65歳を過ぎても働き続ける方が増えるなかで、気になるのが「働くと年金が減るのではないか」という点です。この仕組みが在職老齢年金です。
厚生労働省が2026年1月23日に公表した令和8年度の年金額改定の資料によると、年金が減額される基準となる支給停止調整額は、令和7年度の51万円から令和8年度は65万円になりました。2026年4月から適用されています。
この記事では、支給停止額がどう計算されるのか、基準額が14万円上がって何が変わったのか、そして自分が対象になる働き方かどうかを順に確認していきます。
- 令和8年度の支給停止調整額は65万円。令和7年度の51万円から14万円の引き上げ
- 法律に書かれた62万円は令和6年度価格。賃金スライド後の実際の適用額が65万円
- 減額の対象は老齢厚生年金の報酬比例部分のみ。老齢基礎年金は減らない
なお、厚生年金の受給額の水準については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 支給停止調整額は令和8年度に65万円へ上がった
まずは基準となる金額から確認していきます。この額を超えなければ、働いていても年金は全額支給されます。
1.1 51万円から14万円の引き上げ
支給停止調整額の推移を見ると、令和4年度が47万円、令和5年度が48万円、令和6年度が50万円、令和7年度が51万円と、毎年1万円前後の動きでした。
これが令和8年度は65万円になりました。前年度から14万円の引き上げで、これまでの動き方とは幅が違います。
背景にあるのは令和7年の年金制度改正です。令和7年6月13日に成立した改正法により、2026年4月から基準額が引き上げられました。
在職老齢年金の支給停止調整額の推移1/2
出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」などをもとにLIMO編集部作成
1.2 法律の62万円と実際の65万円は違う
ここで混同しやすい点があります。改正法の説明資料では「50万円から62万円へ」と書かれていますが、これは令和6年度の価格で示した数値です。
実際に適用される額は名目賃金の変動に応じて改定されます。令和7年度に用いた名目賃金変動率2.3%と令和8年度の2.1%を反映した結果、令和8年度の実際の支給停止調整額は65万円になりました。
資料によって62万円と65万円が混在するのはこのためです。2026年4月以降の判定に使うのは65万円のほうです。
2. 減額されるのは報酬比例部分だけ
次に、何がどう計算されるのかを見ていきます。年金の全額が減るわけではありません。
2.1 基本月額と総報酬月額相当額を足して判定する
判定に使うのは次の2つです。基本月額は、加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額です。総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したものです。
この2つの合計が65万円以下なら、年金は全額支給されます。65万円を超えた場合の支給停止額は、超えた分の半分です。
計算式は「(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2」となります。
2.2 老齢基礎年金は減らない
減額の対象になるのは老齢厚生年金の報酬比例部分だけです。老齢基礎年金、経過的加算額、繰下げ加算額は対象外で、これらは全額支給されます。
2.3 計算例で確かめる
日本年金機構の資料に載っている例で確認します。老齢厚生年金が年120万円、つまり基本月額10万円で、総報酬月額相当額が58万円の場合です。
合計は68万円で65万円を超えるため、支給停止の対象になります。支給停止額は(58万円+10万円-65万円)÷2で月1万5000円、年18万円です。実際に受け取る年金は月8万5000円となります。
基本月額10万円の人が令和7年度と令和8年度で受け取る年金額の違い2/2
出所:厚生労働省の資料をもとにLIMO編集部作成
定年後の働き方を決める前に年金が減る条件を確認しておきましょう。基準額が上がったことで、これまで対象だった方が外れる可能性があります。
まずはご自身の年金額と月々の報酬を足して、65万円と比べてみてください。


