6. 現役ファイナンシャルアドバイザーが答える「この蓄えで足りるのか」―あと何年分あるかを計算する解決策
日頃のご相談では、蓄えがある方ほど「これで足りるのだろうか」と不安を口にされます。金額の大小ではなく、何年分に相当するのかを確かめていないことが、不安の正体になっている場合があります。
6.1 老後の資金を意識する世代でよくご相談される「足りるか分からない」という悩み
預金、企業年金、保険、株式と、複数に分かれた資産は全体像がつかみにくいものです。加えて、これから何年分の生活費が必要になるのかも見当がつかない。両方が曖昧なままだと、いくらあっても安心にはつながりません。次のような声を耳にします。

必要なのは、残高を「年数」に置き換えることです。このご相談でも、資産と年金を合わせて何歳まで暮らせるのかを計算したところ、想像していたより余裕があることが分かりました。
6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・長井祐人が回答】残高ではなく、何年分あるかで確かめる
将来のお金について考えた際に多くの方が不安な気持ちを抱いています。
特に、老後資金は現役世代と比べて収入が減少する可能性が高いことから、不安を抱く方も
多いでしょう。
老後資金への不安を軽減するには、まず現在の資産状況を一覧にすることが一番の近道です。
加えて、毎月の収入と支出を計算して、年間の収支を出してみましょう。
支出が収入を上回った場合には、その差額を毎年資産から取り崩す形となります。
【例】資産総額:1000万円(株式・保険) 毎月の収入:13万円 支出:17万円
上記の条件で計算した場合、毎月の収支は-4万円(年間:48万円赤字)
🔴資産総額:1000万円÷48万円=約20年
単純計算では約20年間で資産を使い切ることになります。
まずは、自分自身の資産と収支を整理し、将来どの程度の資金が必要なのかを具体的に把握してみましょう。
計算そのものは難しくありません。順を追って進めれば、自分でも見通しを立てられます。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。
6.3 ポイント1:資産をすべて一覧にする
預金、確定拠出年金、保険、株式と、預け先が分かれているものを一枚に集める。合計額を出すだけでも、思っていた金額と実際とのずれが見つかることがあります。
6.4 ポイント2:毎年の収入と支出を出す
年金として受け取れる見込額と、想定する年間の生活費。この差額が、毎年資産から取り崩す金額になります。介護など将来必要になりそうな費用も、別枠で見込んでおきます。
6.5 ポイント3:何歳まで足りるかを計算する
資産の合計を毎年の不足額で割れば、おおよその年数が出ます。想定する年齢まで届いているのか、届いていないのか。ここまで来ると、足りない場合に何をすべきかも具体的に検討できます。
なお、この試算は一定の前提に基づくもので、物価の上昇や医療・介護の費用、運用の成績によって結果は変わります。年金の受給見込額は加入状況によって異なりますので、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所でご確認ください。退職金の税務上の取り扱いについては、勤務先の担当部署や税務署にご確認ください。
7. まとめにかえて
70歳代・二人以上世帯の貯蓄は、平均2416万円に対して中央値1178万円でした。貯蓄0円の世帯が10.9%、3000万円以上が25.2%と、同じ年代のなかで幅が大きく開いています。
年金額も同様です。厚生年金の平均は15万289円ですが、男性16万9967円と女性11万1413円で5万8554円の差があり、分布は1万円未満から30万円以上まで広がります。納付月数だけで決まる国民年金は5万9310円で、男女差は4013円にとどまりました。
そして65歳以上の夫婦のみ無職世帯は、毎月約4万2000円が不足し、1年で約50万円、10年で約500万円を貯蓄から取り崩す計算になります。
この記事で確認したかったのは、金額そのものより「何年分あるか」という見方です。同じ貯蓄額でも、世帯の年金の組み合わせによって、もつ年数は倍以上変わります。だからこそ平均を自分に当てはめる前に、ねんきん定期便やねんきんネットでご自身の見込額を確認し、支出と並べて年数を出してみてください。数字が具体的になれば、足りない場合に何から手をつけるかも見えてきます。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
長井 祐人
