「毎月は赤字だけど、賞与でなんとか回っている」――そんな家計を続けていると、賞与が減った途端に立ち行かなくなってしまいます。この記事では、公的年金の「2階建て」のしくみと、厚生年金の受給額の実態を確認したうえで、賞与に頼らない家計への組み替え方を考えていきます。
なお、公的年金の2階建て構造・厚生年金の受給額分布のデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 公的年金は国民年金と厚生年金の「2階建て」。厚生年金の保険料は報酬比例制で、老後の年金額に個人差が生まれる
- 厚生年金月額15万円以上の人は全体で49.8%。男性68.8%に対し女性は12.3%にとどまる
- 賞与払いの支出を月割りにすると、月々の家計に隠れていた本当の負担額が見えてくる
1. 公的年金は「2階建て」構造
公的年金のしくみは、「国民年金」と「厚生年金」の2つの年金制度から成り立つため、しばしば「2階建て構造」と表現されます。
1.1 【国民年金】1階部分
- 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
- 保険料:全員一律、年度ごとに見直しあり(※1)
- 年金額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降に満額の基礎年金(※2)を受給できる(未納期間分に応じて減額調整)
1.2 【厚生年金】2階部分
- 加入対象:主に会社員、公務員など
- 保険料:収入に応じて(上限あり)決定する報酬比例制
- 年金額:加入期間や納付保険料により決定(国民年金に上乗せして支給)
※1 国民年金保険料:1万7920円(2026年度の月額)
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:7万608円(2026年度の月額)
国民年金の保険料は加入者全員が同じ額を支払います。一方で、厚生年金の保険料は報酬(給与・賞与)に応じて決められた額を支払う「報酬比例制」です。毎月の給与や賞与などの「報酬」に、所定の保険料率を乗じて保険料が決まるため、納付する保険料は人それぞれ異なります。
つまり、現役時代に「国民年金」または「厚生年金」のどちらに加入していたか、または、どちらの加入期間が長かったかにより、老後の年金額には大きな個人差が出るのです。
2. 厚生年金「月15万円以上」もらう人は何パーセント?
厚生年金の年金額は、現役時代の収入や加入期間によって個人差が出ますが、その実態が気になるところでしょう。厚生労働省の資料「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は男女全体で15万289円です。
公的年金は、原則として2か月に一度支給されるため、この平均額で考えると、一度の支給日に約30万円が振り込まれる計算になります。では、この平均である月額15万円をクリアしている人は、受給権者全体でどのくらいの割合を占めるのでしょうか。
※下記の厚生年金の年金月額には国民年金(老齢基礎年金)部分を含みます。
2.1 【男女全体】厚生年金「ひと月15万円」もらえる人は何パーセント?
【男女全体】厚生年金の平均年金月額:15万289円
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金を月額15万円以上受給している人は、男女全体の受給権者の半分に満たない49.8%です。厚生年金を受給していない人も含めて計算すると、この割合はさらに低くなります。
2.2 【男女別】厚生年金「ひと月15万円」もらえる人は何パーセント?
では、男女別に見るとどうでしょう。
【男性】厚生年金の平均年金月額:16万9967円
- 15万円以上~16万円未満:76万4713人
- 18万円以上~19万円未満:95万5327人
- 20万円以上~21万円未満:82万204人
- 30万円以上~:1万8801人
【女性】厚生年金の平均年金月額:11万1413円
- 9万円以上~10万円未満:75万1358人
- 10万円以上~11万円未満:81万3990人
- 15万円以上~16万円未満:20万322人
- 30万円以上~:482人
月額15万円以上の年金を受給している割合は、男性で68.8%に上るのに対し、女性ではわずか12.3%にとどまっています。
公的年金は老後の生活設計の基盤となりますが、それだけで十分かを把握することが大切となります。ぜひ「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を確認し、早めの資金計画を立てるようにしましょう。
2.3 賞与払いの支出、月割りにすると実は「毎月いくら」の負担?
ここまで公的年金の受給額を見てきましたが、老後だけでなく現役時代の家計にも目を向けてみましょう。「毎月は赤字でも賞与で埋め合わせている」という家計は、賞与払いの支出を月割りにすると、実際の負担額が見えてきます。ローンの賞与払い・年払いの保険料・固定資産税を合計し、年間30万円だった場合を試算してみます。
【賞与払い・年払いの支出、年間合計(例)】
ローンの賞与加算 12万円 + 年払い保険料 10万円 + 固定資産税 8万円 = 30万円【月割りにした場合】
30万円 ÷ 12カ月 = 毎月2万5000円
賞与でまとめて処理していた支出は、月換算すると毎月2万5000円の負担だったということです。この金額を毎月の生活費に組み込まずに賞与だけで対応し続けていると、賞与が減額・カットされた月に一気に家計が崩れます。
2.4 賞与が2割減ったら、年間の家計はどれだけ狂う?
では、賞与が想定より2割減った場合、年間の家計にどれだけの影響が出るのでしょうか。夏・冬の賞与合計を仮に120万円としたケースで試算してみます。
【賞与120万円が2割減った場合】
120万円 × 20% = 24万円の減少【月割りにした場合の不足額】
24万円 ÷ 12カ月 = 毎月2万円
賞与が2割減っただけで、月換算では2万円もの不足が生まれる計算です。先ほどの「賞与払い支出の月割り2万5000円」と合わせると、月々4万5000円分を、賞与に頼らない形であらかじめ確保しておく必要があるということになります。あくまで一定の前提を置いた試算であり、実際の負担額はご家庭の収支によって異なります。
監修者コメント
厚生年金は、現役時代の収入と加入期間がそのまま反映される「報酬比例制」の制度です。今回のデータでも、月額15万円以上を受給する人は男性68.8%に対し女性12.3%と、大きな差が出ています。この差は老後だけの問題ではなく、現役時代の働き方の積み重ねの結果だという点を押さえておく必要があります。
また、記事中で取り上げた「賞与払いの支出」の問題は、30代・40代の家計相談で非常によく見られるケースです。賞与を年間の変動費のように扱ってしまうと、賞与の減額がそのまま家計破綻につながりかねません。まずは賞与払いになっている支出をすべて洗い出し、月割りにしてみることをおすすめします。
ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、賞与に頼らない家計を作ることは、そのまま老後の資産形成にもつながるということです。月々に確実に残る金額を先に決め、その範囲で積立を設計する。この順序を守ることで、賞与の変動にも老後の年金額の個人差にも、落ち着いて備えられるようになります。


