3. 手続きは2段階に分かれる
ここからは、実際の流れを追っていきます。
3.1 まず今の金融機関に届出書を出す
最初に、NISA口座を開設している金融機関に「金融商品取引業者等変更届出書」を提出します。すると、その金融機関から「勘定廃止通知書」が交付されます。
この通知書が、次の手続きに必要な書類になります。手元に届くまでの日数は金融機関によって違いますので、9月30日ぎりぎりに動くと間に合わないことがあります。
3.2 次に新しい金融機関に2枚を出す
新たにNISA口座を開設したい金融機関に、「非課税口座開設届出書」と、先ほどの「勘定廃止通知書」を提出します。これらの書類を提出した金融機関に、非課税口座を開設することができます。
なお、新しくNISA口座を開設する際には、本人確認書類(住民票の写し、マイナンバーカードなど)の提示等をして、氏名、生年月日、住所およびマイナンバーを告知する必要があります。すでにマイナンバーを告知している金融機関であれば、告知が不要になる場合があります。
4. 前の口座にある商品はそのまま残る
変更したあとの扱いも押さえておきましょう。
4.1 年ごとに口座が分かれていく
金融機関を変更すると、その年分から新しい金融機関で枠を使うことになります。国税庁は、令和6年分は金融機関A、令和7年分は金融機関B、令和8年分は金融機関Cというように、複数の金融機関でNISA口座を開設している状態を例として示しています。
変更を重ねるほど、口座が分散していくことになります。管理する先が増える点は、変更を考えるときに知っておきたいところです。
4.2 住所や氏名が変わったときは全部に届け出る
NISA口座を開設した後、氏名、住所またはマイナンバーの変更があった場合には、遅滞なく「非課税口座異動届出書」を提出する必要があります。複数の金融機関でNISA口座を開設している場合は、そのすべての金融機関に提出が必要です。
マイナンバーに変更があった場合に、すべての金融機関に提出していないときは、「特定累積投資勘定基準額」および「特定非課税管理勘定基準額」を正しく計算することができないと国税庁は説明しています。この基準額は、令和7年以後の各年12月31日において、つみたて投資枠や成長投資枠に受け入れている上場株式等の購入の代価の額に相当する金額の合計額を指します。
5. 亡くなったときの届出も忘れない
口座が分散していると、残された家族の手続きにも関わってきます。
5.1 相続人が死亡届出書を出す
NISA口座を開設している投資家が亡くなったときは、その相続人は、死亡したことを知った日以後、遅滞なく、そのNISA口座が開設されている金融機関に対して「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。
こちらも、複数の金融機関に口座がある場合は、そのすべてに提出が必要です。国税庁も、令和6年分は金融機関A、令和7年分は金融機関B、令和8年分は金融機関Cという例を挙げ、すべてに提出が必要だとしています。どこに口座があるのかが家族に分からなければ、探すところから始まることになります。
5.2 どこに何があるかを書き残す
金融機関を変更するかどうかにかかわらず、口座のある金融機関名を書き出しておくと、あとの手続きが進めやすくなります。変更を検討するときは、その機会に一覧にしておくのもひとつの方法です。
手数料や取扱商品は金融機関によって違いますので、移すこと自体が有利になるとは限りません。何を理由に移すのかを決めてから動くほうが、判断がぶれずに済みます。
6. 編集部の視点:移す前に確かめておきたいこと
金融機関を移す動機として多いのは、取扱商品の品ぞろえと、購入時手数料や信託報酬などのコストです。ただし、乗り換えれば必ず有利になるとは限りません。移した先で同じ商品を選ぶのであれば、手続きの手間だけが残ることもあります。「いま持っている商品が移せるわけではない」という点も、あわせて押さえておきたいところです。
前の金融機関に残っている商品は、そのまま非課税で保有し続けられます。売る必要はありません。ただし、その口座で新しく買い付けることはできなくなるため、資産が複数の金融機関に分かれていきます。長く続けるほど、この分散は増えていきます。
そもそもNISAで結果を左右するのは、どこで口座を持つかよりも、どれだけ長く続けられるかです。積立を止めずに置いておいた場合に資産がどう動くのかは、LIMOの記事「月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?」でも試算されています。移すかどうかを検討する前に、まずは続けられる設定になっているかを確かめてみてください。
7. まとめにかえて
NISA口座の金融機関の変更は年単位で行えます。「金融商品取引業者等変更届出書」を提出できるのは、枠を設けようとする年の前年10月1日から、その年の9月30日までの間です。
ただし、その年分の枠にすでに上場株式等の受入れをしているときは、その年分の変更はできません。積立の設定が動いていないかを先に確認しておきたいところです。
手続きは、勘定廃止通知書を受け取ってから新しい金融機関に提出するという2段階です。口座が分散すると管理も相続の手続きも増えますので、移す理由をはっきりさせたうえで、取引先の金融機関に相談してみてください。
参考資料
- 国税庁「NISA口座の新規開設又は変更に関する手続等について」
- 国税庁「NISAに関する情報」
- 金融庁「NISAを知る」
- LIMO「【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション 新NISAの基本を解説!おさえておきたい「非課税」のメリット」
- LIMO「【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開」
LIMO編集部NISA解説班
