円の男性モデルは月17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
2.4 平均収入36万4000円の男性モデルでは月6万3513円まで下がる
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
2.5 平均収入35万6000円の女性モデルは月13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
2.6 平均収入25万1000円の女性モデルは月6万1771円にとどまる
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
2.7 平均収入26万3000円の第3号被保険者中心モデルは月7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
出所:【最新データ】老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額と年金月額は?老後夫婦のリアルな生活費と家計収支を解説
平均収入が最も高い50万9000円のモデルと最も低い25万1000円のモデルを比べると、収入の差は2.03倍です。ところが年金月額は17万6793円と6万1771円で、2.86倍まで広がります。
もっと分かりやすいのが、平均収入36万4000円の男性モデルと35万6000円の女性モデルの対比です。収入はほぼ同額なのに、年金月額は6万3513円と13万4640円で2.12倍の差が生じています。
違いは加入期間です。前者は7.6年、後者は33.4年で、この長さの差が金額を分けています。年金額は収入だけでなく、収入と加入期間の掛け算で決まるわけですね。


