3. 公的年金との関係で使い方が変わる
取り崩しの設計は、年金の受け取り方とセットで考えることになります。
3.1 受給開始までのつなぎとして使う場合
65歳より前に仕事を辞めた場合や、繰下げ受給を選んで受け取りを遅らせる場合、年金が入るまでの期間を埋める必要があります。この使い方なら、必要な期間と金額がはっきりしています。
たとえば60歳から65歳までの5年間を埋めるなら、期間は5年と決まります。定額で取り崩す考え方が合いやすい場面です。
3.2 年金に上乗せして使う場合
年金を受け取りながら、足りない分を補うという使い方もあります。この場合は期間の終わりが決まっていませんので、尽きにくさを重視するなら定率という選択肢が出てきます。
まずは自分の年金見込額を確認するところからです。ねんきん定期便やねんきんネットで確かめられます。年金でどこまで賄えるかが分からないと、取り崩す金額も決められません。
4. 売るときに気をつけたいこと
実際に売却する場面での注意点もあります。
4.1 損益通算はできない
NISA口座の利益が非課税になる一方で、損失が出た場合は課税口座の利益と相殺する損益通算ができません。翌年以降への繰越控除もできません。
課税口座とNISA口座の両方を持っている場合、どちらから売るかで手取りが変わることがあります。
4.2 まとめて売らない
必要な分だけを売る、という原則は取り崩しでも同じです。値下がりしている時期にまとめて売ると、その価格が確定してしまいます。
非課税保有期間が無期限である以上、急いで売り切る理由はありません。生活費として使う分と、置いておく分を分けて考えることになります。判断に迷うときは、取引のある金融機関やファイナンシャルプランナーに相談してみてください。
5. まとめにかえて
新しいNISAは非課税保有期間が無期限で、口座開設期間も恒久化されています。売る時期を急ぐ必要はありません。
取り崩し方には定額と定率があり、運用の成果を考えない前提では、1000万円から毎年60万円の定額なら17年目に尽き、毎年6%の定率なら10年目の受取額は約34万円まで下がります。
売却して空いた枠が戻るのは翌年以降で、戻るのは買ったときの金額の分だけです。まずは公的年金の見込額を確認してから、取り崩す金額を決めてみてください。
参考資料
LIMO編集部NISA解説班
著者
LIMO編集部NISA解説班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、大手証券会社やメガバンク等の金融機関にて勤務経験がある編集者が中心となり、金融庁や一般社団法人投資信託協会など官公庁等の公開情報等をもとにわかりやすい記事の情報発信を行っています。
LIMO編集部NISA解説班に所属する編集者は野村證券株式会社出身の宮野茉莉子、SMBC日興証券株式会社出身の安達さやか、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子、株式会社三菱UFJ銀行出身の中本智恵などの資産運用アドバイザー経験者等で構成されており、トップセールスで多数の表彰歴を持つ編集者など、表彰歴多数の編集者も複数在籍。株式や投資信託などを用いた豊富な資産運用、資産形成、老後資金のアドバイスなどの経験と知識を保有し、読者に正確な記事を届けています。
一種外務員資格(証券外務員一種)、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)などの資格保有者も多数在籍。(最新更新日:2026年6月17日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
元銀行員/一種外務員資格(証券外務員一種)/LIMOマネー編集部金融ライター
一種外務員資格(証券外務員一種)。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて後方事務や法人営業部門のアシスタント事務を経験。その後、三井住友信託銀行に転職し、資産運用アドバイザー業務に約10年間従事。
15年以上にわたり金融機関に在籍し、現役世代からシニア層、富裕層まで延べ1000名以上の個人顧客に対し、資産運用コンサルティングや承継対策を提案。表彰歴多数。現在は、株式会社モニクルリサーチが運営する、くらしとお金の経済メディア『LIMO(リーモ)』、専門家と実務家が発信する金融経済ニュースサイト『LIMO&ファイナンス』にて企画・執筆・編集・監修を幅広く担当。
15年以上の金融機関キャリアに加え、自身も20年以上の投資経験(投資信託・株式・FX・金など)を持つ。金融のプロ・現役投資家・生活者(出産・育児経験)の3つの視点から、年金制度の仕組み、社会保障、NISAや住宅ローン、相続まで分かりやすく解説。Yahoo!ニュース経済カテゴリでアクセスランキング1位を多数獲得。【2026年6月29日更新】