年金は偶数月に支給されますが、「平均月額15万円」という数字を見て、自分もそのくらい受け取れると考えていませんか。実際の受給額の分布を見ると、平均という一つの数字では見えてこない実態が浮かび上がります。
この記事では、厚生年金の受給額分布を確認したうえで、長寿化と認知症のデータ、そして終活の実態まで、老後を見据えるうえで押さえておきたい数字を整理していきます。
なお、厚生年金の平均月額や受給額の分布データについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 厚生年金で月10万円未満の人は19.0%、月20万円以上は18.8%と、少額層のほうがわずかに多い
- 平均寿命は男性81.35年・女性87.33年。65歳以上の約4人に1人が認知機能へのサポートが必要な状況
- エンディングノートは70歳代以上の所有率が最も高い一方、実行率は約5割にとどまる
1. 厚生年金「10万円未満」vs「20万円以上」多いのはどっち?
厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布を詳しく見ると、意外な事実が浮かび上がります。生活費の目安となる「20万円以上」を受給する人よりも、実は「10万円未満」の人の方が多いのが実情です。
※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。
1.1 受給額分布の対比(厚生年金・男女全体)
- 月額10万円未満:19.0%(約5.3人に1人)
- 月額20万円以上:18.8%(約5.3人に1人)
わずかな差ではありますが、高額受給者の割合を「10万円に届かない層」が上回っています。国民年金のみの受給者を含めて全体を俯瞰すれば、この「10万円未満」の割合はさらに大きなものになると推測されます。
平均額が15万円台であっても、実際には受給者間の格差が大きく、個人単位で見れば8割以上の人が「月20万円未満」の受給額となっており、自助努力での備えが重要視される背景となっています。
年金生活に入ってから「思ったより少なかった」と慌てないよう、現役時代から自身の受給予定額をシビアに見積もっておく必要があるでしょう。公的年金だけに頼り切るのではなく、早い段階からiDeCoやNISAなどを活用した「自分年金」作りを検討することが、老後のゆとりを左右する鍵となります。
1.2 月10万円の不足を「自分年金」で埋めるには、毎月いくら積み立てる?
では、年金が月10万円の水準にとどまる方が、20万円相当の生活水準を目指す場合、どれだけの準備が必要になるのでしょうか。65歳から85歳までの20年間、月10万円を補う前提で逆算してみます。
必要額:10万円 × 12カ月 × 20年 = 2400万円
40歳から65歳までの25年間、年利3%で積み立てて2400万円を用意する場合
必要な積立額:月およそ5万4000円
40歳から始めれば月5万4000円ですが、開始が遅れるほど毎月の負担は重くなります。逆に言えば、早く始めるほど同じ目標額を少ない負担で準備できるということです。転職や独立で収入が変動する可能性がある方ほど、この数字を早めに把握しておくと計画が立てやすくなります。あくまで一定の前提を置いた目安の試算であり、実際の運用成果は市場環境によって変動します。
2. 平均寿命は男性81歳・女性87歳、65歳以上の約12%が認知症
厚生労働省が公表する「令和7年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.35年、女性が87.33年。前年と比較して男性は0.25年、女性は0.20年上回っており、長期的にも大きく伸びています。
長い老後を豊かに過ごすには、資産形成に加え、公的年金や医療・介護リスクへの理解が重要です。長寿化の中で避けて通れないのが「認知症」への備えです。
2.1 認知症とMCIを合わせると、シニアの約4人に1人
65歳以上のシニア層3603万人を対象にした令和4年度(2022年度)の推計によると、65歳以上の高齢者における現状は以下の通りです。
- 認知症:約443万人(12.3%)
- 軽度認知障害(MCI):約559万人(15.5%)
認知症やその前段階とされるMCI(軽度認知障害)を含めると合計で約1002万人、およそ3人に1人が認知機能に関して何らかのサポートや注意が必要な状況にあると推計されています。認知症は今や身近な問題であり、MCI段階での対応が生活の質を左右します。こうした背景から注目されているのが「終活」です。
3. 60歳代・70歳代の終活は万全?エンディングノートの実態
【グラフ】終活に対するイメージ(全体・男女別・年代別)

出所:NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)
長寿化と認知症リスクを見据え、注目されているのが「終活」です。NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)の「第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)」によると、「終活」という言葉の認知度は96.9%と高い一方、「エンディングノート」は認知されていても実行が進んでいません。特に高齢になるほど「まだ早い」という心理や体力面の問題から記入が進みにくい傾向があります。
3.1 エンディングノートの意識と実行率
- 認知度:60歳代以上で9割を超える
- 所有率:70歳代以上が24.2%と最も高いが、50歳代以下は1桁台
- 実行率(持っている人のうち):20歳代が9割以上書いているのに対し、70歳代以上は約5割にとどまる
高齢になるにつれて、書くべき項目が多岐にわたることや、「まだ早い」という心理的な先送り、あるいは健康上の理由などから筆が進みにくくなってしまう可能性があるのかもしれません。資産や医療・介護の希望を反映するためにも、気力・体力が充実しているうちから準備を始めることが重要です。
【調査概要】NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)
- 調査目的:高齢社会における終活意識の実態を明らかにし、個人が豊かで安心した人生後半期を送るための支援策や啓発活動に役立てる
- 調査対象:20〜89歳の男女
- 調査地域:全国
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査時期:2024年12月4日(水)〜12月6日(金)
- 回答者数:2052名
- 割付方法:人口構成比割付(令和2年国勢調査の性年代別人口比率に基づく)
- 調査委託先:株式会社マクロミル
監修者コメント
今回のデータで最も注目していただきたいのは、「月10万円未満が19.0%、月20万円以上が18.8%」という数字です。平均月額15万円台という報道を目にすると、多くの方はご自身も同程度受け取れると考えます。しかし分布を見れば、5人に1人は10万円に届いていないというのが実態です。
銀行の窓口でも、ねんきん定期便を持参された方が「思っていた金額と違う」と驚かれる場面を何度も見てきました。平均は目安にはなりますが、ご自身の加入記録に基づく見込額を確認しない限り、老後の設計は始まりません。
また、長寿化と認知症のデータをあわせて見ると、「お金を準備すること」と「判断力があるうちに意思を残すこと」の両方が必要だと分かります。資産の置き場所を整理し、家族が把握できる形にしておくことも、広い意味での老後の備えだと考えていただきたいと思います。





