「厚生年金の男女差はどれくらいあるのだろうか」と気になったことはありませんか。老後の家計を夫婦単位で考えるとき、男女それぞれの受給額の実態を数字で押さえておく必要があります。

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金(基礎年金込み)の平均月額は、男性が16万9967円、女性が11万1413円という結果でした。差は月5万8554円で、年換算では約70万円の開きになります。

この記事では、厚生年金の男女差の実額と、差が生まれる3つの背景(加入期間・平均標準報酬月額・第3号被保険者期間)を、公表データをもとに整理していきます。

ココがポイント
  • 令和6年度末の老齢厚生年金平均月額は、男性16万9967円・女性11万1413円で、差は月5万8554円
  • 差の3要因は「加入期間の長さ」「平均標準報酬月額の差」「第3号被保険者期間の影響」
  • 共働きと片働きで世帯年金の総額が大きく変わるため、現役時代の働き方の選択が老後家計に直結する

1. 厚生年金の男女別平均月額

まず、公表データから男女別の平均額を確認していきましょう。厚生労働省の概況に掲載された数字です。

1.1 男性は月16万9967円、女性は月11万1413円

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金(基礎年金込み)の平均月額は、男性で16万9967円、女性で11万1413円でした。差額は月5万8554円で、年換算では約70万円の開きになります。

男女比で見ると、女性の平均は男性の約65.6%です。この比率は令和5年度・4年度もほぼ同水準で推移しており、構造的な差が続いていることがわかります。

1.2 年齢層別に見た平均月額

年齢層別に見ると、老齢厚生年金(基礎年金込み)の平均月額は65歳〜69歳で15万1753円、70歳〜74歳で14万7730円、75歳〜79歳で15万1377円、80歳〜84歳で15万7689円、85歳〜89歳で16万5486円、90歳以上で16万4027円です。

いちばん低いのは70歳〜74歳です。現役期の賃金水準や加入期間の違いに加えて、過去の年金額改定の累積が世代ごとの差として残っているためです。

男女別の平均月額と、年齢層別の平均月額を整理しています1/2

厚生年金の男女別平均月額。全体と年齢層別の男女比較

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」よりLIMO編集部作成

2. 差が生まれる3つの背景

男女差は偶然のばらつきではなく、制度設計と個人の働き方の履歴から生じています。3つの要因に分けて確認していきましょう。

2.1 要因1|加入期間の長さ

厚生年金の受給額は「加入月数×平均標準報酬月額×一定の乗率」で決まります。加入期間が長いほど受給額が積み上がる仕組みです。

結婚・出産・育児で就労を中断する期間があると、その期間中は厚生年金の加入が止まります。40代・50代で復職しても、加入期間の総計は男性より短くなりがちで、これが受給額の差につながる大きな要因の一つです。

2.2 要因2|平均標準報酬月額の差

受給額の計算では、加入期間全体の「平均標準報酬月額」も反映されます。現役時代の給与水準が高いほど平均標準報酬月額が上がり、報酬比例部分が積み上がります。

令和6年時点の一般労働者の平均給与を見ると、男性の50〜54歳で月42万円台、女性の50〜54歳で月27万円台と、給与水準そのものに大きな差があります。この差が、厚生年金の受給額に直接反映されます。

2.3 要因3|第3号被保険者期間の影響

第3号被保険者は、配偶者に扶養されている20歳〜60歳の期間について保険料負担なしで老齢基礎年金の受給期間としてカウントされる制度です。ただし、この期間中は厚生年金には加入しないため、報酬比例部分は積み上がりません。

第3号被保険者期間が長い女性は、老齢基礎年金は満額に近づく一方で、老齢厚生年金の報酬比例部分が薄くなります。この構造も、女性の平均月額を押し下げる要因です。

加入期間・平均標準報酬月額・第3号被保険者期間の3要因が、男女差にどう寄与するかを整理しています2/2

厚生年金の男女差を生む3つの要因。加入期間・平均標準報酬月額・第3号被保険者期間

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」等をもとにLIMO編集部作成

3. 世帯単位で見た年金の実額

個人の受給額だけでなく、夫婦世帯全体で見ると、共働きか片働きかで大きく変わってきます。

3.1 共働き夫婦の世帯月額

夫婦とも厚生年金の平均に近い水準で受給する場合、世帯月額は男16万9967円+女11万1413円で合計28万1380円になります。年換算では約338万円で、老後の生活基盤としては一定の水準です。

3.2 片働き夫婦(会社員+第3号被保険者)の世帯月額

夫が会社員の平均、妻が第3号被保険者で老齢基礎年金の満額(令和8年度で月7万608円、昭和31年4月1日以前生まれは7万408円)のみ受給する場合、世帯月額は男16万9967円+女7万608円で合計24万575円になります。共働きより月4万円ほど少ない水準です。

中本智恵

男女差は制度上の構造から生じますが、現役時代の働き方や資産形成の設計次第で老後の可処分所得は変えられます。若い時期から複数の選択肢を用意しておくことがおすすめです。