4. 30代・40代に多い「働き方が変わった後が見えない」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が伝えたいこと

日頃のご相談では、転職や独立を視野に入れている方から、将来受け取れる年金への影響を心配する声をうかがいます。収入が変わることの影響は、その時々の手取りだけにとどまりません。

4.1 30代・40代に多いお悩み相談は「働き方が変わった後が見えない」

厚生年金は、加入していた期間と、その間の報酬をもとに将来の受取額が決まります。会社員を続ける前提で考えていた見込みは、働き方が変われば前提から変わります。ところが、どの程度変わるのかを把握しないまま漠然と不安を抱えている方が多くいらっしゃいます。次のような声を耳にします。

40代(ご相談者)
この先、働き方が変わる可能性があります。そうなったときに年金がどうなるのかが分からず、老後の資金が足りるのかどうかも見当がつきません。今のうちに何をしておけばいいのかを知りたいです。

前提が変わりうるのであれば、変わった場合の数字も出しておく。このご相談でも、受給見込額を条件を変えて試算し直したところで、備え方の優先順位が定まりました。

4.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が回答】働き方が変わった場合の数字を、先に出しておく

菅原 美優
会社員を続けた場合とそうでない場合の年金見込額をそれぞれ試算することで、働き方が変わったことによる年金の不安は解消されるでしょう。
iDeCoのように引き出せる時期が限られる制度と、NISAのようにいつでも引き出せる制度があります。どちらも組み合わせ、収入が下がる時期に備えた資金を運用とは別に分けておくことが、収入が変動する働き方への備えとなります。
また、投資にはリスクが伴いますが、長期・分散・積立をすることによりできる限りのリスクは軽減することができます。ご自身の状況やリスク許容度に合った方法を選択するようにしましょう。

備え方は、まず影響を数字で確認し、そのうえで手段を選ぶ順序になります。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。

4.3 ポイント1:働き方が変わった場合の年金見込額を試算する

一つ目は、「働き方が変わった場合の年金見込額を試算する」ことです。会社員を続けた場合と、そうでない場合を並べてみる。差額が分かれば、自分で埋めるべき金額もはっきりします。

4.4 ポイント2:引き出せる時期の違いで手段を選ぶ

二つ目は、「引き出せる時期の違いで手段を選ぶ」ことです。iDeCoには税制上の優遇がある一方、原則として一定の年齢まで引き出せません。収入が不安定になる可能性があるなら、いつでも引き出せる制度との組み合わせを考える必要があります。

4.5 ポイント3:収入が下がった時期に備えた資金を分けておく

三つ目は、「収入が下がった時期に備えた資金を分けておく」ことです。転職や独立の直後は収入が安定しないことがあります。生活費の数か月分を運用とは別に確保しておくと、積立を続けながら変化を乗り切りやすくなります。

なお、厚生年金の受給見込額は加入期間や報酬、就業形態によって異なり、制度改正もあります。ご自身の見込額や、働き方が変わった場合の取り扱いについては、ねんきんネットや年金事務所で必ずご確認ください。iDeCoの加入資格や拠出限度額も働き方によって変わりますので、あわせてご確認ください。投資信託には元本割れの可能性があります。

5. まとめ|平均ではなく、自分の見込額から逆算する

厚生年金の受給額分布を見ると、月10万円未満の人が19.0%、月20万円以上の人が18.8%と、少額層のほうがわずかに多いという結果でした。平均月額15万円台という数字だけを見ていると、この実態は見えてきません。

今回の試算では、月10万円の差が生涯では2000万円前後の開きになること、そして不足分を自分年金で埋めるには40歳から月5万4000円の積立が必要になることを確認しました。開始が遅れるほど毎月の負担は重くなります。

あわせて、長寿化と認知症のデータからは、資金の準備だけでなく「判断力があるうちに意思を残しておくこと」の重要性も見えてきます。まずはご自身の年金見込額を確認するところから、老後の設計を始めていきましょう。

参考資料

菅原 美優