2. 年代別にみる「貯蓄」と「負債」—50歳以上で貯蓄が負債を上回る
ここまでは金融資産(貯蓄)だけをみてきましたが、現役世代は住宅ローンなどの「負債」も抱えています。総務省統計局の家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果から、二人以上世帯の貯蓄と負債を年代別にみてみましょう。なお、これは先のJ-FLECとは別の調査で、対象や集計方法が異なります。
2.1 40歳未満・40代は「負債」が貯蓄を上回る
二人以上世帯の平均は、貯蓄現在高2059万円・負債現在高675万円。ここに世帯主の年齢を重ねると、姿が分かれます。貯蓄がもっとも少ないのは40歳未満の994万円で、反対に負債がもっとも多いのも40歳未満の1882万円。
40〜49歳は貯蓄1381万円・負債1483万円、50〜59歳は貯蓄1756万円・負債743万円、60〜69歳は貯蓄2843万円・負債234万円、70歳以上は貯蓄2471万円・負債81万円です。
2.2 「純貯蓄」でみる—50歳以上で貯蓄が上回る
裏を返せば、貯蓄が負債を上回るのは50歳以上です。貯蓄から負債を引いた「純貯蓄額」がもっとも多いのは60〜69歳の2609万円で、50歳未満の各年代は負債が貯蓄を上回る「負債超過」の状態にあります。負債を抱える世帯の割合は40〜49歳が67.0%ともっとも高く(平均37.5%)、40代は借入が最も多い年代でもあります。
いま負債超過であっても、年代が上がるにつれて解消していくのが、この統計の形です。焦って貯蓄を急ぐより、返済と積立の配分を見直すことが、現実的な一歩になります。
3. 編集部からのアドバイス
30〜60歳代二人以上世帯の貯蓄は、平均で30歳代1096万円・40歳代1486万円・50歳代1908万円・60歳代2683万円、中央値で311万〜1400万円でした。ただし現役世代は負債も抱えるため、貯蓄額だけでは家計の余力は測れません。
一つ目は、貯蓄と負債を並べて、差し引きの「純貯蓄」でみることです。貯蓄が増えていても、住宅ローンなどの負債が多ければ実質の余力は変わります。両方を一覧にすると、わが家の本当の現在地がつかめます。
二つ目は、「返済」と「積立」の配分を決めることです。低金利のローンなら手元資金を厚めに残す、金利が高めなら繰上返済を厚くする—金利と残高をみて、夫婦で方針を決めておきましょう。
三つ目は、負債超過でも焦らないことです。40歳未満や40代は負債が貯蓄を上回るのがふつうで、年代が上がるにつれて解消していきます。残高そのものより、毎年いくら減っているか(返済のペース)を把握することが、次の判断の材料になります。
証券会社でご相談を受けていたお客様は、その多くが60歳以上で、退職金の運用を控えた方々でした。長く働いて蓄えを築いてきた方でも、老後の入口で表情が分かれます。ゆとりをもって迎えられた方に共通していたのは、現役のうちに貯蓄と負債を整え、住宅ローンなどを計画的に返してきたこと。
反対に、貯蓄額は多くても負債が残り、思ったより使えるお金が少ないという方もいらっしゃいました。だからこそ、現役世代の今こそお伝えしたいのです。大切なのは、貯蓄そのものの額ではなく、負債を差し引いた「純貯蓄」でわが家をとらえること。
40歳未満や40代で負債が貯蓄を上回っていても、それは家や暮らしの基盤をつくる時期の自然な姿で、年代が上がるにつれて解消していきます。数字に一喜一憂せず、毎年いくら負債が減っているか、返済と積立の配分は今のままでよいか—年に一度でいいので、夫婦で確かめてみてください。その小さな習慣の積み重ねが、退職を迎えるころの余裕につながっていきます。
4. まとめにかえて
今回は、30〜60歳代二人以上世帯の平均貯蓄額と中央値(J-FLEC調査)と、年代別の貯蓄・負債(総務省の家計調査)をみてきました。平均で30歳代1096万円・40歳代1486万円・50歳代1908万円・60歳代2683万円、中央値で311万〜1400万円。ただし平均はまとまった資産を持つ世帯に引き上げられるため、実感に近いのは中央値のほうです。
そして現役世代は、貯蓄と同時に住宅ローンなどの負債も抱えています。家計調査でみたように、貯蓄が負債を上回るのは50歳以上で、40歳未満や40代はむしろ負債が貯蓄を上回るのがふつうでした。「負債超過」に不安になる必要はありません。
暮らしの基盤をつくる時期の自然な姿で、年代とともに解消していきます。
大切なのは、貯蓄額そのものより、負債を差し引いた「純貯蓄」でわが家をとらえること。今日からできることは3つです。まず、預貯金・投資などの貯蓄と、住宅ローンなどの負債を一枚の紙に書き出し、差し引きして現在地をつかむこと。
次に、返済と積立の配分を決めること—低金利のローンなら手元資金を厚めに、金利が高めなら繰上返済を厚めに、金利と残高をみて判断します。そして、毎年いくら負債が減っているか(返済のペース)を、年に一度、夫婦で確かめること。数字に振り回されず、わが家のペースで一歩ずつ整えていきましょう。
参考資料
LIMO編集部貯蓄解説班
