3. 現役世代の賃金は3.4%伸びている
年金の改定率を評価するには、比較する相手が必要です。いま働いている人の賃金がどうなっているかを見ます。
3.1 2026年6月の現金給与総額は53万4823円
厚生労働省が2026年8月24日に公表した毎月勤労統計調査の2026年6月分結果確報によると、事業所規模5人以上の就業形態計で、現金給与総額は53万4823円でした。
内訳は、きまって支給する給与が29万9671円、そのうち所定内給与が27万9511円、特別に支払われた給与が23万5152円です。6月は賞与の支給月にあたるため、特別に支払われた給与が大きく出ています。
3.2 名目3.4%、実質でも1.5%のプラス
賃金指数でみると、現金給与総額の前年同月比は名目で3.4%の増加、物価の影響を除いた実質でも1.5%の増加でした。
これを2026年度の年金改定率と並べると、基礎年金1.9%・報酬比例部分2.0%は、名目賃金の伸び3.4%を下回っています。
上の2本が現役世代の賃金、下の2本が年金の改定率です2/2
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年6月分結果確報」・厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成
4. なぜ年金は賃金ほど増えないのか
賃金が3.4%伸びているのに、年金の改定が2%に届かないのには理由があります。
4.1 改定に使うのは低いほうの指標
日本年金機構によると、2026年度の改定では物価変動率がプラス3.2%、名目手取り賃金変動率がプラス2.1%でした。物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るため、改定には低いほうの名目手取り賃金変動率が使われます。
4.2 さらにマクロ経済スライドで差し引かれる
そのうえで、2026年度はマクロ経済スライドによる調整として、基礎年金でマイナス0.2%、報酬比例部分でマイナス0.1%が差し引かれました。結果が1.9%と2.0%です。
つまり年金は、現役世代の賃金の伸びをそのまま反映する仕組みにはなっていません。金額は増えていても、物価の上昇率3.2%を下回るため、買えるものの量という意味では目減りしています。
5. まとめにかえて
公的年金は2階建てで、1階の国民年金は全員一律の保険料、2階の厚生年金は収入に応じた報酬比例制です。受給額の個人差は2階部分で生まれます。
2026年度は基礎年金1.9%・報酬比例部分2.0%の引き上げでしたが、2026年6月の名目賃金は前年同月比3.4%増、実質でも1.5%増でした。年金の改定は賃金の伸びにも物価の上昇にも届いていません。
現役のうちに厚生年金の加入期間をどれだけ積めるかが、この差を埋める材料になります。自分の見込額はねんきん定期便やねんきんネットで確認できるので、一度確かめてみてください。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年6月分結果確報」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
和田 直子