4. 世代を横に並べた数字だと理解しておく

年齢層別の平均は、扱い方を間違えると自分の将来像として読んでしまいがちです。何を示している数字なのかを整理しておきます。

4.1 同じ人を追いかけた数字ではない

85歳から89歳の16万5486円は、いま85歳から89歳の方が受け取っている金額です。いま65歳の方が20年後にこの金額になるという意味ではありません。

年金額は受け取り始めたときの水準が基本になり、その後は毎年度の改定で調整されていきます。世代ごとに現役期の賃金水準や加入していた制度の内容が違うため、年齢層の差にはその履歴が反映されています。

4.2 自分の見込額はねんきん定期便にある

平均額と自分の金額は別物です。50歳以上の方に届くねんきん定期便には、現在の加入条件が60歳まで続いた場合の見込額が記載されています。まずはそちらを確認するのが確実です。

50歳未満の方に届く定期便に載っているのは、これまでの加入実績に応じた金額です。将来の見込みではない点に注意が必要です。

5. 平均と自分の記録を並べてみる

年金の話になると、平均額を基準に考えている方がとても多くいらっしゃいました。

5.1 「平均より少ない」で止まってしまう方が多い

シニア世代で多いのが、平均と比べて少ないという不安だけが残ってしまうケースです。ただ、なぜ少ないのかまで踏み込むと、加入期間が短い、就業していない期間がある、報酬の水準が違うなど、理由がはっきりすることがほとんどでした。

理由が分かれば、手を打てる部分と打てない部分も分かれます。60歳以降も厚生年金に加入して働けば、その期間の分だけ2階部分は増えます。過去は変えられませんが、これからの分は動かせます。

5.2 60歳代前半は収入の組み合わせが変わる時期

60歳から64歳の平均が8万2267円ということは、この時期は年金だけでは足りない方が多いということでもあります。

この年代は、通帳に振り込まれる金額の名目がいくつも並びます。何がいつ入るのかを一覧にしておくと、家計の見通しが立てやすくなります。

6. この数字には基礎年金が含まれている

今回の数字を引用するときの注意点を挙げておきます。

6.1 厚生年金の金額には基礎年金が含まれる

15万289円や16万5486円といった金額には、老齢基礎年金の分が入っています。ここにさらに基礎年金を足すと二重に数えることになります。

6.2 60歳代前半の数字は他と性質が違う

厚生年金の8万2267円は報酬比例部分だけの方が中心、国民年金の4万7138円は繰上げを選んだ方の金額です。どちらも概況に注記があります。65歳以上の数字と単純に並べて「60歳代前半は少ない」と書くと、読み手に誤解を与えます。

6.3 男女別と年齢別を掛け合わせた表はない

概況に載っているのは、男女別の表と年齢別の表がそれぞれ別にあるだけです。「80歳代女性の平均は何円」といった数字は、この資料からは出せません。

7. 確かめておきたい3つのこと

平均を眺めるより、自分の記録を開くほうが先です。

7.1 ねんきん定期便で見込額を確認する

50歳以上の方は見込額、50歳未満の方はこれまでの実績額が記載されています。どちらの数字を見ているのかを確かめたうえで、平均と並べてみてください。

7.2 加入記録に抜けがないか通して見る

転職の多い方や、勤務先の社名が変わった時期のある方は、加入記録が途切れていないかを確認しておきたいところです。記録の訂正は年金事務所で相談できます。

7.3 60歳以降の働き方とあわせて考える

厚生年金に加入して働き続ければ、その期間の分だけ報酬比例部分が増えます。ただし働きながら年金を受け取る場合は在職老齢年金の仕組みがあり、令和8年度は基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えると一部が支給停止になります。

ご自身の条件でどうなるかは個別に変わります。金額や手続きの判断が必要なときは、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

8. まとめにかえて

厚生年金の平均月額は70歳から74歳の14万7730円が最も低く、85歳から89歳の16万5486円が最も高くなっていました。差は1万7756円です。

一方、国民年金は65歳から69歳の6万1240円をピークに年齢が上がるほど下がり、90歳以上では5万5633円でした。1階と2階で決まり方が違うことが、この向きの違いに表れています。

60歳から64歳の8万2267円は、基礎年金がまだ加わっていない方が中心の金額です。年齢層別の表は世代を横に並べたものですので、自分の将来像として読まないことが大切です。

参考資料

LIMO編集部年金解説班